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追放冒険者の限界生活日誌  作者: forefore
フロンティエール、出会いと別れが集う街
5/20

萌芽、魔力を扱う兆し

剣を振る。


単純な動作。慣れ親しんだ動きにマナに対する意識を切らさないというノイズの動き。


既存の動きに新たにもう一つ要素を追加する


()()()()のはずだが…………。


「――――途切れたわね」


手の辺りにあったマナの感覚がいつの間にか消えている。


「………こんな曲芸を四六時中やっているのか?」

「人を旅芸人みたいに言わないでくれる?………あんたの場合、マナを()()()っていう感覚がないから失敗したらすぐ無くなっちゃうのよ」


溜める――――要するにマナにおける胃や肝臓のような部位を使う感覚が備わっていないということか?


しかし、それから教わらないということは俺は身体全体の使い方以前に()()()()()すらできていない…………ということなのだろう。


ペリカから無言で突き出された魔力補給ポーションを飲みながら考えに耽る。



「…………帰らなくていいのか?ペリカ」

「――――はぁ?あたしが稽古つけてるんだから帰るわけないでしょ?」

「それに…………第一、失敗した後の魔力補給用のポーションあんた持ってないでしょ」


目の前の切り株に座り、忙しなく足をぷらぷらと振っている彼女


ごもっともな返しをされるとこちらとしても言い返しづらい。


「…………ありがとうペリカ」

「ふんっ…………もっと敬いなさい?」


とは言ってもペリカも俺のマナの動きを見るだけでは暇なことには間違いないのだろう


「…………んしょ」

「休憩?」

「いや、世間話しながらでも修業はできるだろ?」



「…………やったわ、学園でそんなこと。どんな状況でもマナを練られるようにって」


「んで…………何話すのよ?あたしの聞きたいことは大方…………いや待って、その口の傷は何?」


「口?――――あぁ、ポーションの試作でちょっとな」


「火傷になってるじゃない…………ほんっと世話の焼ける馬鹿ね?」

「んで、火傷になるようなポーションって…………何したのよ」


心配そうな顔でペリカが見つめてくる。


「乾燥した薬草をアシッドヴァルチャーの強酸で溶かして煮込んで水分を飛ばした後、対強酸ポーションと水で薄めて飲んだんだがな…………諸々の配分をミスってな」


言い終わるころには軽蔑するような目が向けられていた。


「――――馬鹿なの?」

「仕方ないだろ…………お金なかったし」

「言い訳にもなってないわよ。カッコつけてお金置いて出てったかと思えばこうやって無茶してるし」

「…………面目ない」


「――――スライムの体液は試したの?溶解と言ったら真っ先に思い浮かぶでしょうに」

「いやに唐突だな、もしかして先行研究か何かあるのか?」

「呆れた…………むしろ何でヴァルチャーの方を先に思い浮かぶのよ」

「ポーションを作りたいって時に丁度目の前にいたから?」

「――――――――ちょっとは躊躇いなさいよ」



「…………でもヴァルチャーの方が溶かせるだろう?」

「あのねぇ…………過剰だって言ってるのよ。現に配分を間違えたから火傷になってる人がいるでしょ?」


ぐうの音も出ない。


「じゃあ、スライムの体液をどうするんだ?」

「いい?そもそもスライムって言うのは――――」


_____________________________________

スライム。


不定形のゲル状の魔物で身体を再生できたり簡単に繁殖したりと謎が多い生き物


亜種が多いことでも知られており単純な色違いを含めても百種近いバリエーションがある。


スライムは取り込んだ食べ物をじっくりと体内で溶かし、その食べ物の性質を獲得することがあるらしい


なぜそのようなことが起こるのか?


それはスライムはいわば体内にあるはずの器官を体表に晒しているも同然の体であるが故に

毒や病気に対して極めて高い耐性を有していること。


そして何よりもスライム自体が()()からこそその異様な性質を獲得したとされている。


スライムの再生能力・形質獲得能力・分解能力という性質は

魔術師、錬金術師達にとっては利便性の宝庫と言っても過言ではなかった。


現に、スライムを使った鉱石精錬の技術も考えられるほどには知見が多くあるそうで…………。


_____________________________________

「まぁ、アシッドヴァルチャーの強酸に目を付けたのはいい視点だと思うけどね」

「実際、スライムによる分解は殺菌とかまではできないもの」


「…………詳しいな。」


「当ったり前でしょう?学園を出る直前にしてた研究よ?」

「…………とにかく、あんたのことだからまだヴァルチャーの強酸、持ってるんでしょう?」


「――――あぁ。」


「それをこのスライムの体液に数滴垂らしてみなさい?核は…………あたしの手持ちの魔晶石でも使うわ」


ポーションの空き瓶にスライムの体液と砕いた魔晶石、ヴァルチャーの強酸が数滴入る。


軽く振ってしばらくすると奇妙な拍動をし始め、淡く黄色い奇妙な粘液が出来上がる。



「――――これ、生きてるのか?」


()()()にはね。シンプルに言えばスライムの体液が勘違いするってことよ」



「……………………?」

「うん…………生きてるってことでいいわよ。分かってないみたいだし」


「ペリカ。これを使えばスライムとヴァルチャーのいいとこどりができるってことでいいのか?」

「――――理解が悪いんだか良いんだかわからないわね、あんた。」

「そういうことよ。定期的にマナを与えれば効力を失うことはないわ」


――――となると慣れないうちは魔力補給ポーションを数滴この粘液に垂らすことになるだろうが


俺が次第にマナを自力で練られるようになってきたらその限りではなくなるということなのだろう。



「果てしなく地道な努力になりそうだな。」

「そうね…………こればっかりは近道はないわ。」


「…………そういえばヴァルチャーの体液を取ったってことは、お肉食べたの?」


「非常に美味しかったぞ?」


「――――今度食べさせて。」



――――次の討伐依頼の時にはペリカも一緒になることになりそうだ。

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