水の子守謳 ‐‐十‐‐
日も沈み 世界は暗闇へと飲み込まれた夜の刻。
村人も 動物も 寝静まる 静かな夜。
己の傍ら 壁にもたれ 眠ってしまった母の姿を
月の光を頼りに 確認する。
真っ白の髪は 外から入り込む夜風に揺れ
碧い瞳は ゆらゆら 揺らめく。
静かに そっと 壊れぬように 幸の頬に触れ
瞼にそっと指を這わせた。
「母さん、ボクは……。」
バンッ!!
その時勢いよく部屋の襖が開けられた。
「よ~お。想くーん?お母さんに何しようとしてんだあ?」
其処には蓮仙が立っていた。瑠璃色の刀を携えて。
「……。」
よほど疲れているのか 目覚めない幸の顔に触れたまま
背を向け じっと動かない想。
「あ、違った…。悪いな?空残獄!!」
そう言い蓮仙は一瞬にして背を向けている想に切りかかる。
ガツッ 鈍い音がしたかと思うと
蓮仙の刀を素手で弾き 幸を肩に抱えた。
そして戸を突き破り 庭にある岩の上に飛び乗った。
その眼は 想の碧いモノではなく 真っ赤な血の色をした眼だった。
ドウゥゥッ!
其れを追うように破られた戸の隙間から 赤い光が飛散する。
そこからゆっくりと赤い光を纏い 蓮仙も庭へと出る。
「…幸は寝てるわけじゃなさそうだな?何をした?」
「フン。愚かな亡術師よ。もう遅いと言っただろ?ボクの覚醒にはこの女が必要なんだ。」
そう言い 幸の顎を持ち ペロリと頬を舐め上げる。
「幸の血…か。」
蓮仙は眉間に皺を寄せ 表情は先ほどとは比べものにならに程険しいモノになる。
「そうだ。此の女は夜神家の正統な血を引くもの。ホントはお前を喰らうのが一番いいんだけど。
無理そうだからね。この餓鬼じゃ足りない、この女を喰らえば ボクは以前の力を取り戻せる!」
「ッ!させるかよ!!」
ドシュッ!!
赤い光を 空残獄へ放つ。
しかしサラリとかわされ もう一度放とうと構えた時
「やめてくれるかい?お母さんが起きちゃうから。」
盾にするように 幸を抱え 舌を出し笑う。
「…ホント、お前は性格悪いな。」
刺すように 蓮仙の瞳は 怒りに染まる。




