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-鬼仙歌(おうせんか)-  作者: 神楽 桜
10/21

水の子守謳  ‐‐九‐‐


蓮仙達が屋敷へ戻ると 庭には麟仙の姿があった。


「戻ったか、蓮仙。」


「婆、今まで何処行ってたんだよ?」


「ああ、少し野暮用でな。ところでどうじゃった?骸池は?」


蓮仙の右目を見て 麟仙は目を細める。

「…沈められてた空残獄の封はほとんど解けていた。そして…」

蓮仙は右目を抑え 黙り込んだ。

そんな蓮仙の様子に麟仙は確信する。


こやつの右目の封も解けかけている…と。


『あの餓鬼はどこへ行った?』

天悟丸はキョロキョロと屋敷を見渡す。


「幸の部屋で寝ておるわ。」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐




すうすうと穏やかな寝息を立て 眠る想の顔を優しく撫でる幸。

その瞳には母親が子供へ向ける愛しさと

僅かに 戸惑いの色が滲んでいた。



「想…なのよね…。母さん…喜んでいいのよね…?あなたが生きててくれた事…。」

不安とこみ上げる愛しさ。

真っ白の髪を細い指でとく。


「なら…今度は必ず、守ってみせるからね…?」




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



「あの餓鬼は本当に想だと思うか?」

蓮仙の言葉に麟仙も命も目を見開く。


「…確かに。生きているはずはないからのぉ。じゃが…」

皆思うは幸の事。

我が子が生きていて嬉しい母の心を壊すような事はしたくないと。


「想は天地大戦時、母殺しの実を喰わされ、その邪気に体が負けて喉が裂け、骸池へ捨てられた。」

話を聞いて命はきゅっと目を閉じる。

ふるふると肩を震わせ、天悟丸の首元へと顔を押し付ける。

命の心を察し、天悟丸は命の頬をペロリ舐め上げる。



「…想が姿を現した事と、空残獄の解放。そして貴様(きさん)の右目の封が弱まっている事…。

あの邪がまたこの世に蘇らんとしておるようだな。」


海鬼埜蛇子が再び この世界を血に染めんと

蓮仙の右目の中で 鎖をひとつひとつ 掻き切っている。


そう その感覚を蓮仙も確かに感じていた。


懐の刀を眺め 蓮仙はめんどくさそうにため息を付く。


「それでも 俺はこの右目が腐り堕ちても あの女を此処から出すわけには行かない。」





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