第六十話 ミカエルの回想③
明日はできれば更新します
転移陣を潜った先は、緑溢れる森の中……などではなく、雲の上のはるか上空でした。
まあ、こんな事を考えている間も落下中なのですがね。
しかし、私にとっては問題外です。
「干渉:命ずる。受け止めよ」
その言葉と同時に、私の体がふわっと浮き上がる様にして体勢が安定する。
あぁ。この言葉ですか。私が唱えたのは、世界の言葉と呼ばれる管理者権限で、担当している世界の法則、無機物、有機物の森羅万象全ての万物に命令することが出来ます。
まぁ、意外と日常でしか使わないんですよね。
「もうすぐ雲を突き抜けますね」
直後、私の視界に今では信じられない光景が映り込みました。
「昔は、本当に素晴らしかったですね……」
目の前に広がるのは、雲のすぐ真下の空を泳ぐ森を背負っている玄武。海の上で大量の触手を伸ばしているクラーケン。
そして眼下には、とんでもなく大きい城壁を持つ国家規模の都市。
これら全て、今の時代では到底考えられません。
神代では珍しくもない光景でしたが、現代では神話にしか残っていない存在ばかりです。
まぁ、玄武なんかは神界でペットにおすすめです。可愛いですからね。
「ですが、その玄武だけでも国一つ分の戦力でしたね」
あぁ、今見えているあれですか?
勿論、エイド様なら拳で殴り倒せます。
まだエイド様が神の座に就任されて間もない頃、フリザエル様が「愛の鞭よ!」と言い出して、フリザエル様が飼っている神界最強のペットの一体である玄武ことブーちゃんと戦わせていましたね。
『ぶー!ぶぶー!ぶー!』
『嫌がってもダメなものはダメなの!さっさとエイド君と戦いなさい!』
『フリ姉……。俺も、こればかりはブーちゃんが可哀想ーー』
『エイド君は黙っていようね!』
当時のブーちゃんは涙目でした。私も流石に同情しました。
ですが、フリザエル様は容赦無いんですよね。
『じゃあ始め!』
『ぶー!?』
開戦から三秒後、ブーちゃんは空の彼方へ消えていきました。
エイド様によって物理的に。
あの時のエイド様は神の座に就任してまだ数千年程度だったはずなのですが、一体どうなっていたのでしょうね。
この後に言ったフリザエル様の言葉を想像出来ますか?
何とあの人。
『エイド君!もっと優しく殴りなさいよ!』
『ちょ!自分から振っておいてかよ!?』
『じゃあ、次は私と戦いましょ?』
『ちょ、待っーー!』
まぁ、この後は言わなくても分かりますよね。
結果だけ言えば、神界の三階層から五階層まで吹き飛びました。当たり前ですが、この神界の間は次元断層。つまりは絶対に貫通しないんですよ?可笑しいですよね。
勿論、フリザエル様とエイド様は無傷です。
被害を受けたのは周囲だけでした。理不尽ですね。
当時の私は復旧作業に駆り出されました。本当に理不尽です。
「……今思い返しても酷い話でした」
そうこうしているうちに、地面が見えてきました。落下速度も緩やかですし、とりあえず羽を収納しましょうか。
「えっと……。認識阻害のフードはどこにおきましたっけ……?」
空間に手を突っ込んで、道具を出しては投げ捨て、出しては投げ捨ての繰り返しです。私自身、全部ゴミばかりだと思っていたのですが、色々武器も一緒に捨てちゃってて、それが後世で遺物と呼ばれるんですよね……。今思えばバカな事をしたなと思ってしまいます。
「あ。ありました」
私の手元にあるのは、ただ一つの薄い布切れです。柄もなく、風が吹けば飛んでいってしまいそうなほどです。
ですが、風が真上に吹き抜ける異常状態の中でもこの布は私の手から離れようとしません。
「開放。私は居ない」
バッと布が大きくなり、私の全身は瞬時に真っ黒に覆われます。瞬く間に、私の頭にフードが出現し、一瞬で装備されました。
これ、実に便利なんですよね。セブノック様が昔使っていたのですが、セブノック様が成長された後に「これもう使わないからミカエル使うか?」と疑問形で言われたんですけど、ご想像の通り押し付けられました。
セブノック様とは馬が合わないんですよね。理由は分かりませんけど。
話が逸れましたね。このフードの効果ですが二つあって、まず認識阻害です。それもとんでもなく強力な。
二つ目が、世界に対して情報を誤認させる能力です。これがとても便利なんですよね。使い道は、まあおいおい分かるでしょう。
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