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追放冒険者の限界生活日誌  作者: forefore
フロンティエール、出会いと別れが集う街
3/22

実験、成功と失敗の味

「――――つまり先日の依頼で納品していたのは葉が重要だったわけか」


ジェネリ草――――一般的な薬草の一種で薬用部位は葉。

酒類で表面を殺菌した後の葉を傷口に張り付けると傷が早く治りやすいという性質があり…………。


道理でギルドの依頼に"薬師の護衛依頼"と"薬草の採取依頼"が混在するわけだ。


薬草然り毒草然り、どの部分がその代表的な効能をもたらすかの部位が違ってくる。


今回の例で言うジェネリ草は薬用部位が"葉"。

………つまりは冒険者の類が雑にとっても問題になりにくいような部位ということになる。


一方掲示板に張られている"薬師の護衛依頼"でとることになっている薬草。

そのほとんどの薬用部位は"根・根茎"。

慎重に採取しなければならないために危険を冒してでも護衛を呼んで取りに行くわけだ。


「となると、半数以上はだめかもしれないな。」


根が途中で折れている、そもそも根腐れしている、草食動物に葉を食われている…………


以前、アマルのいつもの即決で薬師の護衛依頼を受けた際は"手際がいいな"程度の浅い感想しか浮かばなかったが…………


「――――"経験"かはたまた"知識"か…………少なくとも俺に両方足りないのは確かだな」


結局、薬用部位が不明で状態の良し悪しの判断がつかない怪しいものを含めても

八割近くが使()()()()()()()()、そう判断できるものだった。


ひとまず残った二割近くを小さな麻袋に保管し、急いでギルドの資料室に向かった。


_____________________________________


――――一応、この都市の冒険者達はここを使われていることを許可されているはずだが、

ほとんどの本の背表紙に埃が被ってており、若干カビ臭さが辺りを立ち込めている。


利用者は俺を除いてもこの場にいるのは三名ほど

…………冒険者のほとんどが単純な読み書きができる程度でこういった難しめの本を読むのは

()()と言っても差し支えないのかもしれないが。


――――現に、難解な文章に四苦八苦している自分がいる訳で…………。


薬草研究のほとんどは経験・観察の積み重ねによる膨大な積み重ねによるもの。

丁寧な字体で書かれていて()()こそ読めるものの、固有名詞や専門用語の濁流でちっとも理解までに至らない。

中には宗教色の強いものの混じっておりまさに玉石混交、身になるような本を探すだけでも一苦労だ。



「――――これは?」


いわゆる図鑑の類だろうか、一種ずつ丁寧にスケッチされているきれいな装丁の本だ。

スケッチ・名前・薬効・薬用部位・主な自生地域…………。

およそ俺が知りたい情報が一挙に網羅されていた。

100種近い薬草・毒草の資料。ひとまず身に覚えのあるものから覚えていくことにした…………。



_____________________________________

いきなり全部は覚えられないので、ひとまず先日無作為に取り漁った草花をより精緻に整理することにした。


細かい区別まではいかなかったがどうやらジェネリ草、カニバル草を含めても四種ほどがあの場所に自生していたらしい。


改めて正確に分け終えた草花をひとまず乾燥させることにし、残りは毒草以外は煮込んで食べてしまうことにした。


味はもちろん――――


「――――うっ…………がぁっ…………。」


――――ひどく寝苦しい夜だった。


_____________________________________

翌朝、というか早朝。どの草の影響なのかどうしようもなく目が冴えてあまり深く眠れなかった。


しかし、身体は妙な高揚感を伴っておりまさに百人力。今ならドラゴンでも倒せそうだ。


昨晩に呪いの薬膳スープを飲んだせいでやる気になれなかった武具の手入れを行っていく


荷物から自前の砥石を取り出して刃こぼれを丁寧に処置する。


規則正しく鳴る、磨かれる音。俺にとってはこの音は鳥のさえずりに似た心洗われる響き


傭兵時代にはただ言われてやっていただけの取り組みだったが、今では俺という存在を形作る重要な癒しの一つだ。


「――――今日もいい出来栄えだ」


_____________________________________


()()とは恐ろしいもので、二週間が過ぎるころには一端のソロ冒険者となっていた。


変わったことと言えば一番大きいのは戦闘を回避する手段を増やしたことだろう。


匂い消し、煙幕、単眼鏡…………自前で作れるようにもなってきた。


防具も鎖帷子を新たに購入し、余り物の毒草エキスを塗り込んだ棘を飛ばす吹き矢も使いだした。


戦い方に関しては正面戦闘をなるべく避け、奇襲がメインとなってきた。


「…………そういえば、アシッドヴァルチャーの毒液ってどうやってため込んでいるんだ?」


白目をむき、泡を吹いているヴァルチャーの首根っこを掴みながら考え込む。


試しに余ったポーションの飲み口に麻袋の切れ端を取り付け、乾燥したジェネリ草をセットする。


そこに生きのいいアシッドヴァルチャーの胃液を流し込むと…………。


「…………薬草が溶けた?」


果てしなく気持ち悪い色味をしているが、沈殿がほとんどない黄緑色に濁った液体が生まれた。


そこに持ってきていた対強酸用のポーションを流し込むと…………


「大分見たことのある色味になってきたな。」


とはいえこんな危険極まりないものをそのまま飲むわけにはいかない。

――――というか恐らく胃液を入れすぎたのか色味が薄すぎる。

ひとまず瓶ごと火にかけて余分な水分を飛ばしていくと…………。

深緑色の粉が出来上がっていた。

綺麗な水と対強酸用のポーション数滴で粉一つまみを薄めていくと

手持ちのポーションと変わりない色味の液体が完成した。


「…………ピリッとした味だがほとんど一緒か?これ」


ヴァルチャーの強酸がまだ微妙に残っていたのか、口内が軽い火傷に見舞われた。

しかしこの成果は非常に大きい。今まではひたすらに乾燥した薬草を煮だしては水分を少し飛ばした薬草汁を飲んでいたことを考えると、飲みやすさも持ち運びの良さも段違いに良い。


「…………こいつは使えそうだな。」


見分を広めるついでに成功体験で気分が高揚したままアシッドヴァルチャーを捌き、

豪勢にヴァルチャーの丸焼きと薬膳スープを食べることにした。




…………だいぶあの悪食女(ペリカ・ティアーノ)を馬鹿にできないような所業をしてしまったことには目をつむることにした。

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