第六十五話 ミカエルの回想⑧
私情により更新がとんでもなく遅れてしまいました、本当に申し訳ございません。
今、私がいる所はベルグランの北城門付近です。
ここは一応私が管理している世界の一つなので大体の国の仕組み等は頭に入っています。なのでこの街並みに驚くことはありませんが……。
「名前をリョクとしたんですが、大丈夫ですかね」
名前に関しては構わないんです。エンペーア氏達と適当に考えた名前ですから。それより、
「……職業を『旅人』と書いたのは少々失敗だったでしょうか」
入国審査の際、係員から職業を尋ねられた私は、咄嗟にそう答えてしまいました。嘘ではありませんよ。この時の私は設定上ですけど旅をしていますし。
ですが、旅人というのは意外と曖昧な職業らしく、係員の方から『何を目的とした旅ですか?』『滞在期間は?』『どちらから?』など、次から次へと質問が飛んできました。
正直、管理者権限で少し記憶を弄ってしまった方が早かったですね。
まあなんにせよ無事に入国審査が終わったと言うわけです。
「さて、どこから見てみましょうかね……」
エイド様が『人間の文化を見てこい』と言われましが、何を見ればいいのやら。
「ーーさん。お兄さん!」
後ろから人を呼ぶ女性らしき声が聞こえ、足を止めて振り返ります。
そこには二十代前半ほどでしょうか。黒色の髪を肩口で揃え、動きやすそうな服装をした女性が、にこやかに手を振っていました。
「そのお兄さんとやらは……私でしょうか?」
「はい! さっきからきょろきょろ街を見回していましたし、もしかしてベルグランは初めてですか?」
「えぇ。その通りですが……」
私が頷くと、女性は嬉しそうに胸を張りました。
「やっぱり! 実は私、この街で案内役をしてるんです!」
なるほど。所謂、街の案内人というやつですね。
「観光名所や美味しいお店、宿屋やギルドなんかも案内できますよ!」
「ほう……!」
「ここじゃなんですし、こちらへ!」
女性に手招きされ、近くの公園の椅子に腰掛けました。
先程の話ですが、実にありがたいですね。人間の文化を効率的に学べますしね。ですが、一つ疑問があります。
「失礼ですが」
「はい?」
「何故、私に声を掛けたのですか?」
私の問いに、女性は一瞬きょとんとした後、あっけらかんと笑いました。
「それは勿論、お金を持ってそうですからね!」
「……は?」
いやー。今思い出してもこの時の私はとてつもなく驚いていますね。
後にも先にも、堂々とこのような発言をしてきたのは彼女だけですよ。
ある意味清々しいとでも言うべきでしょうか。
「えっと……その、何か失礼な事を言いましたか?」
女性は私の反応を見て、少しだけ慌てた様子で首を傾げます。
「いえ。あまりにもストレートでしたので、少々驚いただけです」
「えへへ……。よく言われます」
褒めてはいないんですがね……。女性は私の服装を指差しました。
「ほら、そのローブ!」
「ローブ、ですか?」
「はい! 一見すると黒一色で地味なんですけど、生地が全然違うんですよ。縫い目もほとんど見えないし、装飾も最低限なのに品がある。ああいう服って、お金持ちか貴族しか着られないんです」
ほう。流石は案内役と言ったところでしょうか。
ありきたりな量産型とはいえ、人間界では作りえない技術で造られていますからね。
「あ、申し遅れました!私、ベルグラン全ギルド統括本部の職員のアイリス=ミナントと言います!アイリスとお呼びください!」
「ありがとうございます。アイリスさん。私の"名"はリョクと言います。見ての通り、旅人です」
「リョクさんですね。分かりました。では、単刀直入に聞きます。私をガイドとして雇う気はありませんか?」
「こちらこそよろしくお願いしますね」
アイリスさんは暫くの間パチパチと瞬きし、信じられないと言った様子で私の顔を凝視してきました。
「まさか本当に提案を受け入れてくれるとは……!」
「いや貴女がお願いしたんですよね……?」
「そ、それはそうなんですけど!」
アイリスさんは勢いよく立ち上がり、慌てたように両手を振ります。
「普通はもっと値段を聞いたり、他のガイドと比較したりするじゃないですか!それに、初手でローブの話をする変人ガイドですよ!?側から見れば!」
『自覚あったんですね……』
この言葉を口にすれば確定でアイリスさんは泣きますね。
エイド様程ではありませんが人の心はわかる方だと自負しています。
私は苦笑しながら立ち上がりました。
「安心してください。私は、人を見る目には少々自信があるんです」
「え?」
アイリスさんはきょとんとした表情を浮かべます。
「貴女は最初こそ『お金を持ってそうだから』と仰いましたが、それを隠そうともしませんでした。普通であれば、もっと耳障りの良い理由を並べるでしょう。それが逆に信用できます」
「そう言うものなんですか……」
「そう言うものです」
何故かため息を軽く吐いた後、アイリスさんは私に向かって手を差し出しました。
「改めまして、ガイド役。請け負いましょう!」
「お願いしますね。アイリスさん」
差し出された手を硬く握り、ここに私にとって天使生で初となるガイドが誕生した瞬間でした。
皆さん。ポッキー好きですか?私は大好きです!




