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追放冒険者の限界生活日誌  作者: forefore
フロンティエール、出会いと別れが集う街
7/21

奇怪、されど立ち止まらないのが冒険者の性

「…………お目覚めですか?」


見覚えのない天井。


――――見覚えのある顔


「…………セヴィアか?」


「はい、お久しぶりですアコールさん。」


清廉なシスター服を身に着けた、敬虔な信徒という様相。

知っている姿とは少し違ったが、その顔は紛れもなく"導きの星"にいたセヴィア・ビサイドその人だ


「ここは…………修道院か?」

「――――厳密に言えば修道院に付属している療養所ですね。」

「どうやって運ばれてきたんだ?」

「覚えてないんですか?…………ここ、フロンティエールに向かう商人さんの荷馬車に乗ってきたんですよ?」


――――朧げに思い出せた。

確か、ムーン・サーペントとの戦いの後、ペリカが寝ている俺の口にもったいないからと蛇の丸焼き肉を限界まで腹に詰め込まれて二人共々爆睡。翌朝、俺がペリカの肩を借りてとぼとぼとフロンティエール…………俺らの拠点とする都市に帰ろうとすると丁度その方面に向かう商人の荷馬車が来て荷台の中でもうひと眠りしていたような…………。


「――――思い出せた。となるとペリカは?」

「あの子も魔力酔いで熟睡中ですよ?…………本当に心配しました。」

「突如としてムーン・サーペントに襲われてな。ペリカが言うにはあの蛇は魔王領を生息域としてるらしいが…………」

「それは…………この傷にもなるわけですね」


セヴィアが俺の左腕に巻かれた包帯をなぞる。

回復魔法の影響なのか痛みこそまだあるものの骨折は完治しているようだ。


――――しかしまぁ、ムーン・サーペントに関しては謎が多い。


「セヴィア、無遠慮な質問で申し訳ないんだが…………」

「魔王領…………のことですよね?」

「あぁ、失礼な気がするが街道までムーン・サーペントが出てきたことを考えるとそうも言ってられない気がしてな」

「いえ…………聖地ではありますが信徒達も行くことはできない場所ですし、説明くらいなら」


_____________________________________

魔王領土――――通称、フィコンディート――――この国で国教とされている"シエル教"の崇める神が眠る地とされている場所。


その領土は外周を森で囲われ、非常に秘匿性の高い場所になっている。


今日において、確かな情報として伝えられているのは

・"シエル教"の崇める神が眠る地

・多様な種族がそこに住まう地

・多様な環境が入り混じる地


――――一度領土内に入った者は基本的に戻ってくることはないこと


領土内に入った時点であらゆる連絡手段が取れなくなり

最終的に生きてるのか…………はたまた死んでしまったのか

誰にもわからずに時間が経つにつれてその者は忘れ去られることになる


フロンティエールを含めたいくつかの領地がそのフィコンディートとの緩衝材として

アヴァール王国に利用されているのだが、その状況に対して危険度はそこまでではない。


それはなぜか?――――"シエル教"の崇める神がもたらした生物を寄せ付ける作用があるためとされている。原理は謎だが、一説によると膨大なマナが存在するからというのが現在の有力な説らしいのだが、魔王領土の周囲に住む人間にとっては守り神同然の効力を発揮しているため、宗教として設立したのも自然な流れだとされている。


とはいえ、アヴァール王国とフィコンディートは現在戦争状態。

噂では先々代の国王が聖地奪還を謳って仕掛けているらしく、今でもその戦争が長引いている。

しかし、殺伐としているのはなぜかアヴァール王国軍が乗り込んでいる戦場だけで、フロンティエールを始めとした元々魔王領土と接していた場所はまさに()()そのもの。それが嵐の前の静けさなのか?と噂されたのはもう十数年も前のことで、特段何も不審なことは起こらなかったのだが…………


_____________________________________

「結局のところ原因は分からずじまいか」

「そう、ですね。わたくしの力が及ばず…………」

「――――何のための冒険者だって話だ。原因が分からなくてもこっちに来てしまっている魔物を狩り続ける…………それしか手立てはない」


そう、自分にも言い聞かせるしかなかった。今何かを考えてもそれは憶測にしかならない。

だからこそ、できることと言ったら宣言通り魔物を狩り続けられるように強くなること。


「アコールさん…………アマルさんみたいなこと言うようになったんですね?」

すこし悪戯っぽく微笑むセヴィア

「なっ!…………気のせいだろ」

「ふふっ♪じゃあそういう風に心に留めておきますね♪」

「まぁ、その前にアコールさんはしっかり身体を治してから、ですけど」

「世話になる、セヴィア」

「いえいえ…………これも()()の一貫ですから」

「修行?」

「アコールさんが"導きの星"を抜けた後、アマルさんが難しい顔しながらその話を持ちかけてきましてね?」

「ペリカさんや、ロウバーさんもその一環であちこちに遠征しているていう話なんですけど…………ペリカさんから聞いてないんですか?」

「いや、特には。出会いが唐突だったし、やっと世間話をしたかと思えばムーン・サーペントに襲われたしな」

「あっ…………そういえばそうでしたね」



――――とにもかくにもこの療養の時間ですら身体を休めても頭まで休ませるわけにはいかない。


俺はセヴィアに頼んで修道院に収められている薬草関連の学術書を持ってきてもらいつつ、その片手間でマナを意識し続ける生活を続けることにした。

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