第三十六話 スキルがない!
ゴールデンウィーク。何もすることがありません。
学園長との取引が終わった後、次元の狭間から俺達は人混みの中に瞬間移動した。
出現した直後、周りには不審がられたが、ミカエルが認識阻害魔法を使った事で事なきを得た。
ちなみにサリエルは途中まではゲートで一緒に向かっていたが、仕事があるらしく、名残惜しそうにして神界へと帰ってしまった。
ミカエルは悲しそうにしているが、俺としては厄介な奴が減ってくれて満足でもある。
俺の信者が二人もいたら精神的に追いやられるからな。
「とりあえず、この人混みに流されてたらいいのか?」
「そうですね。このまま進み続けましょう」
前世の世界だと、この先にクラス分けの紙がデカデカと張り出されてるイメージなんだけどな。
そう考えながら進んでいると、目の前にお城程の大きさの建造物が見えてきた。
門をくぐると目の前には芝生の上を様々な色の服を着ている学生が歩いている。
その目には期待や喜びがある一方、負の感情も少しある。
「……エイド様、消しますか?」
心底不快そうに俺に尋ねてくる。やはり、腐っても天使。善の感情を糧としている辺り、慣れないんだろうな。
「いや、いい。面倒ごとを起こしても嫌だからな」
「御意」
納得した様子だが、こんな調子で学生生活を送るとなると頭が痛くなるな。
俺は問題を起こしたくないのに……。
「お、おい!見えてきたぞ!」
「私、何クラスだろう!?」
遠目から確認すると、石板が地面から生えており、そこに文字が大量に刻まれている。
「この文字って、俺読めるのか?」
ちなみに、筆記試験で俺が読めていたのは、あくまで答えだけを【スキル:確定結果】でカンニングして情報自体を頭の中に流し込んでいた。つまり、文字は読めていなかったのだ。
「スキルをお使いください。そうすれば見えるでしょう」
「ちょ、ちょっと待ってよ。探すから」
俺は眼の前に大量の本棚を出現させる。
この本棚の名前は【創生級:能力の本棚】だ。
持つ効果は、俺が前面に出していない全スキルを収納する為の神遺物だ。
この神遺物を創ったのは俺の持つスキルがあまりにも多過ぎたからだ。だって、身の回りのものだって多過ぎても使いこなせないだろう?
そして、これだけ大きな本棚が出てきても他の新入生には見えていない。否、この本棚は俺にしか見えず、かつ実態がない。
「ほ段は……。え?……無いんだけど」
ほ行にあるはずの所にも翻訳の二文字が無い。この前使ったはず……。いや、前の世界では使ったないな。
(え、あ。そういうことか。この世界は神が創ってない自然発生した世界……。って事は、俺詰んだ?)
そんなバカな……。あるはずなのに……。あいつがいなくなってからちゃんと整理したはずなのに。
「エイド様?どうかされました?」
早くもミカエルは俺の感情の揺れに気がついた。これが平常時であれば良かったんだけどな。
はぁ……。素直に言うしか無いか。
「ミカエル。俺さ、文字翻訳のスキル、無い」
「…………はい?今なんと?」
信じられないと言いたげな顔で問いかけてくる。
「恥ずかしいから2度言わせんな!」
思わず顔を両手で隠す。マジで恥ずかしいんだけど!
「成程……」
顎に手を当てて考える素振りを見せる。こうしている間にも石板との距離が近くなっている。
『ミカエル!神命だ!早急に対応策を考えろ!」
『そ、そんな!エイド様!そこで神命を使うのは!』
念話で悲しそうな声を上げた後、現実でもめっちゃ困った目で見てくるが、本当にお前だけが頼りなんだよ!
その時、ミカエルの頭の上に発光した電球が出現する。※比喩でもなんでもなく。
「エイド様。少々失礼します」
そう言って俺の額に人差し指を伸ばす。
そして完全に触れた瞬間、少し目の前の景色が揺れ動く。
「翻訳魔法をかけておきました。あくまで一時的、ですからね。後で恒久的にしておきます」
「マジで神だよ。ミカエル!」
「天使ですよ?」
冷静に返されてしまったが、マジで助かった。
後で世界の中心に掛け合ってスキルを入手しておかないと。
「エイド様。石板を目視できる距離に入りました」
「わかった。見てみる」
ま、さっき学園長と取引してきたから確実に上位クラスだろうな。
そう言って石板を見ようとした俺は、これから起こる学園生活の波乱をまだ知らなかった。
中途半端な所で更新してしまいました。すみません!




