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追放冒険者の限界生活日誌  作者: forefore
フロンティエール、出会いと別れが集う街
8/20

療養、しかしそれは名ばかりの鍛錬

「アコールさん?()()()ですからね?」

「どうした?ちゃんと横になっているだろう?セヴィア」

「…………嘘つかないでください。回復魔法の修行の一環で他者のマナの解析はできるんですからね?」

「バレてたのか…………」

「程々にしてくださいよ?」


本を読みながら黙ってマナの訓練をしていたのだが、セヴィアには見破られてしまったようだ。


この療養所に来てから二日が経過し、ペリカは魔力酔いが治って先に帰ったしまったが彼女がメモを残してくれた。

――――あんた、見違えるほどマナに満ちてる。ムーン・サーペントの肉の影響でね。


魔王領土付近で生まれ、その豊富なマナを吸って育つ奴らはその巨体をマナで稼働させている。

それが何を意味するのか。彼女が俺に指摘したことをムーン・サーペントが扱えているということに他ならない。

(あんた、見たところ身体操作に合わせて無意識にマナが動いてるから強化魔法ならすぐに覚えられる)

幸いにも、課題だったマナ総量の問題は偶然現れたムーン・サーペントの肉を食らったことで解決された。直前のスパルタ特訓のおかげで体内のマナの維持を会得しており、体外のマナも感知できるようになっていたために後は時間の問題だったようだが、さすがは悪食女(ペリカ・ティアーノ)。魔力補給ポーションでマナが補充されるならマナが豊富な魔物の肉でも同じことができるだろうと推測して食べさせていたようだ。


ならば、その得られたマナを活かす他ない。



さて、セヴィアに見破られて怒られたのはその次のステップの一貫、繊細なマナ操作の修行。


左手、右手、左足、右足、頭、腹、肩…………目まぐるしく移動→保持→移動を本を読みながら繰り返していた。最初こそまともに本は読めなかったが、パターン化した動きに慣れてきて今では問題なく動かすことができている。


「――――まだしてたんですか?いい加減休んでください」


水差しに水を入れに来たセヴィアがふくれっ面で苦言を呈してくる


「仕方ないだろ?何もせずにじっとしてろっていうのが無理のある話だ…………」

「もう…………その調子じゃすぐには治りませんよ?」

「だったらなおさらやり得だろ?」

「――――じゃあ、手伝ってあげます。」

「唐突だな」

「アコールさんが懲りないからです。それに()()()マナの操作を侮らないでください?」


セヴィアは俺の右手を掴んでは、それぞれの指を触り始める。


「…………いいですか?修行なら()()()でするんじゃなくて堅実にやってください」

「わたくしがどの指にマナを寄せるのかを言いますので、順々にお願いしますね?」

「…………あぁ」


彼女は丁寧に指の名前を告げていく。

横になっている間に散々マナ移動の訓練はしていたのでこれくらいは朝飯前だったのだが…………。


「じゃあ左手も増やしますね?引き続き指の名前を言いますが、わたくしが握った方の手の指にマナを込めてください」

「薬指…………中指…………親指…………」

「あっ、右手のですよ?」

「まずい…………こんがらがる…………」

「ダメですよ?戦闘中に全身で切り替えていかないといけないんですから指ごときで値を上げちゃだめです」

「手厳しいな…………しかし、望むところだ」


手を握る感触とセヴィアの紡ぐ言葉に反射で反応して対応する指にマナを込める。

単純に見えて中々に難しいものがある。


「でき…………ない」

「でしょう?明日も訓練には付き合いますから、今日はおとなしく寝てくださいね?」


気付けば夕方になっていた。

そんな時間になっても出来ていないことに俺は少し劣等感を抱く

だが、これくらいできなければ全身でやるのはもっと大変だろう

そう思えば明日こそやってやるという気持ちが芽生えていた。


「…………安眠効果の薬草茶です。これを飲んでしっかり身体を休めてくださいね?」


そういった効果の薬草もあるのかと感心しながら茶を飲み干し、眠りにつく。


_____________________________________


さらに二日後、おおよその怪我が治ったため、いよいよ全身を訓練の対象にすることに至った。


しかし…………そのせいで身体のあちこちをぺたぺたと触られるのはどこか変な気分になるのだが…………


「集中、切れてますよ?」

「あぁ…………悪いな。続けてくれ」


特段気にしていないセヴィアをよそに直立不動の状態でセヴィアに触られた部位にマナを寄せていく。

しかし部位ごとなんていう生半可なものではなかった

ふくらはぎ、上腕、肘、かかと、腰、膝…………。

さらには手足の指まで指定されるのだから混乱を極めるばかりだ。


「やはりというべきか…………結構がっしりした身体つきですね?アコールさん」

「常時重武装のアマルほどでもないけどな」

「あの人、訓練先で何をやらされているのか知りませんけどこの間も筋肉痛で運ばれてきましたよ?」

「筋肉痛って…………療養所に通うほどのものなのか?」

「――――指導教官の方が早く治させて訓練の続きをさせたいからって治療費に五割増の金額を提示してきたんですよ…………まったく、心配になってしまいます」

「あいつもあいつで大変なんだな…………」

「今時、魔法を一切使わない人は珍しいっていう時代になっちゃいましたからね」

「――――そうなのか?」

「そうみたいですよ?ペリカさんがアコールさんの稽古を真面目につけてたのはもちろん昔馴染みってこともあるんでしょうけど…………()()()の訓練っていうのもあるんでしょうね」

「時代は変わるもんだな…………。」

「ロウバーさんも山に籠ってるみたいですよ?」

「いつの間に俺たちは修行僧になったんだ…………?」


かつて"導きの星"として共に過ごしてきた仲間。

十数年の時はこの場にいないはずの仲間も近くに感じられるほどに親近感を秘めていた。

しかし、この時の俺は気づきもしない。

思わぬ形で再び俺たちが交わることになることなど――――

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