新生、主に応えるための新たな姿
各種素材が七色に煌きながら混ざり合い、やがて一本の延べ棒になる
ドワーフに伝わる古い祈り言なのだろうか?何かをつぶやきながら金槌を振るう
俺はその職人の所作を目に焼き付けていた。
弾ける火花の一つ一つに俺の足跡が見える。
マナを理解し、マナを感知し、強化魔術を習得した。
傭兵時代での暮らしは、良くも悪くも一人で生きるための術を学ばせてくれた。
けれどもこれから共にするであろう俺の武器は仲間と共に戦うための武器。
器用に、堅実に戦い続けた俺に特化した剣
傭兵として生き冒険者となっても成長し続けてきた俺という存在が刻まれた剣
完成を告げる金属音。仕上げの行程が済んだ後に俺の前に愛剣の進化した姿が差し出された。
鞘というにはあまりにも武骨でそのまま振るえば鈍器にもなれそうな出で立ち。
鞘から抜いた剣は一風変わって淡い青緑色の刀身に鍔には杖にはめ込まれていた魔石が埋め込まれていた。
剣を握りこむと刀身は主人である俺のマナに呼応するように微かに輝きだす。
不思議と重さは以前の愛剣と変わらず、重心も精密に整えられていた。
「これは…………上等なんてものじゃない…………至高の逸品です」
剣を振る。空を切った感触だけでも分かる。これは俺の懸念点を解消している。
嬉々として剣を試している俺の姿を見て微笑みながら職人が話し出す。
「ふふん…………小僧。目で分かるぞ?お前さん無意識に力を抑えていたんだろ?」
「――――分かってしまいますか」
「子供みてぇな無邪気な目を見ればな…………それにお前さんの愛剣は丁寧に整えられちゃあいたがその実、剣の耐久を気にして庇いながら振るっていたことが丸わかりだ」
「そんなとこまで…………」
職人は腕を組み、感慨深そうに語る。
「大事に大事にして、毎日のように手入れして。この愛剣はそんな主人の想いに喜びながらもどこか弱い自分に悔しい気持ちがあったようでな」
「…………なんだかうれしいです。剣がそこまで想ってくれてたなんて」
「職人としちゃあな、お前さんのような奴はてんで珍しいからな。…………最近の冒険者はやれ新しい武器だのやれ遺跡で手に入れた魔剣の手入れをしてくれだの…………愛着がなさすぎる」
「それに引き換えお前さんのような奴の武器なら…………儂の目指しているものが見られるかもしれん」
「それは…………なんですか?」
「…………宝具だ」
「宝具?」
「剣士のお前さんが知ってるか分からないがな…………魔術と魔法の違いみてぇなもんだ」
「――――知ってる」
先ほどまで俺と職人の会話を眺めていたノルンが口を開く。
「――――家で代々受け継がれている名刀――――紅月も宝具のはず」
「ほぉ?小娘、お前さんヴァーミリオンの家の娘か」
「紅月のこと知ってるの?鍛冶屋さん」
「当たりめぇだ。それは儂の爺さんが鍛造したやつだからな」
「そうなんだ…………」
「とにかく、宝具ってやつはそんじょそこらの魔剣やらとは訳が違う」
魔術と魔法の違い。
ペリカにはあんたには難しい話だからと誤魔化されていたが…………
それらと一般的な武器と宝具の違いが同様だというのなら…………おおよその見当はつくかもしれない
「どう違うか聞かせていただいても?」
「魔剣の類はな、単なる職人の我儘や願望が込められた独りよがりな武器でさぁ」
「確かに強さは悪かねぇが…………それじゃあどこまで行っても強ぇ武器止まりだ」
「…………宝具や魔法は違う、基本的にはそいつしか使えないオリジナルのものを指すんだ」
「ん。…………アコール、私の叔父さんが刀なんて使ってるの見たことある?…………そういうことなの」
「――――確かレオンさんの武器は大剣だったな。…………レオンさんほどの実力でも使えないものなのか?」
「がっはっは…………宝具てぇのはそんな単純じゃないのさ。最初の持ち主に使われるために存在し、持ち主が死んだとしてもその宝具が認めた相手にしか使わせない…………そんな一途な武具なのさ」
「ん。その分秘めた力は絶大なの。紅月も巨大な竜が吐いてきた炎ごと一刀両断したって冗談みたいな事実が伝えられているくらい」
そんな宝具に俺の愛剣が成れるというのか…………?
「小僧。随分疑心暗鬼だな?…………心配しなさんな、何も直ぐの話じゃあねぇ。お前さんの武具を大事にする想いがあって…………これからも戦っていくなら可能性があるってことさ」
「それは…………随分先の話になりそうですね」
俺の言葉を聞いて少しの沈黙が流れる。
何かまずいことでも言ってしまったのだろうか?
その沈黙を破ったのは…………職人の高笑いだった
「がっはっはっはっは!!お前さん、自信大ありじゃねぇか?…………気に入った。儂の名はフラム・エスリット。今後お前さんたちの武具の面倒を見てやる」
「よろしくお願いします。俺はアコール、アコール・ネイチュです」
「――――ノルン・ヴァーミリオン」
ノルンと共に深々とフラムに頭を下げた俺たちは、俺の威勢を見てすこぶる機嫌が良くなったフラムに、格安で二人分の装備の整備をまとめて行ってもらうことになった――――




