初心、冒険者と導きの星の創成期
「とても一人じゃ食いきれない…………」
解体されたチェイス・オックスの死体の前で頭を抱える。
冷静になればムーン・サーペントの件に関してもペリカが余った分は保存食にしたとか言っていたような…………
強化魔術とはいえ魔術を使えるようになったんだし、俺もそうするか…………
ふとルルパがちょんちょんと俺の頬をつつく
「――――ん?どうしたんだ?」
臭みがあるからと先に取り除いていたチェイス・オックスの内臓に興味があるようだった。
とはいえ、マナの性質が違うとするならルルパに危険が及ぶ可能性がある…………となると
「ルルパ?危険だから少しずつね?」
了承してくれたようで、チェイス・オックスの内臓を慎重に取り込み始める。
残りの内臓もしばらくはルルパの食事にとっておく必要があることを踏まえると…………
やはり燻製にでもして保存食に加工するしかない。
ひとまず、昼過ぎということもありお腹が空いている。先にご飯にすることにした。
と言っても鍋の類が一つあるだけなのでいつもの薬膳スープin牛肉なのだが…………
――――食事中にギルドへの報告書を書いておこう。
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未帰還パーティの調査依頼報告書
記名者:アコール・ネイチュ
フロンティエール南東の荒野にて該当パーティの遺体を発見。
原因はチェイス・オックスの餌場に近づいたことによる該当の魔物の激情の誘発。
上記の要因によってチェイス・オックスはパーティ内の魔術師を夜間に奇襲して刺殺。
残りのメンバーも不慣れな夜間での戦闘で苦戦を強いられた結果、手も足も出ずに全滅したと推察されます。
彼らの所持品のうち、魔術師の杖を残してほとんどが破損。
遺体の処理に関しては目印を立てたうえで一度仮土葬していますが、同封されている地図の目印の位置にあるバロバオの樹から地脈を辿って南南東の川沿いの薬草の群生地の近くにありますので。正式な処理をお願いしたいです。
ギルドに納品できるものは彼らの冒険者識別証と魔術師の杖。
――――後はチェイス・オックスに関する情報。
チェイス・オックスについて
未帰還パーティが受けていた薬草採取依頼の採取地を餌場としていることが推測されます。
バロバオの樹の振動属性のマナを利用した高周波探知とマナ索敵を使用していることを確認。
また、振動魔術の類を利用して岩石、樹、金属鎧をも貫通する破壊力のある突進を繰り出すため、当該魔物及び当該地域の危険度を引き上げるようにお願いいたします。
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「――――こんなところかな」
ギルドへの報告書。ムーン・サーペントの時は怪我のせいで書く余裕がなく回復後にギルドへ口頭での報告となってしまったが本来はこういった形で報告書を書かなくてはならない。
――――それは、冒険者の成り立ちが民間自衛組織からの発展だったからだ。
国の領地であっても、国は地方まで兵士を行きわたらせる余力がない。
傭兵を雇おうにも地方貴族がお金を払って雇うことになるので、そのせいもあってその貴族にとって利のある地域しか守らせないことが多いと聞く。
そんな中で立ち上がったのがガルド・パレンティア家と…………ギルドマスターのレオン・ヴァーミリオンの祖先だ。
活動初期の彼らはボランティアに等しい形で各地の魔物を狩り続けた。
ガルド・パレンティア家はなけなしの家財を売ってでも領地の安全に奔走し、
レオン・ヴァーミリオンの祖先はその人徳とカリスマで新たに地方の傭兵団を設立し戦った。
周辺地域、アヴァール王国の王族達からもさぞかし異質に見えたことだろう。
何しろ貴族の中に自らが築いた富を投げ捨てるような行いをする者がいたことを
…………そしてレオン・ヴァーミリオンの祖先――――獣人族が当時の迫害を顧みずに人間と手を取ったこと
――――アマルは自身の祖先に憧れ、俺は養父母の種族である獣人族の英雄――――ヴォルフ・ヴァーミリオンに憧れた。
懐かしい。出会った当初から微妙に価値観がずれていたアマルとパーティを組んだきっかけ。
――――フロンティエールから始まった冒険者の創成期。
「―――スープが冷めてしまう。」
急いでスープをかきこんでいると、近くの草むらから物音がする。
ルルパは身体を大きく膨らませて警戒態勢を取る。
「アコール、いつの間にそんなペット連れ歩くようになったの?」
スラっとした肢体。頭部に生える狼の耳。冷静にこちらを…………いや鍋を見つめる瞳――――口から漏れ出るよだれ
「――――君こそ、まだ傭兵団にいたんじゃないのか?ノルン」
そこにいたのは俺の傭兵時代の同期――――ノルン・ヴァーミリオンだった――――




