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第五十八話 ミカエルの回想①

ミカエル視点が多いです!

『まあ今は怒らないけどよ。後で話を聞かせてもらうぜ?』

『……畏まりました……』


返事に元気がないが、俺の知るところでは無い。

だって、俺は悪くない!いつも迷惑をかけられているのだから俺だって言いたくなる時だってあるさ。


「ーーで、これが理論上の分解魔法の全容だけど……」


直後、俺の額にチョークがコンッと言う音を立てて直撃する。

飛んできた方向を見ると、アーシャが呆れと怒りが混ざった顔でこちらを見ている。


「エイド!聞いてるの?貴方から振った話よ?」

「き、聞いてるって!」


こいつ……。俺の特性を完璧に把握してやがるな。


「まあ良いわ。聴いてたっていうのなら、さっき言った分子分解で排出される熱量の運用方法を答えてみなさいよ!」

「当然、分かるぜ。これはだな、体にある魔力貯蔵庫にだなーー」


一方で、ミカエルはこの二人の間で繰り広げられる話が全く気にならないほどに焦っていた。


(不味いです……!ピンチなのです……!)


ミカエル目線、彼の主の説教と反省文は、人間の常識で収まる事をまるで知らない。

本来、ミカエルが担当しなければならない業務をラグエルに押し付けた時も、エイドにバレてしまって説教15時間の生き地獄と反省文2000枚を要求されたのである。


『エイド様……。反省文2000枚ってマジですか……』

『おう。当たり前だろ?久々にラグエルが直々に俺に頼みにきてな。部下の言う事を叶えてやるのが出来る上司って奴だろ?』

『だったら、反省文をせめて1000枚にーー』

『聞こえないー!聞こえない!ー!』


そんなやりとりを思い出し、現実逃避と言われても良い程、物思いに耽っていたミカエルも、すぐに今の状況を打破する為に思案し始める。


(そもそも、あの時あの愚者共が()()()()を言っていなければ、こんなことにならなかったはずなのですが……。死してなお爪痕を残しやがりましたね)


そう考え、ミカエルは過去の回想へと自身の意識を向けるのであった……。



あれは今から5000万年前ーーいえ、もっと前かもしれません。

当時、エイド様が神の座へと就任されてから丁度4200万年前でした。

神界は1階層から8階層まであり、我々七天使長とその補佐は7階層に、8階層はエイド様専用の階層でした。

神界にエイド様に対してケーキを運びにいったのが、今回の出来事の始まりでした。


「エイド様。就任4000万年ですね。おめでとうございます!」


エイド様がいる8階層。見渡す限りの平原で、色とりどりの花々が咲き誇っています。そんな中、小さな鉄作りの小さな部屋があってですね。ここが、エイド様が仕事をしている執務室です。


「はいはい。ミカエルも、少しは休めよ?」


相変わらず、エイド様は私達に対して優しい。

この優しさを一身に受ける事ができる優越感を感じながら、私はエイド様にちょっとした世間話をしていました。


「このケーキ。うめぇな!」

「ありがとうございます。このケーキはフリザエル様のエイド様に対するお祝いだそうですよ」

「フリ姉か……。確か、第82世界の勇者選抜に観戦しにいってるんだったか?」

「はい。仕事の為、エイド様のお顔を拝見できず、残念がっていましたね」

「……近づけさせんなよ?」


当たり前です。あのエイド様大好き天使を近づけさせるものですか。私にとっては神護十刺(ガーディランス)時代からの腐れ縁ですからね。彼女の性格は100も承知です。

時は遡りますが、エイド様が神の座に着かれてまだまもない頃、エイド様を育て上げたのがフリザエル様だったんです。


『ミカエルー!エイド君と会いたいんだけど!エイド君何処にいるの?』

『………今、仕事中ですのでまた後で……』

『嫌だ!今会いたいの!!』


こんな感じで、エイド様を神界一可愛がっていると言っても過言ではありません。エイド様には苦手がられている様ですが……。いい気味です。

まあ今は、この記憶の続きを見ていきましょうか。


「なぁ、ミカエル。お前って人間の文化ってどのくらい知ってる?」

「人間の、ですか……。結婚や……。ケーキ……。あんまり知りませんね………」


エイド様にそう言った時、少し寂しそうな声でこの私にこう仰ってくれました。


「人間の文化の一つを知る事だって大事だし、有給やるから今からお前が担当している人間の世界に降り立って人間の文化を学んでこい!」


これが、これがダメでした。エイド様を責めているのではなく、エイド様と文化の話をしてしまった私を責めているのです。


「良いのですか!?……畏まりました。エイド様の御身から離れてしまうご無礼をどうかお許しください……」

「んじゃ、支度出来次第、行ってこい!俺は仕事の関係で見送りはできないがな。すまねーな」


エイド様は謝る必要などないのに。私の為にそこまで思ってくれているとは!

これは、昔の私の偽りのない本心でしたね。


「では、行ってまいります……」


私は深く頭を下げ、八階層にある執務室を後にしました。

今思えば、この時点で嫌な予感はしていたのかもしれません。

神界創世記から生きてきた私の勘が、僅かに警鐘を鳴らしていたのかもしれません。

ですが、この時の私の思考領域は9割9分9厘がエイド様の事でいっぱいでした。

ここで余談なのですが、神が下界に降り立たれる時、神転輪を潜らなければならないのですが、我々天使は自由に人間界や精霊界、地獄界や神界に行く事ができるのです!

まぁそんな事は置いておいて、私は早速私が担当している世界に降り立ったのでした。



ミカエルが執務室を去った後のお話。


「おっしゃァァァ!!シャラァァァ!!」


ミカエルが第8階層から去った事を確認してから俺は執務室の椅子から飛び降りガッツポーズを決めた。

この時を待っていた!フリ姉とミカエルは下界に!俺に口出しできるやつは一人もいなくなった!


「さて、さっさと休暇道具をまとめて抜け出すとしますか……」


この時を想定して、俺は書類の山を全て片付けていたはず!なら俺の目の前にあるこれは何か?単純に働き疲れの幻覚だ!


「ラグエルに行って神転輪を開いてもらうか……。いやー!楽しみだな!」


今回行く所は第888世界。神界の天使や、輪廻の輪から輪脱した英雄達がバカンスで訪れる見渡す限りの海がある場所だ。

勿論、一人なわけがない!精霊界の王であるフワ坊や今は引退して輪脱を果たし、神界に住んでいる元勇者、そして、第五代目神様。その他にも沢山いる訳だが、俺たちはミカエル達にバレない様にこっそりと計画を立てていた。あいつらは先に行ってるはずだし、俺もそろそろ行くとするかな。


『あー。あー。ラグエル?聞こえるか?』

『はぁ……。聞こえますよ。エイド様。どうしました?』


やる気のない声は相変わらずである。だが、今回はラグエルの愚痴を聞いている暇は無いのだよ!


『ラグエル!神転輪を開け!今すぐな!』

『…………え?』

『ビーチに海!海鮮丼やフカフカのベッド!最高じゃなーー』

『はぁ……。エイド様。神転輪ってどうやって開くか知っていますよね?』


何、当たり前のこと聞いてるんだ?

まぁ、今日の俺はとても上機嫌だから教えちゃう。


『そりゃ、七天使長全員の…………………。あ……』

『お気づきになられましたか。そうです。エイド様はそのバカンスとやらに行けません』

『……は?』


…………待て、待て待て待て!俺が、500年間もかけて練った計画が!!こんな所で終わるのか!?フリ姉とミカエルの仕事が丁度かぶる様に調整して、バカンス行く仲間達とも口裏を合わせていたのに!!


「ふざけるなよォォォォォォォ!!!!!!俺が!!何の為に!!!書類を数万回書き直したと思ってるんだよォォォォォォォォ!!」


この声、おおよそ10万年ぶりにエイドが出した声量を超えたらしいが、この時のエイドは知る由もなかった。

あと二話ほどはミカエル視点かもしれません

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