↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の空  作者: 灰色の猫
PR
25/51

新人さん


 告白の日から数日が経ち、夏休み前に約束をしていたデートを遂に決行する時が来た。



 朝、母親にその旨を伝えると

「ミナちゃんによろしくね」

 とだけ言われた。もっと言うべき事はないのかと、逆に俺が心配になる。


 そして、玄関を出ようとしたらいきなり止められて五千円札を握らされた。

 別にお金を使う予定はないのに。念のためと強く言われ財布にしまうことにした。母親なりに応援しているのだろう。



 まだ寝ぼけている姉も玄関に来て、二人に見送られた。

 大袈裟な見送りに恥ずかしさを感じつつも、夏の陽射しを眩しく感じながらミナの家に向かって歩き出した。


 今日のデートは二人で話し合った結果、海に行く事にした。

 と言っても、たくさんの人で賑わう有名な砂浜ではなくて、地元から歩いて一時間位の所に穴場の砂浜がある。姉いわく、最近砂浜の目の前にコンビニが新しくできたので海の家がわりになってしまっているらしい。


 今年はまだ大丈夫だけど、来年になると人で溢れてしまうんじゃないかと姉は分析している。


 ミナの家に着き、インターホンを鳴らす。


 中からミナの声がする。

「ごめん」

「まだ準備できてないから、中入ってくれるかな」

「大丈夫、今はわたし一人だから」


 ミナの親とは面識があるが、付き合ってからはまだ会っていない。

 そんな不安を察してくれたのか一人と言う事を付け加えてくれた。


 でも、ミナの家でミナと二人っきり。

 それはそれで緊張するので、やんわり断った。

「いや、外で待ってるよ」

「ごゆっくり」


「そ〜お」

「じゃあ急いで行くから待ってて」


 その声の後、家の中から慌ただしい足音が聞こえてきた。

 足音だけでミナの行動がリアルに想像できて、他人の家の前で、一人で笑っていた。

 自分でも怪しいと思いながらも、彼女を待つというのは想像以上に心地の良いものだった。

 初めてだからなのかもしれないが。



「ごめんっ」

「お待たせっっ」

 自分の家なのに、乱暴に玄関を開け乱暴に鍵を閉めた。


「昨日、あんまり寝れなくて」


 遠足かっ、と突っ込みを心の中でしつつ、ぐっすり寝れた自分を少し後ろめたく感じた。


「気づいたら三十分前に起きちゃって」


 急いでいたのは間違いなく、服装もいつも通りのシャツにジーパンだった。

 まあ、俺は急いでなくても普段通りの格好なのだが。海に行くからな、と言い訳しておいた。


 結局のところ、これが俺達なんだろうな。

 でもこれが良い、これで良いんだよ。



 そして、当初の予定通り俺達は歩いて海に行く事に。どうせ急ぐ理由もないし。


 道中は結構沈黙が多かった。

 でも言葉はなくても、お互いに握っていた手の力を変えて会話しているようだった。

 途中、国道沿いの歩道を歩いていたら通りすがりにクラクションを鳴らされた。見た事ある車だなと思ったら、姉だった。


 初めてのデートの移動中に初めてクラクションを鳴らされて。

 色々あるなと思いながらも、心の中で姉に手を振っておいた。




 時間を忘れ、二人で黙々と歩いていたら、目的のコンビニがやっと見えてきた。


 新設らしく、店内は綺麗で従業員の接客は拙い。

 ほとんどが新人なんだろう。逆にお客さんに気を付かわれている。


 海水浴目立てのお客をターゲットにしているからか、店の前では店長らしき人が焼きそばを焼いて売り出している。

 何人か待っているお客がいるから人気は上々のようだ。

 俺達はアイスとジンジャーエールとミナの提案で二リットルの水を四本買った。


 レジにいた高校生らしき女性従業員はまだ慣れていないのか、細かいミスを連発し先輩従業員にそのつど指導を受けていたが、見ててなんか和む。

 俺が初めてのデートの真っ最中だからだろうか。

 ミナは勘違いしたのか

「あ〜いうのが良いの、ソラは」

 と小言を言われたが、違うと弁明しておいた。


 なんか、頑張ってる姿ってのは出来不出来に関わらず輝いて見えるなと思って。

 ミナは納得はできないが理解はしたような反応をしていた。

 俺がこんな風に考えているのがちょっと意外みたいだった。


 失敬なっ。

 俺の周りには努力家が多く、時々不安になる。 自分は何も頑張ってはいないんじゃないかと。

 砂浜でアイスを食べながら、ミナにこんな話をしていたら、急に頭を撫でられた。


「大丈夫、ソラはソラのペースでいけば良いんだから」


 ありがとう……ミナ。 こんなんだけどよろしくね。



 そうして、アイスも食べ終えこれから海に入ろうかと思った時に重大な事に二人で気がついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。