第18話 邂逅 ー目覚めー
(ヴァルト視点)
気がついた時、見知らない天井があった。
慣れた部屋の天井ではなかった。石の作りも、光の差し方も、空気の感触も、全部初めてだった。
ベッドの上にいた。体が重かった。喉が渇いていた。
俺を見ている少年がいた。
明らかに警戒していた。隠す気がないと思えるほどに。しかし目が穏やかだった。黒い目、黒い髪で、俺と同じくらいの年齢に見えた。服装は平民のものだった。
警戒しているのに、穏やかな印象を受けた。見ていると、張り詰めていた何かが少し溶けるような感覚があった。なぜかはわからなかった。
「ここはどこだろうか?」
「ブランデル領、ブランドルフ村にある領主の館だ」
聞いたことのない名前だった。領主の館ということは、彼は領主の息子か従者の息子か。そう見当をつけながら、記憶を整理した。
ラグナスの罠にかかった。転送魔法で飛ばされた。ここは魔界ではない——人界だ。人族の少年。噂で聞いていた人族とはだいぶ違うようだ。世界が違うせいか。
二人の男が入ってきた。屈強な体格の者と、落ち着いた印象の者だった。後者が領主だろうと判断した。
「気がついたか。意識が戻ったところですまないが、少し話を聞かせてほしいのだが、良いだろうか」
「構わないが、先に何か飲み物をもらえないか」
少し間があった。「そうだな、すまない。用意させる。話はその後にしよう」と言い、使用人に声をかけた。使用人への声のかけ方が、自然だった。子どもへの謝罪を、ためらわなかった。それだけのことだが、この人物の記憶は別の棚に入れておく必要があると思った。
用意されたのは深めの陶器の器に入った温かいものだった。微かにハーブの香りがした。一口飲んだ。乾いた喉が落ち着いた。肩の力が少し抜けた気がした。
状況を考えると、魔界から転送されてきたことや王族であることは明かさない方がいい。もう一口飲み、ベッド脇の小卓に器を置いた。
「ありがとう、助かった。それで、聞きたいことというのは」
まずそれぞれを紹介された。この地の領主のガレス・ブランデル。後ろにいるのが従士長のエルド、少年がエルドの息子のリュート、と。
リュートという名前を聞いた瞬間、鼓動が一つ跳ねた。
なぜだ、と思った。反射的にリュートという少年の顔を見た。平民の服装、黒い目、穏やかな印象——先ほどより一拍だけ、長く見てしまった。悟られないよう、表情を戻した。
次に名前を問われ、ヴァルトと素直に答えた。その時、リュートという少年がわずかにピクリとしたように見えた。
状況を説明された。森で倒れているのが見つかったこと。どこから来たのか、なぜ倒れていたのかを聞かれた。考えるふりをして、わからないと答えた。驚きと少しの憐れみが混じった表情が見えた。
「何か覚えていることはないか」
話しても問題のないことを考えた。なかった。首を横に振った。
「そうか。すまなかった。ゆっくり休んでくれ」
三人は退室した。
空になった器を両手で包んだまま、窓の外を眺めた。
のどかな風景があった。日の光が穏やかで、石垣の向こうに緑が広がっていた。魔王城とは何もかもが違う。空気も、光も、音も。
どこかで鳥が鳴いた。一声だけで、止まった。その後は静寂が戻ってきたが、城の沈黙とは種類が違った。こちらの沈黙の方が、少し軽かった。
なぜそう感じるのかは、わからなかった。
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