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つかえない勇者のつかえないチートによる何の差しつかえもない物語  作者: エカMo
御見合いチートと絶対落とし穴チート
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トロイカ体制

 アンと出会って数日が経った。

 ――とはいえ、結局薬草採集しかしていないのだが。


 彼女も良い具合に身体に慣れたようで、元々上手かった薬草採集がさらに良くなった。

 下手したら半年やった俺と同じレベルなんじゃないか?

 それはそれで落ち込むが。


 そうして、俺がアンと街道を通りギルドに報告、納品に向かっている時


「ねえねぇあんたらさぁ、ちょっとこっち来てよ」


 女三人に声をかけられた。

 見た感じ娼婦の類ではなさそうだが。


 ……しかし、厄介事の臭いしかしない。

 今はハリーさんは他の仕事でいないから、できればこう言うのに関わりたくないんだが。

 アンも俺に目配せをしている。


 こう言った案件は冒険者ギルドに逃げ込めば回避できる。まあ、流石にギルドもその辺にコンビニのごとくぽんぽこぽーんと建っている訳ではないのだから、実際にその切り札を使える場面は非常に限られるのだが。

 そして、どうやらこの地点はギルドから遠い、すなわち三十六計逃げるに如かず大作戦が使えないということになる。


 諦めよう、という目をアンに送る。

 所詮未だFランカー、抵抗に意味などないだろうから。

 俺――はロクに話せるかわかったものじゃないので、アンに対し話してくれ、と再び目を送った。

 アンは呆れた目を俺に返し、それから口を開いた。


「何の用でしょうか。何かしてしまったのであれば謝罪しますが」


 はっきりと、芯のある敬語でそう言うアン。

 それに対して、未だ口調を崩さず――いや、ある意味崩れ切っているのだが、女の一人が口を開いた。


「ちょっとさぁ? あんたら、いい加減薬草持ってくんのやめてもらえない?」


「それは困ります。私達も仕事なので」


 にべにもかけない態度をとるアン。


 薬草? どうしてそんなものを。


「うちらさぁ、教会への布施で今のセーカツができてんだよね。で、その金が減ってるから聞いたらぁ、あんたらが薬草をとるせーでポーションが安くなってんだってゆーの。もっと質素に暮らせだなんて、マジありえない」


 言いながら髪を弄る女の手には、両手で数えられないほどおびただしい数の指輪。耳にもジャラジャラとピアスやらイヤリングやらをつけているのが伺える。


 その中には、『教会』での立場を示すものも見受けられる。


 ……なるほど。


 俺だって一応この世界の常識レベルの知識は持っている。あれは、そう。


 ――聖女。


 言われてみれば現在の聖女は三人いると聞いたことがあったが、まさかこんなにギャルギャルしているものとは思わなかった。

 とすると大方、薬草が市場に出回りポーションの値段が下落したことで、教会での魔法での治療客が少なくなった、と言いたいのだろう。で、収入が減って贅沢ができなくなった、と。


 なんか色々と言いたいことだらけなのだが、俺に交渉能力なぞないので黙っていよう。

 口は災いの元である。


「王女のやつに聞いたよ。あんたってさぁ、例の出来損ない勇者でしょ? うちらさ、ただでさえあんたのせーで金がないのにそんなことされちゃあ困るんだよね、正直、メーワクってゆーか」

「でぇ、もっといいアクセとか欲しいしぃ、あっほら、うちらオトシゴロってやつじゃん? オシャレとかにも気ぃ使わないとなんないから、お金がいるわけでぇ。だーかーらぁ、その汚(きたな)らしい草を捨てろって言いたいの」


 ――汚(きたな)らしい、だと?


 ふざけんじゃねぇよ、これは俺と『アンが』汗水垂らして収穫してきたものだぞ、易々(やすやす)と渡すわけなかろうが。

 それに、ポーションがないと出先で怪我した後の致死率が大幅に上がるんだぞ、そいつらに野垂れ死ねとでも言いたいのか?

 第一、ポーションに遅れを取るような魔術士しか教会にはいないのか?その上――


 アンに手で制止された。


 ……そうだな、ここで怒りを噴き出すのはどう考えても悪手だ。

 心の中で礼を言った。


 そうだな、もっと良い手立てだってあるはずだ。例えば――


「聖女さまだ! 聖女さまがいらっしゃるぞ!」


 こうやって、声を張り上げたりだとか。


 柄にもないことをやってせいで冷や汗が止まらない。

 道を行っていた民衆は皆、こちらを見ている。

 その目が俺、アン、そして聖女トリオと動いていき――


「聖女さま! お会いできて光栄です!」

「どうか、私の子にご加護を!」

「俺には寝たきりのジジイがいるんだ!治してくれ!」

「頼む、儂の髪をもっと生やしてくだされぇ!」


 わらわらと聖女トリオに群がっていく。

 流石のトリオといえど蔑ろにできるわけもなく、咄嗟にピアスや指輪を外し、慈愛に満ちた笑顔で、一人一人の声に耳を傾けていた。という、演技をしていた。


 俺はアンに引っ張られてその中を抜け、逃げていく。

 キッと睨まれた気がするが気のせいだろう。まさか、慈愛に満ちた聖女さまがそんなことをするはずがないもんな!


「……助かりました」

「貸しだからね、覚えてなさいよ」


 恐ろしいことで。


 また厄介な奴等に巻き込まれたものだ、と思いつつ、ギルドに駆け込んで行った。

 これで、一安心か。

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