想起、共に並び立つための軌跡
「思ってたよりも大事なんだね」
ノルンの言う通りアマルが背負っていたものは想定以上に大きなものだった。
単なる価値観のすれ違い、それだけでは済まされなかった。
「…………そう…………だな。ノルン、俺達には俺たちのやれることをやろう」
「りょーかい」
「そういえば報告書の提出とか納品もやってくれたんだよなノルン…………その杖は突き返されたってことか?」
その杖は確か――――チェイス・オックスに襲撃されたパーティの魔術師のものだったはずだが
「――――よくわからないけど、こういった遺品絡みは呪物になりやすいから引き取ることはできないんだってさ、アコール」
「呪物?墓標に立てるのも勿体ないから誰かが使ってくれれば…………と思ったんだがな」
「さすがに怖くない?死体から取ってきましたなんて盗賊でもそんなの公言できないよ」
「それもそうか…………けど俺やノルンが使おうにもそれほど魔術師寄りでもないだろ?」
「使うんだ…………なら鍛造してもらえば?」
「合成ってやつか?鍛造魔術の秘技の一つ。でもそんなことできるやついるのか?」
「さぁ?」
「わからないんかい」
「でも、こういったことなら斥候のコミュニティを使うに限るね。あらゆる情報がそこに集まるし」
「ノルン…………そっちのギルドにはもう加入してたのか」
「ん。索敵用の道具を買うのにその方がお得だったからね」
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斥候ギルド
フロンティエール裏路地の一角。奥まった位置にそれはあった。
巷では便利屋だの盗賊だの様々な蔑称がつけられたものだが、名誉のために斥候という名称に統一されたのはごく最近の話だ
斥候を常駐させるパーティが珍しくなりつつあり、暇になった斥候たちは情報屋をしていたりすることもある
「マスター。イチゴのケーキとクラフトビールをお願い」
「…………あいよ」
マスターと呼ばれた渋めの恰幅の良いおじさんがカウンター裏に姿を隠す
「――――前に酒なんて飲んでたか?ノルン」
「いや…………そういう隠語なの」
「ギルド内ですらそういうのがあるのか…………」
小話をしていると先ほどのマスターがカウンターに戻ってくる。
手には一枚の煤けた紙を持っており、そこにはとあるドワーフの男の似顔絵と情報が書いていた。
「嬢ちゃん。これでいいかい?」
「ん。ありがと」
ノルンは手際よくお金をマスターに渡し、立ち上がってギルドを去ろうとする
「これだけ?――――うわっ!!」
「いいから、余計な詮索しない」
ノルンに引きずられながらギルドを後にした
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「あのギルドはあぁなの。愛想悪く思えても互いが変ないざこざにならないようにするための配慮」
「――――覚えておくよ」
マスターから渡された職人の情報を見るとフロンティエールに所属していることが書いてある
「意外と近くだな。…………全然気が付かなかった」
「アコール、自分で武具の手入れするからここに来てから行ったことないんでしょ」
「まぁ避けるのが主体だし…………前に世話になった時と言ったらアシッドヴァルチャーの強酸でアマルの盾が溶かされた時の修繕の付き添いくらいか?」
「それって自分のためには行ってないってことじゃ…………つくづく倹約家だね、アコール」
「まぁな」
ややしばらく歩いていると夜が更けたというのに穏やかに辺りを炎で照らす鍛冶屋があった。
「…………ここか?」
「ん。そうみたい。入ろ?アコール」
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「――――お邪魔します」
中に入ると盾、鎧、数々の武器が陳列された空間にそのまま工房が横付けされていた
鼻を通る金属と炭の匂い。武具の手入れが日課だった俺にとっては心地よい空間だった。
「小僧…………始めてくる奴にしてはいい顔してるな」
「――――すみません、夜も更けてから来てしまって」
「ギリギリだかまだ営業時間だ。それに客からの依頼品もあるからどうせ営業時間は守れてねぇ」
「…………お気遣い感謝します」
「んで小僧、今日は何の用だ?」
「…………合成をお願いしたくて」
「通だな。確かに見たところ武具の破損はないとは思ったが…………まぁいい、材料をくれ」
「材料…………今回は剣と…………この杖でお願いします」
「――――それだけか?」
職人は淡々とそう言った。
「小僧の戦いの記録は…………それだけなのかと聞いているんだ」
「――――一体どういう意味で?」
職人はそれ以上、多くは語らなかった。
しきりに俺が差し出した剣や魔術師の杖を我が子のように撫でている。
彼の表情を見るにこの合成の提案自体に不満を持っているわけではないようだ
記録…………俺がこの職人に渡せるものは
俺はルルパに合図を送る。
ルルパ…………彼の活躍なくしてはこの先も生き残れない。
これも立派な…………記録だ
ルルパに俺の願いが届いたのか…………自身の体の一部を俺の手の平に差し出した。
そして過去の功績を思い出しながら職人の前に並べていく
アシッドヴァルチャーの強酸
ムーン・サーペントの牙
ルルパの体の一部
チェイス・オックスの角
バロバオの樹液
傭兵時代から共に過ごした愛剣
魔術師が遺した杖
「――――あるじゃねえか」
職人は満足そうにそれらを使い鍛冶師の妙技…………鍛造魔術を使い始めた――――




