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-鬼仙歌(おうせんか)-  作者: 神楽 桜
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水の子守謳  ‐‐四‐‐

翌日の事。


夜神家の母屋の近く、薄暗い雑木林の中、不気味な真っ黒な倉がある。

蓮仙はその倉の前に立ち 先日麟仙に言われたことを思い出していた。



『貴様(きさん)の力なくしてこの国は守れぬ。逆成長が止まらぬわしゃの力も

昔とは比べものにならんほど弱っている。もはや、わしゃは戦力にもならぬ。』

そう言っては酒を煽る麟仙の背中が逆成長のせいではなく

小さく見えたのは気のせいではない。


「また、此処に来ることになるとはな…。」

倉を見つめ静かにため息をつく。

蓮仙が海鬼埜蛇子をその身に封じてから 邪使は暫く姿を消していた。

母殺しの実を焼き払って人がその実を口にする事が無くなったからだ。


しかしまたその悪しき実が人の手に渡った。

邪使が現れることは明白。


蓮仙のため息はますます深くなった。


倉の戸にかけてある南京錠を外し、ゆっくりと戸を押すと

ギギギと不気味な音が鳴り響く。


戸を開けたその先の小さな空間の真ん中に

床に付きたてられた瑠璃色の刀。

その刀をまるで拘束するかの様に

巻きつけられた鎖は壁に張り巡らされた札へと繋がっている。


蓮仙はその刀の柄の部分を掴む。


「起きろ。 大紅天乱桜(おおこてんらんざくら)。」


そう言うとガタガタと倉は揺れ始め 刀を札を繋いでいた鎖は赤い炎を走らせ

消滅する。

全ての鎖が外れ 蓮仙が刀を抜くと

背後に感じる殺気に気付いた。


『何度も言わせるなよ小僧。我が名を読み間違うなと…。』



振り返るとそこには巨大なオオカミの様な姿をしている化け物。

真っ白な毛を靡かせるその姿はまさに異形の姿。

額には第三の眼。頭に掛けられしは鬼の面。

銀色の牙が怪しく光る。


「悪いな。すぐ忘れちまうんだ。天悟丸(てんごまる)。」

蓮仙はニタリと笑う。


蓮仙の握る刀 大紅天乱桜に宿る式神、大鬼神天悟丸(おおこのかみてんごまる)。


『我を抜く事が出来たといえど 貴様が童(わっぱ)で或ることに変わりはない。

それに以前は我の気まぐれで力を貸したまで。貴様が主とは認めておらぬ。』


「あー、もう分かってるよ!お前が俺を嫌いなのは重々承知だ。けどな、お前と俺じゃなきゃだめなんだよ。」


『何度も言わせるな、小僧。何故我が貴様のような童に力を貸さねばならぬ。』


以前変わらぬ天悟丸の態度に蓮仙はため息をつく。

天悟丸がこう言う事は予想していたからだ。


「じゃあ、こうしよう?力を貸してくれるなら全て終わった後、俺を好きにしろ。

それなら文句ないだろう?」


ニコニコしながら言う蓮仙に面喰らったのか天悟丸は暫く黙った後


『…良いだろう。頭からバリバリと喰ろうてやるわ。』

と薄く笑った。



「あ~お久しぶりでありんす~!天悟丸様~!」

陽気な声で現れた命の手に持たれた皿の上にはプルプルと揺れる物体。


「命。お前何を持っているんだ?」

蓮仙は不思議そうに皿の上のそれを眺めていると

ポタポタと腕に滴る雫に気付く。


「うわッ!?汚ねえ!!ヨダレ垂れてるぞ!天悟丸!」

皿の上のそれを見て 天悟丸はダラダラとヨダレを垂らしていた。


「天悟丸様の大好物の“ぷりん”でありんす♪幸様が作ってくれたでありんす~♫」

どうぞと命が差し出すと同時に 天悟丸はペロリとプリンをたいらげた。


『中々美味であったぞ。』


「そうでありんすか~。良かったでありんす♪」

そう言いながら天悟丸の顔をよしよしと撫でまわす命に

気持ちよ下げに目を瞑りグルグルと喉を鳴らす天悟丸。


「本当に命にだけは良く懐く犬みたいになるんだな。」

呆れたように蓮仙がため息をつく。


命を生み出したのは大紅天乱桜、つまり天悟丸である。

親子の様なモノなのだが 傍から見れば飼い主と犬である。


「あッ!そういえば蓮仙様!花仙様が探してたでありんす!!」


「じじいが?また下らん事じゃあないだろうな…。」





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