三本の針の贈り物
人が少ないとはいえ、恥ずかしいな。
着替えが終わり、することがなくなった俺は準備体操をする事に。
プールでは泳げるようになったとはいえ、初めての海。
今日は波がないとはいえ、緊張するな。しょっぱいだろうし。
「おまたせ」
ミナが戻ってきた。
「あれ、水着は」
「さっきと変わらないけど」
「ソラって、バカ」
「コンビニのトイレで着替えてそのまま水着で出てきたら怪しいでしょ」
「あっ、そうか」
危ない危ない。
俺がトイレで着替えてたらそのまま出てくるところだった。
すると、ミナは目の前でシャツとジーパンを脱ぎだした。
これは、これでなかなか。
「な、なに見てるのよ」
「いや、なんかいいなと思って」
「変態」
冷たくも本気に聞こえないその言葉を言い残し、ミナは先に海へと走って行ってしまった。
あっ、待って。
もっとドラマチックに追いかけたかったのに……
初めての海はなかなかに手強かった。波が見えなくとも、海流のせいか真っ直ぐ泳げない。
海の水は自分の涙よりもしょっぱい。
海に慣れるのに精一杯で愛しのミナの姿を目に焼きつけられない。
沖縄の海の様に……とはいかなくてもそれなりに澄んでいて魚も見える。
慣れてきたら、ミナと一緒に泳いだり砂浜でミナを追いかけまわしたり。
だって、ミナのやつ。 拾った海藻を俺の海パンの中に入れやがって。
しかも前に。
海藻の気持ち悪さよりも、見られてないか心配だ……
そんな事やってたら疲れる訳で。
今日はやめようという事になった。
でもシャワーがないので、どうしたもんかと思っていたらミナが満面の笑みでさっき買った二リットルの水を取り出した。ついでに携帯用のシャンプーも。
さすがミナ先輩。
気がきくなぁ、というか俺ももうちょっと準備しないと。
二人で水を掛け合いながら髪と身体を洗いあった。
ん、洗いあったというのは語弊があるな。
俺は何とかペットボトル一本で身体を洗いきり、残りの三本はミナに譲った。
なんか目の前で女の子が身体を洗っているのは新鮮だった。
ミナもショートヘアが幸いして、何とか三本で終わらせた。本当はもっと洗いたいだろうに。
髪が乾ききるまでちょっと座って休憩する事に。好きな人と自分が同じシャンプーの匂いがするのはなんか嬉しい。
さっきまで弱かった風も、今は自然のドライヤーとなり乾きを早めてくれる。
乾いたとこで一回服を着て今一度、コンビニのトイレへミナが行く。
戻ってきたら、これを渡そう。
「おまたせ」
今日、三度目のその言葉を聞いたところで、俺はバックからあるものを取り出す。
「ミナ、俺と付き合ってくれてありがとう」
「できたら、これを受け取ってほしい」
ミナは驚き半分、嬉しさ半分といった表情をしている。
包装を開けて、中身を確認する。
少し、手つきがおぼつかない。
「………」
「ありがとうっ、ソラ」
どうやら喜んでくれたようだ。ひと安心。
「でも、どうして腕時計なの」
腕時計をいじりながらミナが俺に目を向けた。
「今まで一緒にいたのに進められなかった時を、これからは一緒に進めたいから」
「ほら、俺も色ちがいの揃えたし」
「…………」
「……どうしたのっ、ソラ」
「なんかのドラマでも真似たの」
ミナは大笑いしている。
どうやら恥ずかしい事を言っていたようだ。
「でも……うれしい」
「ありがとっ」
そう言って、俺達は海を背景にキスをした。
波の音に包まれながら、もう一度俺達は唇を重ねせる事にした。
ソラがなんかオッサン臭くなってる。ヤバイヤバイ




