第四十四話 いざ行かん
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「……お主ら?」
学園長の声が低くなる。
「いや違うんですって!」
「そうですよ。違います」
「否定の息ぴったりじゃのぉ?」
完全に墓穴だった。
しかもレイナ先生、めちゃくちゃ真顔で頷いてたからな!?仲間意識が生まれるの早すぎるだろ!
まぁ、これも学園長のお陰と思えば悪かねーか。
「で、Sクラスってどこですか?」
「……その切り替えの速さだけは褒めてやるぞい」
呆れながら学園長は俺に言う。
でも、俺としても早く次の展開に行きたいし。
「学園長……。お早く……」
ミカエルが、珍しく感情を滲ませた声で急かす。
だがその表情は笑顔。
笑顔なのに怖い。というか、急かしている理由が分かるのが怖い。
「ミカエル。お前、なんか殺気漏れてない?」
「気のせいです」
「いや絶対違う」
周囲の新入生達も若干距離を取っている。ほら見ろ。既に空気が凍ってんじゃねーか。
すると学園長が、面白そうに顎へ手を当てた。
「ふむ……。ミカエルはエイドと離れるのが嫌なのかのぉ?」
「……」
思わず沈黙してしまう。だって、答えは決まりきっているのだから……。
「当然でしょう」
「わかってたぜ」
即答だった。しかもめちゃくちゃ真顔。
「エイド様は目を離すと問題を起こしますので」
「俺は問題児じゃねーよ!」
「では、本日だけで幾つ問題を?」
「やめようその話!」
レイナ先生が小さくため息を吐く。その表情から既にラグエルと同じ苦労人気質が滲み出ている。
「……既に胃が痛いです……」
回復魔法で治らないから尚更タチが悪い……。と小さく呟く。
「先生、まだ初日ですよ?」
「だからです」
既に、手遅れだったか……。
さて、この場の空気をどうしようかと思っている時、学園長がパンッと手を叩く。
「では行くぞい。Sクラスはこの先じゃ」
「おぉ」
そうして学園長を先頭に、俺達は廊下を歩き始める。
ちなみにSクラスの奴らは俺が学園長に頭を掴まれている間、既に向かっている。今ごろ着いているだろうな。
「エイド様。私はAクラスに向かいますので、少々宜しいですか?」
「ん?」
この声色に不安になりながらも一応聞いてみる。
「念の為、お伝えしておきます」
「……なんだよ」
ミカエルは、笑顔のまま囁く。
「もしSクラスの者が、エイド様に無礼を働いた場合ですが……。消去、とは行きませんが半殺しで済ませますのでいつでもお気軽にお呼び下さい」
こいつ……。何当たり前の様にして殺人宣言をしてるんだ……?こいつの異常性は今に始まった事では無いがな。
「やるなよ?後呼ばねーし」
しかも「殺してないから安心だよ!」みたいな言い方してる辺り本当に、ねぇ?
「そうですか……。残念です」
「……残念か?」
「エイド様の御意向のままに……」
ちょっと悲しそうな声で従うが、これはお前の為でもあるんだぞ……。ミカエル。
そんなやり取りを聞いていたレイナ先生が、ゆっくりとミカエルを見る。
「ミカエルさん。貴方、かなり危険人物ですね?」
「心外ですね。まともですよ」
どの口が言うんだよ!
そんな会話をしている内に、廊下の奥に巨大な扉が見えてくる。
一般的なクラスは、扉を見ても鉄で出来ている。だが、このクラスの扉は恐らくオリハルコンを鉄に混ぜて造った扉。
そして刻まれた大量の防御魔法陣。
その扉周辺だけ空気の密度すら違った。
「ここがSクラスじゃ」
学園長がそう告げた。
「へぇ……。ここがねぇ」
扉には無数の結界が施されており、今の俺の体では高位のスキルが使えない。だからどの程度の魔力があるのかは感じ取れないが、これだけはわかる。
(はぁ……。あいつも居るのかよ……。復活早過ぎだろ)
そして俺は、事実上二回目の顔合わせとなるあの女との顔を拝みに、扉に手をかけたのだった。




