門出、一人ではない再出発
「――――本当に安全なんですか?その子」
「見ての通りだ、セヴィア…………よく懐いているだろう?」
「聞いたことないわよ………スライムが懐くなんて」
ペリカとセヴィアは、俺の肩の上で寝そべるように広がっているスライムを見てそれぞれ反応を零す。
「ペリカでも分からないのか?こいつが息を吹き返した原因」
「あのねぇ…………そもそもマナってものは色を付けて使うのが普通なの。魔術をきちんと学んでいるならなおさらね」
「色?」
「まぁわかりやすい例えってことね。色っていうのはいわゆる術式とか魔力のことよ」
「…………?急に色々と出てきたな」
「術式は簡単に言えば魔術の種類。強化魔術とか付与魔術とか回復魔術とかのことね」
「魔法じゃないのか?前はそう言っていた気がするが」
「魔法を使える人なんて厳密な定義に従うなら一握りよ。…………まぁ詳しい話は今回は関係ないから置いとくとするわ」
「魔力に関してはマナの性質と認識してもらって構わないわ。雑に言えば当人の適性ってことね。今回のスライムの件で大事なのはこっちなのよ」
「ふむ…………色に例えているってことはスライム側にも相性があるからってことか?」
「感が良いわねあんた…………そうよ、スライムにはその形質獲得能力のおかげで多様な種類がいるのは知ってるわね?だからこそ実験者とスライムの魔力同士の相性が関係しちゃうの。本来なら生きていないほうが管理が楽だからコストの安い魔石を砕いたやつを与えて疑似の核にしてるってわけ」
「――――ほーん」
「――――そうなんですね…………」
俺とセヴィアの脳に入る情報量がパンク寸前であることに気づいたのか、ペリカは諦めて目の前のスライムの方に視線を戻す。
「――――それで。肝心のあんたは悪影響は今のところないわけ?」
「特には?」
「――――何で疑問形なのよ。あんたねぇ…………こっちはそのスライムがアシッドヴァルチャーの強酸の性質を獲得してるから言ってるのよ?」
「なんだかほぼ甘えん坊の猫みたいな距離感だからな。その状態で今まで何も起きていないから大丈夫なんじゃないか?」
「大丈夫…………って…………はぁ。もう何も言わないわよ」
「ほんとにアコールさんにずーっとべったりなんですね?この子。名前とかつけたりしないんですか?」
「名前かぁ…………」
確かに考えてなかった。
目や口なぞないこのスライム。その見た目に反してここ数日で実感できた愛嬌。
ぜひともこの愛くるしい存在にふさわしいかわいらしい名前を付けたいものだが…………
「…………ルルパ、にしようかな」
「――――悩んだ割にそれ?東洋の国でいうポチとかタマくらいベタなペットの名前じゃない?」
「いいんじゃないんでしょうか。良く名付けられる名前ということはそれだけ愛嬌のある名前ということでもありますし?」
「セヴィア…………俺の拙い命名にそこまで――――」
「――――前から思ってたけど聖女さん、ほんと可愛いものに目がないわよね。さっきはあんなに危ないだのなんだの言ってた癖にぃ?」
「…………ペリカさんだってさっきから触りたくてうずうずしてますよね?」
「――――うっさい!!…………気のせいよ」
結局、ルルパは俺の首筋にちょんちょんと身体を伸ばして助けを求めてくるまでペリカとセヴィアに触られていた――――
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さて、一旦瓶に入れないほど成長したルルパを鎧の内側に潜ませることにして俺は冒険者としての生活を再開することにした。
「――――今度は元気な姿で会いに来てくださいね?アコールさん、ペリカさん」
「あたしも。またどこかで会ったらその時はよろしくね?アコール」
「またな、二人とも」
どこか物寂しさを感じる
けど、この別れはきっと最後ではない
それに、新たな仲間も増えた
鎧の内側でルルパがもぞもぞと動く
まるで「これからよろしくね」とでも言うように
新たな旅路に内心麗らかな気分で療養所を後にした。




