水の子守謳 ‐‐七‐‐
山の中を進むにつれ 真昼間だとゆうのに
どんどんと薄暗くなる。
「ひゃ~暗いでありんす~。」
耳を下げ情けない声を出す命。
その背後から物凄い地響きを立て
木々をなぎ倒しながら進むのは天悟丸。
「おい。お前刀に入ったらどうだ?移動しにくいだろう…。」
先頭を歩いていた蓮仙は呆れた顔で振り返る。
『其処は狭いから嫌だと言ったはずだ。』
体に付いた枝や葉っぱをぶるぶる体を震わせ払い落とす天悟丸。
「全く…我が儘は相変わらずだな。屋敷を壊すのだけはもう勘弁してくれよ。
じじいが倒れるからな。」
その時 暗い森の中に ほのかに水の匂いを感じ、蓮仙は少し足早になる。
草を掻き分け ちゃぷんッと水の弾ける音がすると同時に
「着いたぞ。」
巨大な池が姿を現した。
黒く 淀んだ水が 風ひとつないにも関わらず ゆらゆらと渦を巻いている。
其処に優雅に泳ぐ 喰魚の群れ。
「こ…ここが…骸池…。」
その異様な空気に 命は寒気がした。
そんな命とは裏腹に ゴクリ喉を鳴らす天悟丸。
『喰魚ではないか。うまそうだ。』
「何言って…ッ!!」
突然右目を抑え顔を歪める蓮仙。
「蓮仙様!?どうしたでありんすか?!」
俯く蓮仙に命が駆け寄る。
「ッッ!?」
驚く命の視線の先には 今まで見たことない程の赤い光を放つ蓮仙の右目。
その瞳の中でまるで炎が渦巻くように。
瞬間 骸池の水が地響きを立てながら まるで 底に穴が開いたように抜けていく。
ゴゴゴ…その音に命は思わず耳を塞ぐ。
「…はあッ。成程ね。」
右目を抑えていた手を離し、蓮仙は大紅天乱桜に手を掛ける。
「蓮仙さま…?」
「下がれ命。出てくるぞ…邪な女に心を奪われた愚かな屍が。」
ズズズ…
黒い水が見る見るうちになくなり、底が見え始める。
そして全ての水が消え
池の中には大量の屍の山が現れる。
そしてその山の中から ズルリ…何かが這い出してくるのが見えた。
「あ…ああ…あれは…!」
『おお。なんとこんな所に沈められておったか…。』
カシャン…
這いつくばるように 姿を現したのは
両手両足を鎖に繋がれた 少年。
その体は半分が腐敗し 骨がむき出しになっている。
『海鬼埜蛇子より産まれし 空残獄よ。』




