第六十一話 ミカエルの回想④
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そうこうしている内に、私の足は地面にゆっくりと足付きました。
まぁ、ワイバーンの群れの一匹と衝突時に陣形を崩してしまったのは申し訳無かったですね。ですが、頭を突くのはやめてくださいよ!髪の毛がマッシュになってしまったではありませんか!
「仕方ありませんね。髪の毛に関してはこのままでいいでしょう」
私の周囲を見渡すと、丁度真右に天にも迫らんとする壁が聳え立っていますね。
これが、城壁国家ベルグランの西城壁です。
「これまで数多くの文明の発展を見守ってきましたが、これほどのものは久しぶりですね……」
これは、紛れもなく本心ですよ。そもそも、この建築技術を手に入れている時点で凄いですし、その城壁にかけられている魔法や結界も見事なものです。
「中も見たいところですが……。どうしましょうか……」
ふと横を見ると、馬が引いている荷台に人二人が乗っているではありませんか。
私は考えました。観光客に扮してあの荷台に乗れば、何事もなく城壁内の街に辿り着けるのではないかと!
瞬間移動してもいいですが、スキルには使用制限がかけられていますからね。
「無理やり使えもしますが、使った場合、世界の処理速度が低下してしまいます。それは困りますからね……」
そう呟いていると、私が気にかけていた先程の荷馬車が速度を落とし、私の方に向かってきました。
「おーい!兄ちゃん!」
御者席に座る男性が大声で呼びかけてきましたね。
「はい?」
「こんな所で何してんだ?一人か?」
「えぇ。一人ですが」
その瞬間、男性と荷台に座っていた少女が顔を見合わせ、そして心底安堵した様に私に言いました。
「兄ちゃん運が良かったなぁ……」
「?」
「この辺り、ワイバーンの群れが出るんだよ」
少女も何度も頷き、父らしき人の言葉に同意しています。
「そうそう!あと魔獣も出るし!」
なるほど。だから心配してくれたのですね。確かに先程ワイバーンの群れには遭遇しました。
私の髪型を犠牲に何とか抜け出せましたがね。
「しっかし、その髪型は天然か?」
「天然ではありませんよ」
「じゃあ何でそんな髪型になってるんだ?」
「放っておいて下さい……」
私だって、思い出したくないんですよ。
一瞬、あの群れを削除してしまおうかと思いましましたが、私が悪いので流石にやめにしました。
私は、フリザエル様ほど理不尽じゃないんですよ。
「ま、まぁ、あんたもここから歩くってのも骨が折れるし、いっちょ俺らと一緒にベルグランに入るか?」
「良いのですか?こんな身元不明者を乗せても」
「自分で身元不明者って……。乗せて良いのか、か。当たり前だろ?困ってる奴を放っておく奴はな、俺が1番嫌いな奴なんだ」
ここまで魂の色が穢れていない赤色は、生まれて初めてかもです。
事実、先程の人情溢れる発言も、嘘の様な事とは思いませんでしたし。
「で、結局どうすんだ?乗ってくか?」
「では、お言葉に甘えても良いでしょうか」
「おう!その代わりと言っては何だが、娘の話し相手になってくれや。運転している間も喋ってきてうるさいのなんのって……」
「初めからこれが狙いでしたね……」
私は少し睨みを男性に効かせると、男性はどこ吹く風と言う言葉がお似合いな様に口笛を吹きながら視線を逸らしやがりました。
まぁ、娘さんも面白そうな色を持っていますし、退屈はしなさそうですね。
「細かいことは気にすんな!早く乗りな!魔獣の群れは見当たらねーが、用心するに越したことはねぇからな」
「では、失礼しますね」
私は荷台の後ろに回り込み、荷台に足をかけ、近くにある四角い箱に腰をかけました。
娘さんは、待ってましたとばかりに私の横に箱を持ってきて、ちょこんと座り込みました。
「お父さん!早く出してー!」
「はいはい」
男性は苦笑しながら手綱を引き、馬がゆっくりと歩き始めました。
そうして荷馬車は城壁国家ベルグランへ向けて進み出しました。
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