第三十三話 呼び出し
次は5月1日に更新します!
階段を上がり続け、ようやく校長室の前に到着した。
俺が疲れないのは当然だけど、このおっさん。こんだけ歩いてよく疲れねーな。
「……入るのじゃ」
「どうやって開けんの?扉ないじゃん」
その扉と言えるのかも怪しい鋼鉄の扉は、スライド式はおろか、ドアノブすら無いのである。
「魔法じゃ」
その言葉と共に、学園長は扉の前に手を翳す。
直後、重い音を立てて扉がゆっくりと横にスライドする。
見るに、開閉魔法とでも言ったところかな。
「へー。便利だなぁ」
「入れ……」
「……はいはい」
部屋の中に足を踏み込むと、中には煌びやかな装飾が施された芸術品の数々があった。俺は遺物収集家だからわかるが、殆どが魔法で再現された複製物だ。
「座るのじゃ」
学園長が手を俺の足元に翳すと、俺の目の前に椅子が出現する。
それは丁度、学園長が座る席の真正面にあった。
その椅子に腰をかけると、座った瞬間普段使っている椅子との違いが分かった。
「柔らかいな。これ。なんの材料で作ってんだ?」
「さて、本題じゃ」
いや、聞き流すなよ。
ツッコミかけたが喉から出かかったところでギリギリ耐えた。
それより大事なのは学園長の発言だ。
「本題……?」
無言で俺の言葉を肯定する。
「分からないな。何の事だか……」
俺はとぼけた様に首を傾げるが、それは逆効果だったしい。
「先程の戦いで見せた魔法……。あれは机上の空論でしかあり得ない魔術式じゃった」
「それが?俺がたまたま発見しただけだろ?」
その程度の憶測で話されちゃ困るね。
俺はこの世界のレベルに合わせた魔法しか使っていない。今回の分解魔法だって、魔力が膨大であれば誰だって再現できる魔法だ。まぁ、"崩解"は無理だけどな。
「……それはあり得る。だが、わしが何の根拠もなしに話すとでも?」
「…………確かにな」
この爺さんなら、認めたく無いがあり得そうだ。
だが、この俺がそう簡単に折れるとでも?
「しかしだぜ!?」
俺は目の前に置かれている机を叩き、立ち上がりながら言う。
「俺がその未知の理論を発見したとして、それが何の証明になるんだよ。大体、俺が何者かって……」
「エネルギー量じゃよ」
下を向いたまま、瞳孔だけをギラっと光らせて言う。その眼光に思わず座ってしまう。
「それが何だ?根拠がそれなら帰らせてもらうぜ」
そう言って再び立ちあがろうとした時だった。
「アインシュトイン……。じゃったか?」
思わず、いつものポーカーフェイスが崩れて無言で問いかけてしまった。
「……どこで聞いた?そいつの名前は……」
「お主は……転移者を知っておるか?」
その単語は、前世で死ぬ程聞いて来た。
「異世界から来た奴の総称みたいなもんだろ?……まさか!?」
「お主の予想してある通りじゃよ。その者は、その世界で科学者だったらしくてな。なに、もう数百年も前の話じゃよ」
そいつーーアインシュトインが言った化学式が、今回の現象を解き明かす鍵になるらしい。と言うか、そいつ。界を渡ったのかよ!
頭を抱えたいると、そんなことをお構いなしに学園長は話始める。
「その化学式とやらに今回の現象を当てはめると、発生するエネルギー量がこの世界を簡単に滅ぼせるほどのエネルギー量になるはずなんじゃ。そのエネルギーは何処に行ったのか……」
ここで言葉を切り、俺を真正面から見据えてくる。
「エイド。お主……何者じゃ」
「……新入生って。言ったら?」
瞬間、俺の足元に様々な紋様の魔法陣が形成される。
即座に【スキル:完全鑑定】で調べると、数は450個で、各々が行動遅延や行動束縛など、高位のデバフ系の魔法が仕掛けられている。
信じられないからもう一度言おう。数は450個だ。
「いや……多過ぎんか?」
学園長は、覚悟と警戒が入り混じった表示で俺に視線を向ける。
「エイドよ。もう一度聞く。お主は何者じゃ?」
「……新入生しかありえねーー」
続きの言葉は、視界を覆う閃光の如き光と、学園長の言葉で遮られた。
「滅びろ!侵略者よ!最上位暗輝魔法:【閃闇粒爆】!」
瞬間、俺の周りを囲う様に闇とも光とも区別がつかない色を持った螺旋状の鋭い槍が大量に出現する。
俺の勘だと、これは物理攻撃じゃないな。もっと、独特なーー。
刹那、潰す様に、螺旋状の棒が俺の座っている椅子めがけて突き刺される。
「……ゴハッ……」
耐えきれず血を吐く俺。血を吐くのなんていつぶりだろう。
朦朧とする意識の中、学園長の声だけが低く響く。
「この魔法は、聖属性と魔属性。両方の性質を帯びてある。よって、貴様が何者であれ、確実に葬り去ることができるのじゃ」
その言葉を聞き、心の中で俺は囀る。この程度で、俺が死ぬとでも?
「再成。開始」
天からの声の様に、その声は美しい声色で発する。
その瞬間、物体の再構築が始まる。
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