第二十七話 街を見学
なんとか書けました!読んでみてください!
石畳の道を抜けた瞬間、空気が変わった。
学園の整然とした空気とは違う。
もっと雑で、もっと自由みたいな。そして、ずっと“生きてる”感じのする空気だ。
「……へぇ」
思わず、声が漏れる。
通りの両脇には店が並んでいる。
焼いた肉の匂い。甘ったるい菓子の香り。香辛料の刺激的な匂いが、風に乗って混ざり合う。
「いらっしゃい!焼き串どうだい!」
「魔石安いよー!今日だけ特価だよー!」
「新作ポーション!効き目保証付きだ!」
声が飛び交う。
人が歩く。笑う。交渉する。ぶつかる。
「ハハッ。……騒がしいな」
「ですが、活気がありますね」
ミカエルが淡々と答える。
確かにそうだ。
ただの“うるさい”じゃない。
それぞれが目的を持って動いてる音だ。
「なぁ、ミカエル。あの串焼き買いたいんだけど」
「承知しました。数の方は?」
指を2本立てて示す。それを見たミカエルは、近くにある串焼き屋に声をかける。
「すみません。マスター」
「なんだい兄ちゃん!」
「この串焼きを2つ」
ミカエルは串焼きを指差しながら言う。
すぐにその店主は串焼きを紙袋に入れて手渡す。
「はいよ!620ペリね!」
ミカエルは金貨の様な物体を店主に渡す。
「ありがとうございます。お釣りはいりません」
そうかっこいいことを言ってウッキウキで俺の元に帰ってくる。
「エイド様!無事に買えました!」
「おう、サンキュー」
俺はミカエルに一本の串焼きを投げ渡す。
大事そうに串焼きを眺めているミカエルを横目に俺は前を見ながら串焼きにかぶりつく。
「ミカエル。あの金貨一枚が1000円で、銀貨1枚が100円で合ってるか?」
「はい。合っています。少し、補足しますね。青金貨が5000円で、黒金貨が10000円です。銅貨は10円ですよ」
と、ミカエルがわかりやすく説明してくれる。その説明の間に食い終わった串焼きは、炎雷魔法で灰にする。
「美味しかったぜ」
「おや、見てください。エイド様」
ミカエルが指で指し示す。
通りの中央。
簡易の魔法陣が描かれ、その上で子供が魔法の練習をしている。そして口ずさんでいるのは……詠唱か。
「炎よ!自然の炎よ……!」
ボッ、と小さな炎が揺れる。
だがすぐに暴発しかけて、慌てて消す。
「うわっ!?あっぶねぇ!」
「だから言っただろ、詠唱を雑にするなって!」
近くの大人が頭を叩く。
「流石に……レベル低いな」
「ですが、この世界では標準的かと」
ミカエルの言葉に、俺は小さく肩をすくめる。
確かにそうだ。
基準が違うだけで、別に悪いわけじゃない。逆に、俺たちみたいな異常の方がやばいからな。
「……お?」
少し歩いた先で、俺は足を止めた。
武器屋だ。
壁一面に並べられた剣、槍、弓。
どれも魔力の気配を帯びているが、品質は、
「中の中ってとこか」
「この価格帯であれば優秀かと」
ミカエルが補足する。
店主がこちらに気づき、声をかけてくる。
「お、兄ちゃん。見るだけでもいいぞ!試験帰りか?」
「まぁ、そんなとこさ」
軽く返す。
「なら運いいな!今なら受験生割引だ!」
「へぇ」
ちらっと剣を見る。
悪くない。が、俺には必要ない。
「また今度な。まだ学生じゃねーから」
「おう!受かったら来いよ!」
軽く手を振って店を後にする。
感じ悪くない、雰囲気は良さげな街だ。そうして俺達はしばらく歩いた。
食べ物屋、魔道具店、防具屋。どこもそれなりに人が入ってる。貧富の差もあるが、極端じゃない。
「……バランスはいいな」
「はい。都市としては安定しています」
ミカエルが分析するように言う。
「治安もそこまで悪くは……。いえ、訂正します」
その時だった。
「ちょっといいかな?」
男の軽い声。
用があるから声をかけている様に聞こえはする。だが、その裏にある“意図”は薄っぺらい。
ちらっと視線を向けると、三人組の男が立っている。服装は軽装だが、目つきと立ち方で分かる。
「へぇ……ナンパか」
「そのようですね」
ミカエルが即答する。俺はずっと目を細める。
男に囲まれた一人の整った顔つきの少女が立っていた。
その少女は特徴的な白く長い髪をなびかせている。
だが、表情は明らかに困っている。
「ごめんなさい。急いでるので」
「いいじゃんいいじゃん、ちょっとだけ」
「試験終わりだろ?俺らもなんだよ」
距離を詰める男たち。
少女は一歩下がる。
だが、後ろは人通り。逃げ場がない。
「……どうしますか?」
ミカエルが、静かに聞いてくる。
声色はいつも通りだが、ほんの少しだけ"温度"が低い。
「決まってんだろ」
俺は、ため息を一つ吐いてから、歩き出す。人混みをかき分けてナンパの現場まで行く。
「そこのおっさんズ?」
俺は短く声をかける。
男たちが振り返る。
「あ?」
俺はスッと少女と男たちの間に入る。
「嫌がってんだろ。退けよ」
空気が、一瞬で変わる。
「あぁ?……なんだお前ぇ!」
「お前には関係ねぇだろ」
睨み合い。
だが、俺は一歩も引かない。
というか、最初から勝負になってない。
ミカエルが、後ろで小さく笑った。
(あーあ)
内心で思う。だって、目の前にいるのは神なんだからな。
(運が悪かったな、お前ら)
男の一人が、舌打ちする。
「チッ……行くぞ」
空気を読んだのか、それとも本能か。
それ以上は絡まず、去っていく。
「ふぅ……助かった」
後ろから、小さな声が聞こえてくる。
振り返ると、少女が頭を下げていた。
「ありがとうございました」
「別に。大したことじゃねぇよ」
軽く返す。
ミカエルが、じっとその少女を見る。
「……貴女、受験生ですね?」
少女が一瞬だけ驚いた顔をする。
「え、はい……そうですけど」
やっぱりな。
雰囲気が違うからな。ただの一般人じゃない。
「名前、聞いていいか?」
俺が聞くと、少女は少しだけ間を置いてから答えた。
「……ミライです」
一拍。
「ミライ=ラジアル」
風が、少しだけ吹いた気がした。
名前を聞いたミカエルの目が、わずかに細まる。
「ラジアルと言うと……白氷魔法の名家ですね……」
ミカエルの言葉に少し驚いた様に言う。
「知ってたんですか」
「知ってるも何も、名門ですからね」
「へー。そんなんだ」
「エイド様。もう少し常識を知るべきでは?」
ミカエルに苦言を呈されるが知ったこっちゃない。
「で、そんなエリート出身の君が、どうしてこんな所にいるのさ」
俺の言葉に少し悲しげになる顔。
『ミカエル。コレはなんかあるな』
『はい。恐らくはですが』
ミカエルが言うんなら合ってると思うが、まだ聞かなくても良いか。どうせまた会うし。
「ミライ。話したくないんだったら話さなくたって良いぜ」
「……ありがとうございます……」
俺だって、そこら辺のプライバシーにズコズコ踏み込む様なゲスな性格はしてない。
「んじゃ。俺らはそろそろ行くぜ」
「では。私もこれで」
ミライに軽く手を振りながら俺は人混みの中に歩いていく。
「はい。また会いましょうーーエイドくん。ミカエルさん」
俺とミカエルは人混みの中でしばらく無言で歩き続ける。
「……なあ、ミカエル……。お前の名前は出してねーよな」
「はい。エイド様の名前しか出しておりません」
やはりな。少し不自然に思ったんだ。ミカエルの名前はあの娘に伝えていない。
「心を読まれたのか……?いや、それはないな。俺の最高位精神防御壁を通過した形跡どころか近づいた痕跡すらない」
「私も同じです。恐らく、原始の七色魔法の類いですかね」
まだ魔法技術も全然発展してないのに、原始の七色魔法の魔法を使える……か。
俺はミカエルの顔を見る。その顔はかつてないほどに暗かった。
「心当たりを一つ。思い出しました。ですが少し、昔話を挟むこととなります。構いませんか?」
「いいぜ。たまにはな」
ミカエルの昔はあまり話してくれない。と言うか、聞いても濁されるだけだからな。こう言う時に聞いておかないと。
見てくださり、ありがとうございます!




