第四十一話 問い詰め
明日も出します!
「さて……話を戻そうかのぉ」
学園長がにこやかに笑う。だが、その笑顔の奥にある圧が凄い。
周囲の新入生達ですら息を呑んでいるのに、何故か俺とミカエルだけが背筋を伸ばして正座していた。
「さて……。時間が……なんじゃったかな?一体どういう事か説明してもらおうかの?」
「「……」」
俺とミカエルは示し合わせた様に沈黙を貫く。このまま沈黙を貫き通せば良かったのだが、ミカエルがまたやらかしやがった。
「エイド様なら説明がお上手かと!」
「またかよっ!!」
学園長に向けて、進める様に俺を手で指し示しながら言う。
そんなミカエルを睨みつけると、申し訳なさそうに顔をスッと背けやがった。
「お前マジで覚えとけよ……!」
小声で睨みつけるが、ミカエルは爽やかな笑みを浮かべるだけだ。「後で絶対シメる……」と考えていると、学園長が持っている杖で地面を軽く叩いた。
コンッ――。その瞬間、空気が張り詰める。
「誤魔化すのは無しじゃぞ?」
「……善処します」
「既に誤魔化す気満々じゃな?」
鋭いなこのおっさん。だか、ここで時間停止と時間逆行を大真面目に、真正面から説明する訳にもいかない。
「いや、その……」
俺は頭を掻きながら言葉を探す。必死に、必死に……。そして、思いついた。この状況を打破できる最善策をな!
「あのですね。結果的に、そう見えただけというか」
「ほう……?」
学園長の目が獲物を見るが如く細くなる。フリザエルかよ。マジで。
「ミカエルの自己修復魔法と最上位回復魔法、それに魔力操作を合わせた応急処置みたいなもんだ」
「応急処置で瀕死から全快したのかのぉ?」
「気合い?」
「お主が疑問形で言うな!!」
学園長のツッコミが飛ぶ。
だが周囲の新入生達は、逆に納得しかけていた。
「……いや、でもあの二人ならあり得るか?」
「もう何でもありだろ……」
「考えるだけ無駄な気がしてきた……」
(よし。押し切れそう!)
心の中でガッツポーズをしながら、俺に面倒事を押し付けたミカエルを見ると、何故か感心した様に頷いた。
「成程……。スキルと権能を魔法で誤魔化す……。素晴らしいです」
「おまっ!声のトーンを下げろ!!」
だが、時すでに遅し。
学園長が俺の頭を手でガシッと掴み、少しずつ握る力が強まる。
『頼むから、大人しくしておくれ……』
『掴みながら言うことか!?』
ミシミシミシ……。
「痛い痛い痛い!!頭蓋骨が鳴ってる!!」
「安心せい。まだ割れてはおらん」
「“まだ”って言った!?今まだって言ったよな!?絶対!!」
俺が必死に学園長の手を剥がそうとする中、周囲の新入生達は完全に引いていた。
「学園長が素手で押さえ込んでる……」
「いや、押さえ込まれてる方もおかしいだろ」
「普通あの握力で頭掴まれたら終わりだぞ……?」
だが、ミカエルはこの状況も勘違いした。
「流石エイド様。この新入生の心を一つになる算段までお立てになっているとは!!」
「そんな事、知らない!!」
その瞬間、俺の頭を掴んでいる手が離れ、その代わりにまたも拳骨が炸裂した。
「ふんっ!」
「痛っっっっっっ!!」
このおっさん!!めっちゃ力強いんたけど?人じゃないよね?
「これはミカエルの分もじゃ」
「……理不尽過ぎない……?」
頭を抑え、芝生にのたうちまわりながら言うが、学園長はどこ吹く風。
(あぁ。ミカエルもこんな気持ちなんだな……)
いや、あいつの場合はただのドMだな。
「さて、話すつもりは無いってことでいいんじゃな?」
学園長は拳を鳴らしながら俺に問う。あれ……。このおっさん。魔法使いだよな……?
「いや、マジでさっき俺が言った事が本当だから!」
「本当か?」
「神に誓って本当だ!!」
俺なんですけどね!神は俺だから、これはノーカンでいいよな?
「……その言い回し、妙に引っかかるのぉ」
「気のせい気のせい!」
危ねぇ。変な勘繰りされる所だった。
すると学園長は、疑わしげに俺を見ながらも深くため息を吐いた。
「……まぁ良い。これ以上聞いても、碌な答えは返ってこんじゃろうしの」
「助かる!」
「助けた訳ではないわい」
バッサリだった。その時、ミカエルが静かに口を開く。
「ですが学園長。時間系統については、本当に神話級……。いえ、それ以上のレベルです。それを我々の様な生徒が使うことが出来るとでも?」
「……確かにな……」
(ミカエル……。今日のMVPはお前だよ……)
学園長は腕を組みながら低く唸る。周囲の新入生達も、ミカエルの言葉に納得した様に頷いていた。
「時間魔法なんて神話の存在だしな……」
「流石に学生が使える訳……」
「いや、あの二人なら微妙にあり得そうなのが怖い」
最後のやつ誰だよ……。
だが、さっきまでの“完全に黒”みたいな空気はかなり薄れた。
(助かった……!)
心の中で安堵しながら、俺はミカエルを見る。
するとミカエルは、まるで当然の事をしたかの様に優雅に一礼した。
「エイド様のお役に立てたなら幸いです」
「珍しく本当に役立ったな」
「心外ですね」
いや、普段爆弾投げる側だからな?すると学園長が再び深くため息を吐いた。
「……まぁよい」
「おっ」
「少なくとも、今のお主らに時間系統を扱えるとは思えん」
「そうそう!」
俺は勢いよく頷く。
「俺達ただの一般生徒だから!」
「何を言うておるんじゃ……?」
学園長は、呆れた様に俺達を見ながら杖を軽く鳴らす。
「では話を戻すぞい」
「まだあったのか……」
正直、もう帰りたい。
だが学園長は容赦なく続ける。
「無所属に与えられる権利は三つと言ったな?一つ、学園内での自由行動権。そして二つ、全クラスへの介入権」
そこまでは聞いた。ここまででも破格の待遇ってのに……。
すると学園長は、人の悪い笑みを浮かべる。
(あ、これは......)
「そして三つ目」
「嫌な予感しかしねぇ……。どうせ変な権利でもーー」
「補助教師権限じゃ」
「……ん?」
これは……面白くなってきたんじゃない?
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