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第五十六話 この世界の魔法とは④

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「まぁ、ざっくりとした説明だけど、非属性魔法の説明はこんな感じかな?これでいい?エイド」

「サンキュー。カイン」


素晴らしく分かりやすく、ロマン溢れる説明だった。カインが死んだ後、天使として転生させる事を本気で考えねばな……。


「何か、よからぬことを企んでいる気がするが、よしてくれよ?」


苦笑しながらカインはそう言う。

しばらくの間、教室には和やかな雰囲気とペンを走らせる音が響いていた。

そんな最中、アーシャが唐突に口を開く。


「と言うか、エイドが使っていた分解魔法や、ミカエルが使っていた反魔法だったっけ?それってなんなのかしら?」


アーシャにとっては何気ない発言だったのかもしれないが、この教室にいる三人の意識をその疑問に向けるには十分な言葉だった。


カインの表情が僅かに真面目なものへ変わる。

コイルも静かに目を細め、リナに至っては反射的に新しいページを開き、ペンを立たせていた。

いや、書く気満々じゃねぇか!


「分解魔法……」


カインはそう呟きながら顎へ手を当てる。


「正直、僕も文献でしか見た事がない類なんだよね」

「文献には載ってるのか?」

「載っていると言うか、それがないと成立しない歴史があるんだよね……」


その時、アーシャが立ち上がり、カインの元に行く。


「アーシャ?」

「ここからは、私の得意分野ね。黒板借りるわよ?」

「構わないけど……。あぁ、ウィルドム家か!」


何やらカインは納得した様だが、俺は納得できないぞ。他の奴らだってーー

そう思い、周りを見渡すと、皆が納得した様な表情をしていた。ミカエルでさえだ。

え。俺だけ置いて行かれてるんだけど!?


「いや待て待て!何その「分かった」みたいな空気は!」

「エイドくん、知らないの?」


ミスカが逆に驚いた様な顔をしてくる。いや、知らねーよ。だってこの世界には来たばかりなんだからよ!そう考えるとなんでミカエルは納得してるんだろう……。


「さて」


アーシャは黒板の前へ立つと、慣れた手つきでチョークを回しながら口を開いた。


「私の家名であるウィルドムの名の者達は、王族直々に、レベル8以上の歴史の保存を担ってきた家系よ」

「歴史保存?」


そう聞いてみると、アーシャは素直に答えてくれた。


「簡単に言えば、古代の文献や天災規模の災害記録、歴史から消された禁術指定の管理役ね。特に消された魔法関連は、代々ウィルドム家が調査してきたの」

「……改めて聞くと、お前の家系ってすごいんだな……」

「もっと褒めてくれてもいいのよ?」

「あ、いや、結構です……」


アーシャは不服そうにしていたが、すぐに気を取り直して黒板の前で軽くチョークを回し、一度だけエイドの方を見た。


「まず前提として、とっても昔……大体10万年前ぐらいね。その時代を私達は"神代"と呼んでいるわ。そして、神代に起こったとされる記録を記録しているのが、神代レベル記録書(カミシロ・レコード)と言うのよ」


そう言いながらアーシャは黒板にレベル1からレベル10までの文字を縦に書き連ねる。


「レベル1から5。これは、学園の図書館や都市の図書館でも一般向けに公開されている書物の事よ。広く知られている神話が主に書かれているわ」

「んじゃ、レベル6は?」

「レベル6と7はね。王家と一部貴族だけが閲覧可能の書物を指しているわね」


アーシャは黒板に線を引き、レベル5と6の間に細い線を引く。


「ここから先は物語の神話じゃなくて、実際に合った記録や報告書になるわ」


アーシャの言葉に、コイルの表情がわずかに変わる。


「神話と記録の境界ですか……」

「そう。流石はドレイン家ね」


アーシャはコイルの意見を肯定し、話を続ける。


「レベル6以降は、物語として一切脚色されてない、実際に起きた超常的な災害や世界を巻き込んだ戦争。禁呪や失われたとされている魔法現象や術式が記録されている書物よ」


俺はアーシャに聞いてみる。


「その技術や術式って、悪い事を考えている者達に再現されないのか?」

「無理ね。だって、昔と違って魔力回路そのものが違うもの。神代の資料に書かれていたのだけれども、理由は今もわかっていないわ」

「ふ、ふーん。不思議だね……」


うん。これ、間接的に俺のせいですわ。いや、俺のせいではないけどさ……。

俺直属の天使達。七天使長やその補助を任されている天使は、魔法技術が著しく発展した世界が破滅へと向かった際、その時代を生きる全てのものを記憶ごとリセットし、魔力回路や魔法術式すらも全て変化させる義務がある。

世界が崩壊しない為の救済措置なんだが、まさかその真実まで辿り着いているとは……。

まぁ、この世界を担当した奴は知らないが、この場にいたのなら文句を言ってやりたいな。大雑把に世界の記録を処理するな!ってね。


「それで、次のレベルについてだけど……」


アーシャはさらに黒板に7と8に、横にチョークの側面を使って太い線を引いた。


「レベル8。ここからは国家級の機密になる。都市単位が一瞬で崩壊する魔術式だったり、神代にいたとされる種族の消失。そういった規模の記録が入って……ってミカエル?大丈夫なの?」


コイルの横に座っているミカエルを見ると、顔中にびっしりと汗が浮かんでいる。そして、心なしか手が震えている様に見える。


「ミカエルさん……?大丈夫なのですか?」

「コイルの言う通りだ。本当に大丈夫か?ミカエル。無理すんなよ?」


思えば、この世界に来てからミカエルに頼りすぎていたのかもな。

この世界の常識やら知識をまとめろって言ったの俺だし。


「い、いえ。大丈夫です……」


すぐにミカエルはいつも通りの声色に戻って返事をするが、俺は気づいている。ミカエルの指先が微かに震えている事を。


「ミカエル……。しんどいのならいつでも言ってもいいんだぞ?」

「ご心労をおかけしました。申し訳ございません……」

「だといいんだけどよ……」


今度こそ、ミカエルの動揺が収まったのを確認して俺は再びアーシャの方を向いたのだった。



一方のミカエル。彼はエイドに隠している事がまた一つ出来てしまった。


(「この世界のリセットを担当したの、私なんですよ」なんて事は口が裂けても言えませんね……。言えば確実に殴られて反省文です……)


笑顔と冷静を維持しているミカエル。ミカエルにだって、しっかりと主人にも隠し事があるのだ。

お読みいただきありがとうございました!

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