第二十二話 試練説明
誠に申し訳ございません!間違えて二十三話を出してしまいました!今日は二話更新します!
少しの間、静寂が森を包む。
「……試練、ね」
俺はぼそりと呟く。
その瞬間、パキッと、空間に、細いヒビが入った。
「……え?」
ロッドが声を漏らす。
ヒビは、まるでガラスみたいに広がっていく。
そして、バリンッ!と空間が、砕けた。
「おー、説明忘れとったわい!」
軽い声と共に、さっき消えたはずのセブノックがひび割れた空間からヒョコっと顔を出す。もう戻ってこれない様にスキル:座標取得不可を使ったんだけどな。どうやって帰ってきたんだよ。
「で、説明って?それに、忘れんなよ」
即ツッコむ。
「いやいや、大事なとこじゃからな」
空中で胡座かいて、指を一本立てる。
「いや、立って説明しろよ」
「……わかったわい」
嫌々だが、地面に足をつける。俺よりめんどくさがり屋かよ。
「今回の試練なんじゃが、ちゃんとルールがあるぞ」
アンナとロッドが身構える。
ミカエルは、ニッコリとした笑顔で無言でセブノックを睨んでる。もう、怖い。
だが、セブノックは気にせず続ける。
「まず一つじゃ」
指が、四本に増える。
「ナンバーズ世界に、魔王もどきを四体。ばら撒いた」
「……四つの世界ね」
「そ。でな?」
ニヤッと笑う。
「その世界のレベルじゃ、絶対に、何があっても倒せん」
ロッドの顔が強張る。
アンナも、剣を握る手に力が入る。
「当然じゃがな」
セブノックが俺を見る。それはもう、人が悪い様な笑顔でな。
「其方が倒すのは禁止な」
「だろうな」
即答する。ここまでは予想通りすぎる。
「代わりに、“選ぶ"んじゃ」
空気が、少しだけ変わる。セブノックの顔も少し真面目な顔に変わる。
「その世界から一人。“選抜者”をな」
アンナが、息を呑む。
「……育てる、ということですか……?」
「お、理解早いのぉ。流石は選抜者じゃな」
パチパチと拍手をしながらセブノックが言う。
「てことは、俺がアンナを育てたのはある意味正しかったと?」
「うむ。そうじゃな」
俺は、無意識に、こいつの思惑通りに事を運んでしまったってわけか。最悪だぜ。
「其方が、何を考えとんのかは知らんが、話しを戻すぞい。そして、その選抜者をエイド、其方が鍛えて、そいつにワシが創った魔王もどきを倒させる」
成程ね。思っている以上に、
「めんどくせぇ」
「試練は簡単な物か?違うじゃろ?」
ケラケラと笑う。その顔面を殴り飛ばしたい。この気持ちはどこに置けばいいのか。
「勿論じゃが、報酬もあるぞ」
指を鳴らす。が、音が鳴らない。
「あれ?なんじゃ?」
何回も指を鳴らそうとするが、一向に鳴らない。そりゃそうだ。
「なんがうざかったから、お前に"指パッチン出来ない魔法"をかけといたぜ!」
「嘘じゃろ!さっさと解除せい!話が進まん!」
「嫌だねー!」
笑いながらセブノックに言う。この瞬間が1番楽しいな。そんな俺たちの様子を見たアンナが一言。
「…悪魔」
「……え?」
「やってることが悪魔の所業ですよ?」
「もっと言ってやってくれ!今代の勇……」
その先の言葉は続かなかった。何故か、ミカエルが睨みを効かせたからだ。
「セブノック様?エイド様達との話の真っ最中ですよ?」
「はい……。で、解除してくれ、エイドよ」
「ッチ。しゃーねーな」
仕方ない。解除してやるか。
指を鳴らし、発動させていた魔法を解除する。
「ほい、解除したぞ」
「でかした!」
焦った様にセブノックは指を鳴らす。
パチンッという音の後に、俺の背後に、見覚えのある扉が現れる。
「……俺の?」
「そうじゃ。其方の部屋じゃ」
ピクリ、とミカエルの眉が動く。あ、やばいな。
「一つ世界を救うごとに」
セブノックが、扉の前まで歩いて行き、その扉を指でトントンと叩く。
「中から一つだけ、持ち出し許可してやるぞい」
ロッドが小声で呟く。
「……エイド様の、部屋……?」
アンナも息を呑む。
価値が分かってない顔じゃない。
“神の私部屋”だ。
だけどなぁ。色んな武器とかアイテムはあるよ。あるけどさ……。
「俺の部屋、散らかってんだけど?」
「いや知らんわい」
クソが。無視しやがって。
「ま、好きなの持ってけ。武器でも概念でもなんでもありじゃ」
「ざっくりしてんな」
「まあまあ、細かいことは気にすんな」
そして、またも指を鳴らし、俺達の中に、半透明のローマ数字が刻まれた時計を創り出す。
「1番大事だと思う時間の説明な」
時計を指差しながら言う。
「現時点で、他の世界の時間を止めてある」
「……は?」
ロッドが固まる。
「お主が行った瞬間に」
手を叩き、ニヤリと笑って言う。
「時間再開じゃ」
「わかった。同時進行じゃねぇってことか」
「そそ。ちゃんと一個ずつやれるようにしといた」
「フェアじゃろう」とかセブノックが言ってくるが、優しい風に見えて普通に狂ってる。
「一応聞くぜ。期間は?」
俺が聞く。
セブノックは、あっさり言った。
「勿論、無限」
沈黙。
「いつ終わってもいいし、終わらんでもいい」
軽い口調で続ける。
「全部クリアしたら」
そこで言葉を止めてニヤッと笑う。
「5年休暇やる」
「……5年」
アンナが小さく呟く。
ロッドも息を飲む。
ミカエルは、無言で空を見てる。たぶん内心悲しみのあまり発狂してる。
俺はというと。
「……安いな」
俺の言葉で、場の空気が止まる。
セブノックが吹き出す。
「ガッハッハッハッハ!!言うと思ったわ!!」
「俺の仕事量考えろよ!普通はもっとあるだろ?」
「いや、破格じゃろ普通は!……そうじゃな。10年は?どうじゃ!?」
10年!?そんな長い期間を!?俺の神生が始まってから初めてセブノックを尊敬できた瞬間かもしれない。
俺は少し考えるふりをしてから、口を開く。
「……いいぜ」
(勿論やらせてください!なんでもしますんで!)
そんなことを考えている俺をアンナとロッドがこっちを見る。訝しむ目でな。あいつらはわかってんだろうな。
「やってやるよ」
その一言で、空気が変わり、セブノックの笑みが更に深くなる。
「決まりじゃな」
パチン、と指を鳴らす。
すると、空中に、四つの色の光が浮かぶ。。赤、青、緑、黄。
それぞれが違う“世界”だろうな。
「緑の世界の魔王もどきは、ミカエルが倒したから……。緑の世界の以外じゃな。さて、どれから行く?」
俺は一つを指差す。それは……。
「……これだな」
澄んだ水の中に清濁が混ざった青色の世界だ。なんとなく、カッコ良さそうだしな。
「ほぉ、そこに行くか」
セブノックがニヤつく。
「色んな意味で、一番ハズレじゃぞ?」
「知るか」
俺は一歩踏み出す。
「ミカエル」
「はい。なんでしょう」
「ついて来いよ」
ピタリ、と止まる。そして、涙を流し始める。あー、めんどくせぇな!
「……このパターンは予測しておりませんでした」
顔を上げたミカエル。そこに浮かぶものは、いつもとは違う心からの笑顔。くそ嬉しそうだな。
「勿論、ミカエルが倒すのも無しじゃぞ?」
「わかってるわ」
セブノックの言葉を軽く流し、俺はアンナ達を見る。
「お前らはここでお留守番だ」
「え……?」
「俺が帰ったら、次はお前らの番だ。わかってるな?」
アンナの目に、炎が灯る。返事は、決まってるな。
「……はい!」
ロッドも強く頷く。
「任せてください」
よし。アンナも強くなったし、大丈夫だろ。
「今生の別れってわけでもないさ」
俺はそのまま、光の中に足を踏み入れる。
「別れの挨拶にしては雑だけど、行ってくるわ」
その一言を残して光に身をまかし、視界が、歪んだ。
「期待してるぞ。神様」
セブノックの言葉で、俺の意識が沈む。
その瞬間、別世界の時間が、再び“動き出す”。
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