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追放冒険者の限界生活日誌  作者: forefore
フロンティエール、出会いと別れが集う街
19/19

連携、舞踏は一変して強襲へ

「アコール、準備は良い?」

「…………変な格好になっても笑うなよ?ノルン」

「こっちこそ、こんなこと初めてだから…………せいぜい受け身は綺麗にとって…………よねっ!!」


前にムーン・サーペントと戦った街道近くの小高い崖の上。


強化魔術を発動しながら崖から飛び立つと同時にノルンの風魔術が俺の背中を押す。


「ううぉわ!?」


奇妙な軌道で宙を駆け抜け、目的の主の頭上までやってくる


「…………久しぶりだな、蛇公」


意識外、高速、それに上空から。ムーン・サーペントがこちらに気づくのに明らかに遅れている。


俺は空中で身体を捻り手に纏わせたルルパを地面に飛ばす。


ルルパは蛇の近くの地面と俺の手を繋ぎ、俺の合図とともに身体を縮ませて俺と地面を引き合わせる


空中にて急激に変わるベクトル。


「ぐっ…………おらっ!!」


自由落下、からのルルパによる引き寄せ。


勢いのままに鞘に納められたままの俺の愛剣が蛇の頭部を捉えて鈍い音を立てる


蛇からすれば僅か一瞬の出来事。その一瞬で蛇は唐突に頭を揺さぶられ、ふらふらと攻撃の主である俺を探し始める。


「痛って…………着地のこと忘れてた」


派手に転がりながらもなんとか着地した俺は鞘を手に持ち居合の構えを取る


「――――ふーっ…………」


鞘にマナが込められると、愛剣は淡く輝き、鞘からは振動魔術が剣に伝わっていく。


蛇は悠長に構える俺をようやく見つけ出し、勢いよく噛みついてきた。


「…………来るってわかってたら…………余裕で避けられる」


構えたままの状態で強化魔術を施した跳躍で横っ飛びする。


蛇の噛みつきは地面を抉り激突の反動を食らってさらによろける。


刹那、俺は蛇の首元に飛び込み、通り抜けながら鋭い斬撃で蛇の首元を切り裂く


蛇の首の半分は切れた。むしろ切れ味が良すぎて蛇は一瞬何をされたのか分かっていないようだった。


――――が、血しぶきが上がるとともに蛇は身体を大きく揺らして痛みに悶え苦しむ。


「やっぱ俺だけじゃ無理があるか、仕上げは…………"風詠み"、だなっ!」


俺は暴れる蛇の背中に飛び乗り、剣を突き刺し、ルルパを蛇に絡ませて身体を取り押さえる


「――――ん。外すわけない」


瞬間、風を切り裂いて弾丸にも等しい一矢が蛇の頭部を弾き飛ばす。


「ふぅ…………さすがの威力だな」


"風詠み"の矢の威力に感嘆しながらも戦利品のムーン・サーペントの解体を始める。


丁度良く崖から降りてきたノルンがルルパを抱き上げてこちらを見る


「――――ん、楽勝。アシスト、完璧じゃん」

「そっちこそ…………ナイス狙撃」


俺とノルンは互いに拳を突き合わせて作戦の成功を称え合う。


ルルパやノルンとの連携、進化した愛剣のポテンシャル…………どれも心地よい感触


以前はあんなに手を焼いたムーン・サーペントにここまでの検討ができるとは…………


「初動の作戦も場所によっては使えそうだな…………着地の練習をしないとあれだが」

「またする気?意表をついているとはいえ見てて危なっかしいんだけど」

「手札は多い方がいいだろ?着地に刻印魔術を使うのもありか…………」

「はぁっ…………ま、奇襲できるに越したことはないかな。ノルン達、正面戦闘は厳しいし」

「そう。いくらノルンや俺が機敏寄りとはいえな。…………よし、ご飯にするぞ」

「――――ん。こんな肉厚の蛇…………絶対美味しい」


耳をぴくぴくとさせ、尻尾もゆらゆらと振り、よだれが抑えきれていないノルン。


「まてまて…………しっかり焼いてからだからな?」

「アコール、待ちきれない。早くノルンに食べさせて?」

「…………はいはい」


例の如く蛇肉入り薬膳スープを噛み締めながら、その横で燻製の煙が天高く舞い上がる


前に食べた時はほとんど気絶していたし…………蛇肉の美味さに驚愕する


「――――美味」


ルルパ、愛剣、自分で使用するものを合わせればそれなりにマナを消費しているはずだが不思議とまだまだ力があふれ出る。


指先までマナが満ちる感触が蛇肉を飲み込む度に伝わっていく。


――――まるでマナ用の血管でもあるかのような感触。


「――――ん。アコール、随分魔力回路が育ってきたんじゃない?」

「魔力回路?…………前に聞いた気がするけどマナに関連するものなのか?」

「そ、魔術を使い込んだりしてマナを消費して、ポーションとか魔物の肉とかでマナを補充するサイクルを繰り返すと段々と体の節々に回路が枝分かれしていくの」

「…………単なる()()みたいな感じではなさそうだな」

「マナを保持できる量も増えるし、精密なこともできるようになるよ?」

「となってくると他にも魔術を使うことを考えてもいいかもな…………いつかは」

「うーん………だとしても単純な攻撃魔法は使いづらいかも。アコールには強化魔術があるんだし」

「そうだな…………よっぽどでもない限り攻撃面は打撃と斬撃を切り替えられる俺の愛剣で事足りるしな」

「さっき言ってた刻印魔術はありかも…………刻印魔術って刻む側に練度がいるだけで使う時はほとんど強化魔術と同じくマナを込めるだけだし」

「でもそれって自分で刻むものじゃないのか?」

「ううん。誰かに刻んでもらっても問題なく使えるよ?だって刻印魔術を刻むっていうのは術式を刻むっていうだけだから」

「…………?どういうことだ?術式を刻んでもらったら、俺はマナを込めるだけで使えるってことか?」

「そういうこと。着地の補助とかなら簡単な風魔術のやつでいいだろうしそんなお金はかからないと思うよ?」

「…………頃合いを見て魔術師ギルドに依頼してみるか」


新たな手札について検討しつつ、食べる手を止めずにいた俺とノルンだった――――

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