第四十六話 ミカエルの初授業
明日は出来れば更新します!
Aクラス。
そこにこの学園の教師はいなかった。何故ならばーー
「さて、自己紹介も私で最後となりましたね」
ミカエルは、Sクラスであの騒動を起こしている間、Aクラスで自己紹介をしていた。
AクラスはSクラス程広くは無いものの、五十人は余裕で入る程の大きさを誇っている。
そして、黒板を囲う様に半円状に机が並べられていて、段差が上がる事に机が6席ある。黒板、そして教師を皆がどの位置からでも確認できる作りである。
「では、改めまして、ミカエルです。得意魔法は……。そうですね。系統外魔法ですかね。あと属性魔法は基本全て使用できます」
ミカエルは、無所属である事から最後に自己紹介となっていた。だが、それがいけなかった。
(……おや?空気がおかしいですね……)
ミカエルは、彼の主でさえも頭を抱える問題児。その為、ミカエルは気付かないままこの場での最悪な答えを出してしまった。
だが、そんなミカエルに唯一口を挟める者がこのクラスにはいた。
「えっと……。ミカエル……先生か?」
「敬称はあっても無くても構いませんよ。ロウさん」
その返しに、ロウは少し戸惑いながらも話を続ける。
「……で、モーフ先生は?」
「あぁ!あの人ですか。今日の教室では要らないと判断した為帰っていただきました」
ミカエルは穏やかな笑みを浮かべたままそう言った。だが、その内容は全く穏やかではない。
「帰っていただいたって何だよ……」
「教師追い出すとか意味わかんねぇ……」
教室中がざわつく。だが、ミカエルの笑みを見た瞬間、皆のざわつきが一瞬で収まる。学園長の時でさえ僅かながら声が発せられていたのにだ。
ロウは額を押さえながらため息を吐いた。
「先生……。問題起こさないでくれよ……」
「いえいえ、ただ窓から帰ってもらっただけですよ?」
「「「それがおかしいんだよ!!」」」
ロウを除いた教室の全ての生徒が一斉にツッコむ。だが、それすらもミカエルは気にも留めない。
「さて、落ち着いた所で授業を始めます。今回は魔力の基礎からーー」
ここでミカエルは話を切り、天井を見上げる。何故か、この瞬間に彼の主がアーシャの胸を触っているタイミングだからである。
だが、これを知らないミカエルは勝手な推測を高速で建て始める。
(エイド様の感情が爆発した……?今回は、色欲ですか……。となるとエイド様は女性絡みで巻き込まれているのでしょう)
もし彼の主がこの推測を聞いたのなら、即座にミカエルを殴っていただろう。だが、肝心の安全装置は今、絶賛嵐の中で戦闘中である。
その為、ミカエルの妄想を止められる者は誰もいなかった。
(色欲が低下……?今度は後悔……。エイド様の身に何かあったのでしょうか……?)
ミカエルは、少し指標が違いながらも要点だけは事実と遜色ないレベルで完璧な答えを作り上げた。
そして、ミカエルは感情型である。
「少し、ハプニングがあった様です。授業は自習にしておいて下さい。後の事は……。ミライさん。お任せしても宜しいですか?」
突然の指名に少し驚きながらもミライはしっかりとした返事をミカエルに言う。
「ま、任せて下さいっ!」
(ラミィの権能を受け継いだのですから……。これぐらいはやってもらわないとラミィの顔が立ちませんからね……)
その言葉を聞いた瞬間、ミカエルは手に取っていたチョークを置き、静かに教卓から降りる。その動作だけで、教室の空気が僅かに張り詰めた。
「え、あの……。ミカエル先生?」
ミライが戸惑った声を出す。だがミカエルはいつもの柔らかい笑みのまま、窓の外へ視線を向けていた。
「大丈夫ですよ。私は大丈夫ですが、エイド様が少し……」
「……何がだよ……?」
ロウの問いに、ミカエルは少しだけ考える素振りを見せる。
「エイド様の社会的な地位の消失ですかね?」
「「「やばいじゃん!!」」」
了承は取ったとばかりにミカエルは窓の枠縁に足をかける。
その光景に、クラス全員の思考が少しフリーズする。
「な、何をしてるんですか!?」
「此方の方が早いので」
そう言うとミカエルは窓から外に身を投げ出した。
ロウが慌てて窓まで駆け寄り、窓の外を見ると、そこにミカエルの姿は既に無かった。
そして机の上にはいつの間にか用意されていた三十人分の紙。自分の目標の宣言書だ。それをミカエルが置いていったと言う事は……。
「書けってことか……」
ロウは呆れながらも、ミカエルの用意周到深さに少し戦慄したのだった。




