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つかえない勇者のつかえないチートによる何の差しつかえもない物語  作者: エカMo
御見合いチートと絶対落とし穴チート
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オリオン

途中で視点が変わります。

 ボコォンと地に開く大穴。


 俺とアン、そしてリッチはそれに吸い込まれるようにして落ちていった。


「オーケー、計画通りです!」


 膝で衝撃をいなす。

 アンもそうしたようだが、その反動で魔力が断絶したところをリッチは抜け出した。


 すぐさま、転移を開始しようとするリッチ。


 魔力が集まる。いつもなら、そう、いつもならその魔力の花火のような撹拌とともにリッチは消えるのであろう。

 しかしこの穴は不可離脱の魔孔。魔力が徒らに散るも、リッチの姿が消える――なんてことにはならなかった。


「やった、成功よ!」

「――そうですね」


 とはいえ、予断を許さない状況であることは変わらない。牽制で【火球】を打ちながら、未だためらう様子である聖女を待つ。



  ◆



「――どうするよ」


 うちら聖女が一人、アラムが聞いてきた。


 正直、うちにとってはどっちでもいい。

 できることならアラムとルニータが先に入って、罠にかかるならかかるでおさきにどーぞってカンジなんだけど、どーせこいつらも同じこと考えてる。

 あの――名前忘れた、オトリでいっか。アレが言うには……なんだっけ。なんか作戦がどうとか言ってた気がするけど、興味ないから忘れた。


「かえるー?」

「そーだね」

「さんせー」


 おー、意見がまとまった。

 やっぱ考えてることは一緒だよねー。リガイのイッチってやつ。


「――待ってくれないかな」


 しかし、セッカク話がまとまったと言うのに、水がさされる。


「君達はサブロー君を見捨てるつもりかい?」


 サブロー? ……ああ、あれの名前か。

 話しかけてきたのはオトリの保護者の、ハリーっていう人だ。


「……それはコヨーシャのうちらのハンダンでしょ?」


 ――でも、保護者だろうがなんだろうが、うちらの判断はゼッタイだ。トーゼン、セーサツヨダツもうちらが握るべきだろう。


「よっ、ミントさん! 言うねぇー」

「さすがはミントさんだ!」


 こいつらもよく言うものだ。ついさっきまでオトシメるつもり満々だったろうに。


「そんなことよりハリー、うちと遊ばない?」

「あっアラムずるい! うちの方がいいって!」


 ――感心していたうちに抜け駆けされた。

 確かに一晩の相手としてはリソーテキな優男だけど、なにもこんなところで誘う必要はないと思う。


「あーん、うちだって!」


 まあ、シャクにさわるからうちもやるんだけどね。

 すごい、筋肉が引き締まってる。これはオトし甲斐があるぞ。

 オトリその2とは比べ物にならない胸を当てつける。変形し、男を魅了するのだ。


 オトコって単純だ。こうすれば、大抵オトせる。

 バカだなー、なんて思ってナメていた。


「離してくれないかな!」


 だから、この優男が声を荒げたのには驚いた。


「な、なに? あんたもうちらに付き従ってればそれでいいんですけど」

「――そんなことのために依頼を受けた覚えはない。君達がサブロー君を雇ったなら、その契約は完遂されるべきだ。違うかい?」

「わっかんなーい」


 まだ笑顔だから、大丈夫だろう。

 どーせ、うちらを殴れる人間なんていないんだし、チョーハツするのもけっこー楽しいし。

 どうせ、うちらとこの男の間には見えない檻があるんだ。うちらはドーブツエンとかいうのの見物人のようなものだ。


「そんなことよ――ぐへぇっ!?」


 ――だからか。突然すぎて理解が追いつかなかった。

 殴られ……。殴られた!?

 ありえない、うちがそんなことをされれば、教会が黙っていないぞ。


「誰! 一体誰!?」

「ミント、後ろ!」


 振り返る。


「あんた――オトリの奴隷じゃない」


 巫山戯るな、奴隷ごときがうちを殴ることが許されてなるものか。


「……私はね、貴方らの意見は至極もっともだと思いますよ」


 そう言いながら、次にアラムが殴り飛ばされる。


「――ですが、君主はその下の者に相応の対価を払うべきですし、しっかり真摯に対応するべきです。それができない君主など、君主に足らないでしょう」

「は?意味わかんな――へごっ!?」


 そしてルニータも殴打される。


「くっ……。なんのつもり?」

「いえ……。私も『裏切られたクチ』なのでね。あの少年は気に食いませんが、それよりは――」


「今の貴方らの方が気に食わない。」


 ――表情がわからない。

 この奴隷は、なんのつもりなのだろうか。

 さっぱり理解できなかったし、かといって理解しようとも思わなかった。


「奴隷ごときに、奴隷ごときに……っ!」

「とんだ辱めだ!」

「そーよ!」


 認められなかった。正しいか正しくないか? そんなの知らねー。こいつが気に食わない。

 力の限り睨みつけた。


「……仕方ないね」


 するとハリーが言うとともに、瞬間、重心がずらされる。


「――えっ」


 とん、と肩を押されたようだ。そのままコメダワラとかいうのを持つ百姓みたいにうちらを担ぐと、中の全く見えない穴の中に放り投げた。


「畜生! 教会の名の下に、後でぶっ殺してやる!」


 どしん、と尻餅をついた。

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