水の子守謳 ‐‐碧‐‐
パチ…ッパチッ…
先ほどまで天まで届きそうな程舞い上がっていた炎は
静かに枯れようとしていた。
陣を象っていた光は消え 中心には黒い砂がサラサラと舞っていた。
いつの間にか明けていた夜。薄い光が照らすのは
いつまでも立ち尽くしたままの幸の姿。
少し離れた場所で 蓮仙たちはその姿を見ていた。
「幸様、大丈夫でありんすかね…?」
ピコピコ耳を動かしながら心配げに命が呟く。
「…大丈夫じゃあないだろうな。二度も大切なものを失ったんだ。」
そう言うと蓮仙は一人屋敷の中へと入っていった。
「…蓮仙様…。」
その後ろ姿を見て また 命は眉尻を下げた。
「仕方あるまい。あの馬鹿も責任を感じておるのだろう。だがな、
そんな事ばかり考えていてはいかんのだ。救えなかった命を想うのも大事だが
まだ守らなければならんもんがある、あやつには。そして、儂らにものお。」
花仙はニシシッと笑い命の頭を撫でた。
やはり蓮仙は花仙の子なんだと 命は思った。
「そっくりでありんすう♫」
「?なにがだ?……そういえば命。あのバカ犬はどこへ行っ……」
ドゴッガゴンッガッドオオオオオオオオオンッ!!!!
花仙が命にそう問うた瞬間。
屋敷の奥から物凄い騒音がし、青い顔をして花仙は一目散に走って行った。
「待ってくださいでありんす~!」
その後を命も追いかけて行った。
「騒がしいのお…全く。のう?幸。」
いつの間にか現れた麟仙は幸に声を掛ける。
その微笑む姿を見て 幸も小さく笑い
「ホントに。さあ、婆さま、朝食にしましょう。すぐに支度します。」
と屋敷の方へと駆けて行った。
「わしゃは 酒がほしいのう。」
気付けば黒い砂はすべて風にさらわれ 空を舞っていた。
碧く 広がる 空に。




