第二十五話 第二試験
明日、更新できれば更新します。
受験者の列が、ゆっくりと前へ進んでいく。
受験生達に映る表情は、喜びや怒り、焦りや妬み。他種多様な色をしている。
人の顔を見るのは俺の昔からの癖だ。
それこそ、前世で上司の機嫌を取る為に、ある程度の感情がわかる様になっていた。
「……ド様。エイド様?」
「ん?あぁすまん。考え事をな」
その言葉に、ミカエルが突然跪く。周りの視線が一斉にこちらに向く。
「ちょ!おまっ!」
「私如きのせいで!エイド様の思考を塞いでしまうという愚行!どうお詫びすれば!」
思わず額を指で抑える。いつもならここでぶん殴っているが、そしたら周りに与える影響が多すぎる。
「ミカエル。大丈夫だ。だから、頼むから立ってくれ」
ミカエルがちらっと周りを見る。分かったのだろう。俺らがどれだけ注目を集めているかを。
「有象無象が……。調子づいて……」
ミカエルが小声でディスってるが、普通にやばいこと言ってるぞ。お前、本当に天使か?
そんな俺たちの様子を見て周りの外野がざわつく。
「さっきの、ほら!実技で満点を取った2人のうちの1人のやつだよ!」
「それより、あの背の高い男の人。イケメンじゃない!?」
「わかるー!」
ダメだ。恋愛に関心を持つ年頃だから、こういうのに敏感なんだ。てか、俺の話題は?俺だってかなりビジュ良いはずなのに……。
「もういいさ。そう、もう、いい」
「エイド様?大丈夫ですか?それより、見えてきました」
「……あれか」
俺の視線の先には、大きな水晶のような装置があった。
高さは人の胸ほど。
淡く光を放ち、内部で魔力が渦巻いている。
その横に立つ試験官が説明を始める。
「この水晶に触れ、魔力を流し込め」
淡々とした声。
「出力・質・制御精度・属性適性。それらを総合してトータル100点満点で評価する」
ざわ、と周囲が揺れる。
「一発勝負だ。やり直しは効かん。そこは重々認識する様に」
緊張が一気に高まる。
そして、最初の受験者が水晶に手を当てる。
――ぼんっ、と弱い光。
「32点。次」
「くっ……!」
次の奴が手を翳す。
「45点」
まだ合格点を満たしていないんだろうな。テストの点数で見ても割と高めになってきている。
「……58点」
「おおっ!」
少しずつ歓声が混ざり始める。
どうやら60点前後が上位ってとこか。
「……基準は分かったな」
俺が小声で呟くと、ミカエルが静かに頷く。
「はい。平均はおおよそ50前後」
「満点は?」
「現時点では出ておりません」
当然だな。
(さて……どうするか)
強く出しすぎればアウト。弱すぎれば逆に落ちる。
「……めんどくせぇな」
前のやつが終わり、俺の番が来る。
「次。受験番号112番」
試験官が俺を見る。
「エイド」
「はいはーい」
軽く手を上げながら前に出る。
水晶の前に立ち、ほんの一瞬だけ、内部構造を“視認する”。
(……なるほどな)
測定してるのは魔力量だけじゃない。
むしろ厄介なのは、“魔力の制御技術”と“魔力の質”だ。
ここを誤魔化しきれなかったら、試験終了だな。
「どうした。早くしろ」
試験官に急かされる。ったく、少しは待てよ。
「はいよ」
俺は水晶に手を当てる。
その瞬間、内部にほんの“糸一本分”の魔力を流す。
だが。
(……未来視、起動)
ほんの数秒先の結果を見る。
【結果:62点】
(高いな)
少し削る。
【結果:55点】
(……もうちょい下げるか)
さらに微調整。
【結果:52点】
(よし、これだな)
ピタリと止める。
次の瞬間、水晶が安定した光を放つ。
「……52点」
試験官が読み上げる。
「十六歳の平均丁度だ」
周囲がざわつく。
「お、普通に強いじゃん」
「さっきのやつだろ?あの魔物ぶっ飛ばした」
「でも満点じゃねぇのかよ」
勝手に期待して勝手に納得してるな。
俺は肩をすくめる。
「こんなもんだろ」
そのまま下がる。
ミカエルの前を通る瞬間、小声で言う。
「分かっているな?」
「はい」
その声は、やけに静かだった。
嫌な予感しかしないから俺の心は不安に覆われたのであった。
ミカエルが前に出る。
空気が、ほんの僅かに変わる。
(頼むから……やりすぎんなよ)
そう思った瞬間だった。
ミカエルが、水晶に手を当てる。
次の瞬間。ビキッと音がする。
「……?」
試験官の眉がピクっと動く。
ヒビが、一筋。
だが、それで終わらない。
バキ、バキバキバキッ!!
内部から魔力が逆流し、水晶全体が悲鳴のように震える。
「ま、待て——」
試験官が慌てて止めようとするが、時すでに遅し。
パキンッ!!
完全に砕け散った。
会場が静寂に包まれる。
「…………」
ミカエルは、何事もなかったかのように手を離す。
「申し訳ございません」
静かに頭を下げる。
「少々、加減を誤りました」
ざわ——ッ!!
遅れて、観客が爆発する。
俺は、こめかみを押さえた。
「……おい」
「はい」
「抑えた、って言ったよな」
「はい。魔力の一厘未満です」
即答。こう言うところが本当に腹立つ。
(……まあ、いいか)
小さく息を吐く。
そして、口元だけで笑った。
「……ミカエル」
いずれはどうせ……。
「隠しきれるもんでもねーしな。今回は不問でいいぜ」
ミカエルは、俺の友達に少し似てますね。(いい意味で)
4月22日の17時00分に更新します!感想待ってます!




