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隔絶した世界に転生した親友と  作者: まーくん
幼年期

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第25話 隔別 ー村へー

(ヴァルト視点)

 

 目が覚めた時、窓の外はまだ薄暗かった。


 昨夜どのくらい眠れたのかは正確にはわからなかった。ただ、頭は妙にすっきりしていた。何かが決まった後の、あの感覚に似ていた。


 朝食はガレス殿と同じ卓についた。使用人が黙って席に案内してくれた。食事は温かく、よく作られていた。魔界の食卓とは違う香りがした。違う、ということ以上はまだうまく言葉にならなかった。


「昨日は迷惑をかけた」と言った。

「気にしなくていい。それよりも、もう大丈夫か?」

「ああ、もう問題はない」と答えた。


 食事をしながら、ガレス殿に村を見て回ることの許可を取った。「アリシアとリュートを連れて行くといい」と言われた。アリシアはすぐに快諾した。こちらは目礼で返した。


――――――


 食休みの後、アリシアの母のマリナ殿と三人で話した。リュートは朝の剣術の稽古があるため、終わる頃に迎えに行こうということになった。


「この村はどういうところだ?」と尋ねた。


 マリナ殿が答えた。先代の領主が辺境伯から開墾指示を受けて作った村で、農業が主要な産業になっているが、蜂蜜が特産品になっているのだという。最近はワイン用の葡萄の育成にも力を入れていて、商品化を目指していると聞いた。


「魔物や害獣は出るのか」

「出るわよ」とマリナ殿は答えた。魔物だとホーンラビット、フォレストウルフ、たまにレイジベアが出ると教えてくれた。

「やはり出るか」と思わず呟いた。


 アリシアがそろそろいいくらいだろう、と席を立った。後についていくと、リュートの家はほどなく着いた。


 ちょうど剣術の稽古が終わったところだった。エルド殿、ランベルト、リュートが三人で汗を拭っていた。


「精が出るな」と声をかけた。

「いつものことだ」とエルド殿が言い、「やってみるか?」と聞いてきた。

「いいじゃないか」とリュートが乗ってきた。


 剣術の訓練は一度もしたことがなかった。「勘弁してくれ」と顔を何度も横に振った。「そのうち見学くらいはさせてもらうよ」と返すと、三人ともに声を出して笑った。


 用件を伝えた。村を見て回りたい、ガレス殿にアリシアとリュートを連れていくよう言われた、だから来た。


 リュートはすぐに支度するから待っていてくれと家の中に入っていった。


「別に急がなくていいぞ」と後ろから声をかけた。


――――――


 リュートとアリシアに案内されて、村を回った。


 養蜂施設に着いたところで、管理者の男と目が合った。リュートたちの顔を見て自然に手を挙げた。「今日も来たのか」という声に、遠慮がなかった。


 巣箱が等間隔に並んでいた。一つ一つを手で確認しながら回っていた。こういう仕事は、さぼり方がすぐわかる。さぼっていなかった。


「あの人、毎日あの調子なんだ」アリシアが言った。

「ちゃんと見てる人って、声が違う気がしない?」


 答えなかった。ただ、頭の隅に置いた。


 葡萄畑は斜面に沿って整然と広がっていた。苗木の根元の土の盛り方まで揃っていた。

 

「去年から力を入れてるんだって。お父さまが全部の棚を組み直させたみたい。大変そうだったけど、今年は収穫が増えたって」アリシアが教えてくれた。

 

 ただ、畑の低い端に水が溜まりやすい地形があるのが気になった。口には出さなかった。


 共同倉庫は広さの割に仕切りが少なく、穀物と蜂蜜が同じ区画に置かれていた。壁際に湿気の染みがあった。悪くはないが、もったいない。


「去年、蜂蜜が少し傷んだことがあって」とアリシアが言った。倉庫の壁を見ながら言っていた。

「なんでかわからなかったんだけど、もしかしてこれかな」


 もう一度、壁の染みを見た。


「そうだろうな」と言うと、アリシアが「やっぱり」と呟いた。その声は問い返しではなかった。自分で答えを持っていたのが、確認されたという顔だった。


 市場は小さいながらも人が集まっていた。売り手が買い手に顔で挨拶していた。価格の交渉より先に、今週の天気の話になっていた。


 森との境目に差し掛かった時、柵があった。一応の害獣対策はされているようだったが、木の間隔が広い箇所がいくつかあった。冬前には熊が出るとマリナ殿が言っていた。これでは心もとない。

 リュートが少し先を歩きながら、古い柵の杭を一本叩いた。「ここ、毎年気になってるんだよな」と独り言のように言った。


 頭の中で整理しながら歩いた。改善できるところがあった。


 ただ、数字や構造の前に、気づいたことがあった。リュートとアリシアがすれ違うたびに、領民の誰もが自然に挨拶をしていたことだった。領主の娘と従士長の息子だからという遠慮ではなく、顔を見て声をかけているのがわかった。慕われているというのはこういうことか、と思った。親の人となりが、そのまま子どもへの接し方に出ていた。


「それで、色々見て回ったけど、どうだった?」とアリシアが聞いた。

「素晴らしかった。どの領民も自分の仕事に誇りを持っているようだった。見ているだけでわかる」

「それに、お前たちが訪れたり、すれ違うたびに誰もが挨拶をしていた。慕われていなければそうはならない。お前たちの親は領民のことを大切にしているんだろう」

「ただ……」

「ただ?」とリュートが聞いた。

「いくつか改善できそうなところも見つけた。あとでまとめてガレス殿やアーデン殿に話してみようと思う」

「すごいな。見ただけでわかるものか?」

「そうだな。俺も少し驚いているが、なんとなくこうした方が良さそうだというのを思いつく」

「どういうところだ?」

「内緒だ。アーデン殿に話したあとに聞けばいいさ」

「今でもいいだろ」

「さあ、日が暮れる前に帰ろう」


 さっさと先を歩いた。「おい」とリュートが後を追い、アリシアも「待って」と追いかけてきた。三人並んで、来た道を戻った。日はまだ沈んでいなかった。


毎日20:00投稿予定

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