第四十二話 補助教員?
最近、思う様になりました。アイスにかけるシロップは何味が良いのかと。
周りのざわめきが一瞬にして止まる。
それもそのはず。この学園長が言った言葉をまだ飲み込めていないからだ。
「補助教員とはーー」
「いや!待て待て!」
必死に手を振りながら学園長の話を遮る。
俺のプランとしては、Sクラスでそこそこ優秀な奴って感じで過ごすはずだったのに……。
いや、無所属となってから、それは諦めてたけど。だけど!補助教員!?意味わからないんだけど!
「エイドよ。ミカエルもそうじゃが、入学初日にSクラス二人と戦い、一人は保健室送りに、一人はわしが直々に治療を。この意味が分かるな?」
いや分かりますけど……。
「そして、ミカエルに至っては無傷じゃ。これは最早、学生の域を遥かに超えておる」
確かに。学園長の言っている事は理解できる。
「つまり……。扱いきれないから教師として働いてもらうと?」
「そう言う事じゃ」
成程……。教師と立場はほぼ同等って所か?
そんな俺の考えに、都合よく学園長が情報を付け足す。
「ちなみに、教師はこの無所属に命令する事は出来ん」
「「「「……っ!」」」」
周りにいた教師陣は、この発言に息を呑んでいるのが分かる。
そしてそれは、周りの新入生にも伝わっていく。
「こいつら……」
「一体どう言う事だよ……」
「もう、なんか、ね」
新入生や周りの教師の視線は、俺達に集中する。もうこれが痛いのなんのって……。
「鎮まれぃ!!!」
学園長の叫びが、辺り一体に響く。やはり、長年の覇気というやつだろう。一瞬で騒いでいた奴らを黙らせた。
「……さて」
学園長は、ミカエルと俺(主に俺)を見て、言葉を発する。
「何も考え無しにわしがこうしてあるわけなかろうて。この権限はな、無所属にも、他のクラスにも良い影響を与えるのじゃよ」
「……嫌な予感」
「嫌な予感などあるわけないじゃろ」
俺の小さな呟きさえ、学園長は容易に拾い上げる。
と言うか、この呟きを聞き取れる時点でこのおっさん人間辞めてるだろ!
「話を戻すが、お互いのメリットから話すぞい。まず一つ。生徒だけでは立ち入らない場所にも、この無所属生がいればわしの許可なく立ち入れる」
現時点でこの権限、中々に猛威を振るっているが、まだあんのかよ。
「二つ目。学戦祭や姉妹校戦に、この無所属生は、助っ人として呼べるものとする」
何か、聞き慣れない単語が沢山あったけど……。学戦祭と姉妹校戦だったか?ちょっとミカエルに聞いてみるか。
『ミカエルー。さっき学園長が言った学戦祭と姉妹校戦って何?』
『ちょっと待って下さいね』
その直後、大量の情報がミカエルによって念話として送られてくる。
だが、新しい数式を沢山聞いても理解できない様に、この大量の情報を送られてきても、理解できるわけねーだろ!
『ちょ、多いって!』
『この国や学園の歴史。勇者や魔王。そして、この学園のカリキュラムをまとめて送りました。時間がある時でいいので、必ず読んでおいて下さいね』
『時間がある時にサクッと読める量じゃねーよ!』
ミカエルから送られてきた情報は、大量と言うより知識の洪水の様に俺の思考領域を一斉に占める。
その多さに酔いそうになっている俺に、ミカエルが少し低い声色で俺に念話を送ってくる。
『エイド様……。少々、気になる事が……」
その声色に、今日何度目かも分からない嫌な予感がした。
『……どうした?』
『二つありまして、一つは、先程の学園行事の一つに、つい先日"ナンバーズ世界"に休暇を満喫していましたが、その世界の勇者の名前を覚えていますか?』
こいつ……。偶に俺の記憶力を舐めてる時あるよな?
『当たり前だろ。アンナとロッドだろ?』
『エイド様。フルネームでお願いします』
『……確か、アイゼルーー』
ここまで言って俺は気づいてしまった。
今回の姉妹校戦にも、アイゼルが含まれていることに。
(てことは……。アイゼルはあの……?)
だけど、それでは確証にならない。そもそも、それが名前なのかが分からないのだから。
『エイド様。この姉妹校戦は、先程送った資料にも書いてある通り、別の世界にある姉妹校の学園との親善試合です』
確かに……。偶然では済まされないな。
『付け加えると、学園長は、サン=サリアベルと言う名前です。つまり、"サン"と同じ様に考えると……』
このアイゼルも名前って事になるのか……。
そこまで情報が繋がった瞬間、俺の中で一つの可能性が形になり始める。
(……いや待て)
ロッドとアンナ。そして、アイゼル。これはあいつらの家名だったな。そして、この姉妹校戦は別次元との戦いか……。
それら全てが一本の線として繋がりかけた、その時だった。
『……エイド様。これ以上は』
ミカエルの声が、少しだけ真剣になる。
『分かってる』
流石に、ここまで露骨だと逆に危険だ。下手に深掘りして良い話じゃないしな。面倒ごとに巻き込まれても困るし。
俺は小さく息を吐く。
(……ったく……。休暇先で出会った奴が、今回の試練関連とか聞いてねぇぞ……)
すると、前を歩いていた学園長が、何故か絶妙なタイミングで咳払いをした。
「ゴホンッ」
いや。絶対タイミングおかしいよね!?
だが学園長は、こちらを振り返る事なく歩きながら言う。
「さて、そろそろクラス分けの時間じゃな」
完全に聞こえてるよな?あれ。
(……このおっさん)
俺はジト目を学園長に向ける。
すると学園長は、何故か少しだけ歩く速度を速めた。周りから見たら変わってない様に見えるが、俺の眼は誤魔化せないぜ!
『ミカエル』
『はい』
『あのおっさん、絶対聞こえてたよな』
『……否定は出来ません』
流石のミカエルも苦笑混じりだった。
『でも、聞こえてないふりをして下さったのでしょう』
『優しさなのか監視なのか分かんねぇよ……。まあ、楽しみにしとくか』
念話で話していた俺達に、前方から学園長の声が飛んでくる。
「何やら失礼な事を考えておらんかのぉ?」
「ほら聞こえてる!!」
「偶然じゃ」
「絶対嘘だろ!!」
周囲の新入生達が何事かとこちらを見るが、もう知らん。
この学園、ツッコミ役が俺しかいないんだけど!?
引き続き読んでいただけると幸いです!




