表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/33

第十九話 四代目

春休みが終わりましたね。

あの休みをもう一度くれ。

「さて、カッコつけたのは良いんだけど、どうやって行こうかな」


花畑な道を並んで歩きながら2人にそう問う。


「そう、ですね。あんなにカッコつけといて、行き方がわからないと聞いた時は笑いそうになりましたが……」

「………こら。アンナ。エイド様に向かってなんて事を」


ロッド……お前も笑ってるからあんなと同罪だぞ?

まあ、行き方がわからないのは俺のせいだけど、ここまで言うのは酷くない?ラファエルにもここまで言われたことないのに……。


「誇っていいぞ。お前ら……。ここまで俺の心核を傷つけられたのはお前らだけだぞ……」

「神ってそんな簡単に傷つくんですね」

「やめろ、事実を言うな」


アンナの即答に、俺はため息をつく。

ロッドは咳払いを一つ。


「……話を戻しますが、場所はおおよそ分かっています。森の奥、神威の発生地点まで案内できます」

「最初からそれ言えよ」

「聞かれなかったので」


こいつ、絶対わざとだな。

すると、アンナがくすっと笑う。


「ふふ……でも、良かったです。これで迷わずに済みますね」

「いや、いや、迷う前提なのかよ。それに迷うのもそれはそれで面白いだろ」

「面白くありません」


即答かよ。

……まあ、いい。さっさと行きたいしー。


「よし。歩くの面倒だし、飛ぶか」

「……え?」


アンナがきょとんとする。

ロッドは、すぐに察したのか一歩後ろに下がる。


「取り敢えず、酔わない様に気をつけろよ。スキル:空間の設定(スペース・ペースト)


その言葉の後に俺は指を鳴らした。

その音は周囲にも反響し、周囲と共鳴する。

直後、目の前の景色が緑の森となった。否、そこだけだ。

横を見ても、上を見ても、そこだけが切り離されたかの様に別の景色となっている。


「……これは、一体……」

「ゲート、とは違いますね?空間の貼り付けですか?」

「そ!お前が言った場所の座標をここに貼り付けたわけ」

「……普通に言ってますがそれ、えげつないぐらいにSP(スキルポイント)使いますよね……?あ、無限でしたね。SP(スキルポイント)……」


なんか自問自答してるが見て見ぬ振りをしておこう。


「よし!行こうか!」


その空間を跨いだ時、足元の感触が、石レンガから土の柔らかい感触へと変わる。


一歩、もう一歩踏み出して後ろを振り返るとそこには見渡す限り木々が生い茂る森の中である。

遅れてアンナも俺の元に来たが、もはや驚きすぎてこの程度のことには動揺しなくなっている。

唯一、ロッドだけが目を丸くしている。


「……一瞬で、ここまで……」


呆然と呟くロッドを横目に、俺は軽く周囲を見渡す。


「まあ、移動はこんなもんでいいだろ。それより」


そこで俺は言葉を切る。

なぜって?そりゃわかるだろ。空気が、おかしすぎるからだ。

風が葉を掠める音もなければ、土が発する匂いもない。

そう、森が"静かすぎる"。


「……エイド様?」


アンナが不安そうに声をかけてくる。

一方、ロッドはこの空気を察したのだろう。剣に手を当てていつでも抜刀できるようにしている。


「アンナ……いつでも抜刀できるようにしておきなさい……」

「ロッドの言う通りだ。さっさとしろ」

「は、はい」


戸惑いながらも創律(ナーバ)に手をかける。

直後、ロッドの足元からボコボコと青い液体が溢れてくる。


「っ!狙いはやはり!」


青い液体がロッドの足元を貫く紙一重で飛び退く。瞬間、居合の技術で液体を斬った。

そう、"斬った"はずだった。

だが、それは、あまりに予想外だった


「……っ!やはり、手応えが……ない!」


ロッドの剣は確かに“それ”を捉えた。

にも関わらず、斬撃は水面を裂くように、何の抵抗もなく通り抜ける。


「ロッド!今すぐ離れろ!」


俺が叫ぶと同時に、その青い液体が一気に膨れ上がる。

地面から溢れ出したそれは、瞬く間に“形”を持ち始めた。

液体から腕が生え、続けて脚。その後に胴体。そして、顔。


「……っ!」


アンナが息を呑む。そこに立っていたのは……。


「……お父……様……?」


アンナがが、信じられないものを見るように呟いた。

整った顔立ち。

引き締まった体躯。そして、アンナを彷彿とさせるあの翠緑の瞳。

そして、迷いのない“構え”。


「チッ……なるほどな」


俺は小さく舌打ちする。

俺は、4代目を見た事はないが、アンナとロッドの反応を見るに間違い無いだろう。

すると、一直線に走るスライム。狙いは……。


「くっ!私か!」


そう。ロッドだ。

だが、次の瞬間。


「ッアンナ!」


ロッドが叫ぶより早く、“それ”は動いた。ロッドから急な方向転換をし、アンナに駆け出す。

地面を蹴る音すらない。

ただ、消えたと思った次の瞬間には、アンナの目の前にいた。


「っ!!」


咄嗟に創律ナーバを抜くアンナ。

だが、その一撃よりも速く、ギィン!と重い金属音が森に響いた。


「くっ……!」


辛うじて受け止めた。

だが、腕が軋む。


「……お父様……!」


アンナの目が揺れる。

目の前にいるのは“父”の姿。

だが、その中身は、明らかに違う。


「……躊躇ってる場合じゃねぇぞ、アンナ」


俺は低く言う。


「そいつは“親父”じゃねぇ。ただの模倣だ」


その言葉に、アンナの歯が噛み締められる。


「分かって、います!」


"それ"を弾くように剣を振る。

だが、“それ”は容易く後ろへ飛び、距離を取る。

……そして。ぐにゃり、と。


「……は?」


ロッドが思わず声を漏らす。

四代目勇者の“顔”が、歪んだ。

皮膚が溶けるように崩れ、

骨格が捻じれ、瞳が、ぐるりと回転する。

そして再度、身体が構築される。


「――あぁ、そう来るか」


思わず、笑みがこぼれる。

そこに立っていたのは。


「……エイド様……?」


アンナの声が、震える。

俺と、同じ整った顔立ち。同じ体格。そして、ポケットに手を突っ込んだ同じ立ち方。

だが、決定的に違う事がある。


「……こいつは、()()()()()()な」


“それ”の周囲の空間が、ミシ、と軋んだ。

ほんの僅か。

本当に、微量。

だが、それだけで地面に細かな亀裂が走る。

ロッドの顔が凍りつく。


「……まさか……」

「恐らくな」


俺は肩を回しながら、一歩前に出る。


「コピーしてやがるな。“俺”を」


こいつ、身の程知らずにも程があるぜ。いや、ちがうな。

ニヤリと笑って言う。


「あれは、“なりそこない”だ」


視線を、真正面に向ける。なんかコイツの顔、見れば見るほど腹が立つんだけど。


「神遺物にもなれねぇくせに、“神”の真似事かよ」


こいつは、俺の威信(プライド)にかけて殺さねばな。

読んでくれてありがとう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ