水の子守謳 ‐‐参‐‐
差しだされた麟仙の手の平には黒い玉の様な物が光っていた。
其れを目にした瞬間、花仙と蓮仙の表情は途端に曇り出す。
「それは…まだそんなモノが…。」
「何でありんすか?その黒い玉は…。」
何も知らない命はその珠を手に取ろうと手を伸ばす。
「よせ。触るな。」
その手を蓮仙が掴み取り、離れかけた命の体を引き戻す。
「な、何故でありんすか…?」
「これはの、“母殺しの実”じゃ。悪しき実、とも呼ばれている。」
麟仙は手の平にある其れをブチュリと握り潰し
床へと放る。
「母殺し…?」
「この実を口にすれば最後、、じきに邪使へと堕ちる。反対の意味では只の人間が、膨大な力を手にできる。
海鬼埜蛇子は最初にこの実を発見し口にした。人を捨てる為に。」
「…でもそんな実一体どうやって…。」
不安げに蓮仙を見上げる命。
「お前に以前した話を覚えているか?“対の神”の話だ。」
蓮仙の言葉に命はハッとする。
「…はいでありんす!この世の神様のお話でありんす!」
‐‐‐‐‐‐
この世には二つの神が存在する。
片方の神は 人間が大嫌いで
もう片方の神は 人間になりたいと願っていた。
相反する互いの想いはいつしか
片方の心を壊してしまった。
そして 壊れてしまった片方の神は
人間の世界に自分の一部である実を。
喰らった人間を壊す為。
そして もう片方の神は
愛する人間を守るため その中から選んだ者達に
自分の力のすべてを与えた。
力のすべてを与えてしまった片方の神は
長い長い眠りに付き 今も眠ったまま…
‐‐‐‐‐‐‐‐
「…とゆうお話しでありんす!」
耳をピンと立て 必死で話す命の姿に花仙も麟仙も腹を抱えて大笑いした。
「ハッハッハッ!!そうじゃそうじゃ!!よお覚えておったのう~。」
「な、なんで笑うでありんすか~!?」
涙目になり、プウッと膨れる命。
「スマンスマン。あんまりにも貴様が必死だったものでな。」
命の様な純な生き物を此処しばらく見ていなかった。
麟仙は少し、蓮仙をうらやましく思った。
式神は主の人間性に大きく影響する。
蓮仙だからこそ、命とゆう式神を生み出せた。
今の自分にはどんな式神が生めようか。
そんな思いが麟仙の心を少し揺らしたのだった。
「其の神が生み出した“母殺しの実”。蓮仙が海鬼埜蛇子を封じた時に
全て焼き払ったはずのモノがまた人の手に渡ったのじゃ。」
「……。」
麟仙の言葉の意味を理解してか、蓮仙は黙り込む。
それもそのはずで
「わしゃの言うておる意味が分かるな?選ばれし一族の子よ。」
また 再び 争いが起こる。
其れを止めるため 残された人間を守るため
「あれを抜きに行かなきゃなんないわけだ。」
蓮仙は深い深いため息を付いた。




