第二十三話 新たなる世界
先にこちらを読んでくれた人。申し訳ございません。本当に申し訳ございません。
視界が明るくなり、手に砂の感触が伝わってくる。
「また森スタートかよ……」
地面から立ち上がり、周りを見渡す。勿論、見渡す限り木しかないがな。服を叩くとロッド達の世界にいた時と違う服を着ているのがわかる。
「お目覚めになりましたか。エイド様」
声の方を見ると、ミカエルが15.16歳ぐらいの顔立ち(当然イケメン)で跪いている。羽は収納され、真ん中にドクロが描かれたクソダサいロゴの服を着ている。
あ、そうだ。こいつもいたんだったな。それより……。
「ミカエル。立ち上がれ。その姿で跪かれたらおかしいだろ?」
「成程。承知いたしました」
流石ミカエル。俺の言ったことをすぐに飲み込める。その性格さえ除けば完璧なんだけどな。
「報告いたします。エイド様」
その言葉の後にもミカエルは恭しくお辞儀をする。
「それもやめた方がいいだろ。周りから見たらおかしいんだからな」
「これは最低限のことですから」
と言って一向に頭を上げようとしない。これは、許容すべきかな。
「わかったよ。で、報告は?」
「はい。半径100キロ以内に生体反応はありません。当然敵意もなく、極めて安全な状況です。それでエイド様。こちらを見てほしいのですが……」
と言って指をパチンッと鳴らす。直後、目の前に幾つものスクリーンが表示される。俺とミカエルの周りを囲う様に展開されているな。
「……どうやったの?」
「観察魔法と表示魔法と具現化魔法、そして世界水魔法の複合魔法です。エイド様なら造作もありませんよ」
俺は、いつもの賛辞を軽く流し、続ける様に促す。
その後直ぐに、ミカエルは一つのスクリーンを指さして、俺の目の前まで移動させる。見ると、学生服を着た学生が城門の中に入っていっている。
「学生……か?」
「その通りです。ご慧眼恐れ入りました。調べたところによると、今日の12時からこの城壁の中にある英才教育機構で、入学試験がある様ですねぇ」
「いや学園って言えよ。で、今何時?」
ミカエルがスクリーンの左端を押すと、時刻が表示される。10時30分だ。
「そこまで、時間も余裕ってわけでもないな」
「はい、ここから学園都市までの距離はおおよそ1800キロです」
「間に合わなくね?これ……。」
すると、俺の言葉を聞いたミカエルが、わなわなと震え出す。
「大変些事なのですが……。セブノック様からの……伝言です……。「この入学試験に受からなければ、その時点で試練終了じゃぞ!精々頑張るんじゃ!」との事です……。」
最後の方、唇から血を流しながら言っているが、そんなにあいつ嫌いなのかよ。それより、問題は移動手段だ。この距離から制限付きの瞬間移動は、魔力が爆ぜて派手すぎる。
「で、どうやっていく?」
「瞬間移動テレポートとかどうですか。今ならエイド様の制限も治りましたし、全てのスキルを安全に利用できますよ?」
「ダメだ。この世界に、明らかにおかしい奴がいたら尋問されるだろ?そうだな……。ミカエル。魔法は使えるか?」
「エイド様……。ようやく私を頼られて!私は!エイド様の役に立つために!常に鍛錬していま……!」
少し褒めたら直ぐこうなるんだよな。俺はミカエルの頭を軽く叩き、正常に戻す。斜め45度で叩くのが良いんだったっけ。
「動作系は使えるか?」
「勿論でございます」
使えるんなら話は早い。俺は森から直線上に学園都市がある方向に向く。ミカエルは言われずとも俺の前に来る。
「エイド様。お手を拝借いたします」
「おう」
俺はミカエルが差し出した手を掴む。その手は少しだけ暖かい。
「準備は宜しいでしょうか?エイド様」
「おう。いつでもいけるぜ。」
「御意。では、」
ミカエルの瞳が、静かに細められる。
「最短経路、最適化。障害排除。空間摩擦軽減」
周囲の景色が、少しずつ細まり続ける。
「動作系最上位魔法――」
足元に、淡い光が走る。
「移動の極意」
次の瞬間、世界が一つの線となり、一直線に進み始める。
「――ッ!?」
普通の奴なら叫んでる速度だ。だが、俺は普通じゃない。神だからな。
「……良い具合だな」
景色が流れる。
いや、“流れているように見えるだけ”だ。
側から見れば、俺たちが空間を透過して高速移動している。ま、動体視力的に無理だけどな。
森が消え、山が消える。
川が、街が、空が、全てが一瞬で後ろに消えていく。
「風すら、追いついてきてねぇな」
ミカエルが、俺の手をしっかりと握ったまま答える。瞳に歓喜の色が映っているのは気のせいだと思おう。
「エイド様の為、空間抵抗を削減しておりますので」
「便利すぎだろそれ」
「エイド様が良ければ私はそれで良いので」
はいはい。俺は軽く受け流し、景色の流れを楽しんだのだった。
*
会話の流れからして、1分ぐらいありそうじゃん。違う。
本当に、少しの時間で到着した。
「到着致します」
その言葉と同時に、景色が広がっていく。
足が再び地に触れる。さっきまでの土の感触と違い、今度は石畳だ。そして、
城門を行き交う人の気配。何故かの喧騒。
「……おぉ」
目の前には、巨大な城壁。
さっきスクリーンで見たやつ、そのままだ。
俺は思わず感心する。高さも、魔法による防御性能も、人が作ったのならなかなかのものだからだ。
「到着いたしました」
ミカエルが、何事もなかったかのように言う。
「所要時間、約15秒でございます」
「……いやそうじゃなくてな」
俺は一歩踏み出す。
「これ、派手すぎたろ」
1800キロだぞ?瞬間移動なら兎も角、普通の魔法だからな。
周囲の人間がざわつく。
「な、なんだ今の……?」
「突然現れたぞ……!?」
「学生……?」
あ、やばい。バレたな。
「ミカエル。目立ってるぞ!」
「問題御座いません」
ミカエルが人差し指を横に軽く振る。
その瞬間、周囲の視線がふっと逸れる。まるで、最初から俺たちの存在が見えてないかの様に。
「認識阻害を軽くかけました。本当は赦しても良かったのですがねぇ……」
「いや殺らなくて良いし。あと、軽くでそれかよ」
もういいや。こいつの異常性は今に始まったことでもない。俺は気にしない様に心がけたのだった。
人混みをすり抜け、門の前まで来るのに思ったより時間がかかってしまった。
途中、俺の肩にぶつかった奴を、殺意ある笑顔で見つめていたミカエルを嗜めるのが1番疲れたな。
そんなことを考えつつ、俺は前を見る。そこには城門の前に人だかりが出来ている。
明らかに受験者。
「ギリギリだな」
ミカエルが時間を確認する為に、腕を見る。ミカエルの腕には、具現化魔法と時間魔法で創った時計が嵌められている。
「現在、11時52分。受付終了8分前です」
「セーフだな!」
俺はそのまま列に向かう。
ミカエルも右斜め一歩後ろについてくる。
「……間に合いましたね」
「あぁ」
小さく笑う。あのクソジジイが。
「落ちたら即終了とか、ふざけた条件つけやがって」
セブノックの顔が浮かぶ。思い浮かぶのはニヤニヤした笑顔だけだ。
「当たり前だが、絶対受かるけどな」
俺の言葉にミカエルが軽く笑う。
「当然でございます」
*
受付に到着する。そこに居る教師であろう人に名前を書かされる。
「名前を」
「エイド」
「……ミカエルです」
当然だが、問題なく通る。なんて言ったって受験料だけは無料だからな。
そして芝生のグラウンド上で待機させられていた受験者達。
「受験者は会場へ!」
試験官の声が響く。
俺は軽く肩を回す。
「さて」
ミカエルが横に並ぶ。
「学生ごっこのお時間ですね」
「言い方!やめろ!」
でも、まあ。久しぶりだな。学校なんて。
「悪くねぇな」
少しだけ口元が緩む。
「こういうのも」
ミカエルが、にこやかに微笑む。
「エイド様が楽しそうで、何よりです」
「はっ。楽しんでねぇよ」
俺はすぐに否定する。まぁ、楽しいっちゃ楽しいがな。
ミカエルも、今回の試練に関わっていますが、ミカエルは怒られたくないからエイドには黙っています。




