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第三十一話 想定外の展開

お読みいただきありがとうございます!

あの騒動(アーシャと俺の喧嘩)から一時間後。

俺たちは、セルナール学園中央アリーナに集められていた。


(これ、ほんとに入学式場か?)


外側の作りは、とても大きいアリーナの様だった。

だが、中身がおかしい。

円形の巨大構造に何層にも重なる観客席。そして中心には、幾重にも重ねられた魔法障壁に守られた戦闘フィールド。

入学式のはずなのに、完全に"決闘場"の作りだ。


「いや、ここ闘技場じゃねーか!」


俺は軽く周囲を見渡す。

新入生、教師、上級生。

全員の視線が、どこか獲物を値踏みするような色を帯びている。


「実に合理的ですね」


俺の問いかけに隣に座っているミカエルがいつの間にかけたのか知らない眼鏡をスチャッと上に上げて淡々と答える。


「この場で序列を確定させるつもりなのでしょう」

「露骨だな。後、この座席って番号順だよな?なんでお前来れたの?」


俺の記憶通りなら、ミカエルの番号と俺の番号は離れていたはずだ。


「私のエイド様に対する愛ですよ!愛こそ!この世の真」

「これ以上しゃべるな!」


そう言ってミカエルの口を塞いだ。

その瞬間、ゴォン……!鐘の音が鳴り響いた。

直後、空気が一斉に締まる。

そして、闘技場の中心に1人の背が高い男が現れた。その者の顔には深い皺が刻まれていて、尚且つ魔力精度がとても高い。そう、学園長だ。

学園長は拡声魔法を使い、話し始める。


「ワシが言いたいのはただ一つ」


そして、予想していた通りの言葉を短く言い放つ。


「わかっていると思うが、力こそが全てだ」


俺も予想した身でなんだが、これってありなの?


「よって、挨拶は省略する。主席による代表挨拶へ移る」


学園長は、少し間を開けて一言。


「アーシャ=ウィルドム」

「……は?」


名前が呼ばれる。俺は思わず呆然とする。


(ちょっと待って、この展開って……)


前方の人波が割れ、あの女——アーシャが歩み出る。


(もう復活してやがるか)


当然だな。ミカエルがやったんだから。

壇上に立ったアーシャは、一礼をし、話し始める。


「新入生代表、アーシャ=ウィルドム。まず、この場に立てたことを誇りに思います」


——ここまでは普通。

だが、俺の考えだったらここからが面倒くさい。


「ですが」


空気が変わる。

予想通りの言葉に、「ほら来たよ。ほら来た」と思ってしまったのは仕方のないことだろう。


「一つ、訂正させていただきます」


ざわ、と場が揺れる。


「主席は、私ではありません!本来その位置にいるべきなのは——」


周りの視線が突き刺さる。特にアーシャだ。その眼光は殺意すら有している。

イタッ!イタタタッ!

痛覚無効があるはずなのに、何故か体が痛む。


「エイド」


会場中の視線が、俺に集中する。もう、何でだよ。


「彼は、試験において明確に“力を隠していた”。それどころか、誇り高き学園の試験を、舐めてすらいた」


周りの野次馬達のざわめきが広がる。


「そのような状態での評価に、意味はありません。よって、ここに提案……いえ、宣言します」


右手を掲げる。


「この場にて、正式な決闘を宣言します。魔法のみ、一対一での勝負。そして勝者が、真の首席」


俺は思わず頭を抱えた。だって仕方がないだろ!?

もし、これが単純なる戦闘を要求する物だったら、断るなり逃げるなりして巻き込まれなかった。

そして最後に余計な一言を付け加える。


「まさか、逃げるおつもりですか?」

「…………はは」


思わず俺は笑いを堪えきれずに漏らしてしまう。そして誰にも聞こえないように小さく呟く。


「……バカにしてんのか?」


俺は、椅子からゆっくりと立ち上がる。

その瞬間、空気が僅かに沈む。


「エイド様」


ミカエルが囁く。


「如何なさいますか?」

「決まってんだろ。誤魔化すしかねーだろ!」


軽く首を鳴らす。

そして、アリーナ中央へ向かう階段を降りながら冷静さを偽りつつ言う。


「学園長!私は、今試験に置いて、一切の手を抜いておりません!アーシャ=ウィルドムの言葉は言いがかりです!」


まずは、学園長からだ。


「しかしじゃな……。主席には今学年に置いて一人だけ闘う相手を決めることができる指名戦を行える権利があるのじゃ。そして、その決闘は、断る事はできないのじゃよ」

「……」


見事に論破された。そんな権利があるなんて……俺、知らなかったんだけど……。


「ですが!アーシャが私との決闘でそんな大事な権利を使うわけないじゃないですか!」


俺の言葉に学園長は闘技場に立っているアーシャに視線を向ける。


「と、あやつは言うてあるが、どうするんじゃ?」

「勿論使います!」


アーシャの答えで、会場は大いに盛り上がる。


「おいおい!使うのかよ!その権利を!」

「これであいつがあっけなかったらつまらないんだけどな……」


中には俺を誹謗中傷する様な言葉さえあった。

そんな時、ミカエルから殺意のこもった思念が届く。


『エイド様。この者たちをこの世界から消しても宜しいですか?』

『……お前ぇは黙ってろ!余計話が長くなる!』


こいつ、目を離したら何をしでかすか分からない怖さがあるからな。黙ってたら爽やか好青年なのに……。


「………学園長。私は戦わねばならないのですか!?」


胸に手を当てて、学園長にアピールする様に叫ぶ。

している身でなんだが、すっごい恥ずかしい。


「エイドよ。これは"絶対"じゃよ。この学園が始まって以来、その掟が破られた事はない」


その言葉は、俺をさらなる絶望に突き落とすには十分すぎる答えだった。


「そんな……。私は、試験で手を抜いてなどと……」

「嘘をつかないで!」


今まで黙っていたアーシャの怒号で、俺の言い訳は遮られる。


「私は、一度あなたに負けています。だからこそ、これはリベンジです!」


語ったその目は、熱意と自信、そして挑発が混ざり合っていた。


(そんな目をされて、断れるかよ……)


俺は頭をかきながら、アーシャ、そして学園長に向かって言う。


「わかりましたよ。受けて立ちましょう」


周りの新入生や在校生は、最早観客と化していた。


「うおおォォォォォ!!」

「これは熱いぞ!」


はぁ……。ここは賭け場か何かか?


「では、ルールを説明する」


学園長の声で、一瞬で観客は静かとなる。


「ルールは簡単。殺しは無し、場外判定は無し。あるのは降伏か、戦闘不能までじゃ!」

「いや、厳しすぎねーか!」


思わずツッコんでしまったが、これは仕方ないよよな?


「両者、異論は?」

「……無いですね」

「無いわ」


そう言って俺は、アーシャと対角線上の端に立つ。


「エイドよ。始められるか?」

「行けますよ」


その直後、学園長は号令を発令する。


「それではーー始め!」

4月27日は更新できなさそうです。すみません。

4月28日の21時に更新します!ぜひ見に来て下さい!

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