水の子守謳 ‐‐十三‐‐
“殺してくださいませ。蓮仙様。”
幸の瞳は 真っ直ぐに蓮仙を見つめる。
その瞳には 曇りも動揺も感じられなかった。
「よ…良いのでありんすか!?幸様!」
幸に駆け寄り肩を掴む命。
その命の手に自らの手を重ね 優しく微笑む幸。
「良いのです。命さま。このままあの邪使に体を奪われ
あの子の体で人を殺め続けるのなら…」
そう言いながら再び蓮仙を見つめる。
「蓮仙様のお手で。どうかあの子を。」
地面に頭を擦り付け土下座し お願いしますと何度も呟くその声は
涙で揺れていた。
「…分かった。だから頭を上げるんだ幸。」
幸が顔を上げた時 蓮仙は既に背を向け 天乱桜には
膨大な光が纏っていた。
視線の先には頭を抱えながら苦しむ空残獄の紅い瞳がチラチラと光る。
「天悟丸。」
『仕方ないのう。』
そう言うと天悟丸は 天乱桜の中へと姿を消した。
「命。幸。儂の後ろにおれ。」
いつの間にか現れた花仙が命たちの前に立っていた。
ガシャンッ
腕を思い切り振り上げ地面に大紅天乱桜を突き刺す。
「蒼き天に伸ばし 紅き血を屠る闇夜の桜よ
我が声ヲ聴け 共に謳い 肉を散らせ 紅天円舞六葬陣」
突き刺した刀から 空残獄を囲うように 陣が刻まれる。
激しい風と バチバチと光る稲光に
頭を抱えていた空残獄の動きを奪う。
「くッ…おのれ…蓮仙…!!このままでは済まぬ…!ぬおおおおおおおお!!」
頭を押さえながら 片腕で蓮仙に飛び掛からんとする…が。
ドクンッ
陣の中で苦しみもがき始める空残獄。
「んあああああああああああッ!糞がッ!まだボクの邪魔をするのかああああ!」
「…幸。前へ来い。」
蓮仙は花仙の後ろに避難する幸を 陣の最前線へ来るよう呼んだ。
「はい…蓮仙さま…。」
戸惑いながらも 幸は蓮仙の言うとおり前へと出た。




