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第十七話 この落ち着いた世界に崩壊を!

すみません。タイトルに違和感があると思いますが、無視してください。

どれくらい眠っていただろうか。

ゆっくりと、おれの意識が浮上する。


「……いつぐらいだ?」


目を開けると、見慣れない天井……みたいなファンタジーじみた展開はなく、ロッドの家の天井が視界いっぱいに広がっている。

体を起こすと、ソファーの向かい側でアンナがまだ眠っていた。

創律ナーバを抱くようにして、静かに寝息を立てている。


「……ほんと、疲れてたんだな」


俺が課したクソ試練の後だ。

まあ、無理もねぇか。


「ん……」


小さく身じろぎしたアンナが、ゆっくりと目を開ける。


「……エイド様……?」

「おう。起きたか。具合はどうだ?」


ぼんやりとした目で周囲を見回し、状況を思い出したのか、アンナの顔が少しだけ赤くなる。


「……すみません。取り乱してしまって」

「気にすんな。むしろよくやった方だろ」


軽くそう言うと、アンナは少しだけ驚いたように目を見開き、俺をじっとみる。


「ありがとうございます」


小さく、だがしっかりとした声だった。


「さて」


立ち上がり、アンナに声をかける。


「ロッドもいねーし、どうしようかなー」

「確かに……そうですね」


アンナも立ち上がり、創律ナーバを腰に差す。

少しの沈黙。


「……街、見て回るか?」

「……え?」

「どうせロッド帰ってくるまで暇だろ。試練も終わったわけだし。ついでに、お前の新しい力の感覚も慣らしとけ」

 

アンナは少しは考えるかなとか思っていたが答えは違った。


「はい!行きましょう」


アンナは確かに頷いた。



外に出ると、街はいつも通り?の賑わいだった。まあ、来た事ないからわからんけど。

人の声やら商人の呼び声、そして子供の遊んでいる笑い声。


「ゆったりしてるな……本当に」

「……平和、ですね」


俺が思っていたことをアンナがぽつりと呟く。


「そうだな」


俺は空を見上げる。

ここで敢えて意地悪な発言をする。


「だからこそ、こんな平和が壊れた時が面白いんだけどな」

「……エイド様?」


アンナが真顔で見てくるが、俺はそれを軽く受け流し、


「あんまマジになんなって……まあ、冗談だよ」


軽く笑って誤魔化す。

まぁ、実を言えば、半分本音だが。

こんな争いもない世界は、一度戦が起こると容易く崩れ去るだけだ。

アンナからグルル、と音がして、アンナを見ると顔がイチゴみたいに真っ赤だ。

俺は思わず笑ってしまう。


「ククク……アハハハハハ!」


アンナが恥ずかしそうにしながら声を荒げて反論する。


「お、お腹がなったくらいで……!」


その反応が実に可愛くて……。おっと、これ以上は危険だ。

俺は空気が読める人間?なのだ。これ以上煽ったら流石に殺される。


「腹が減ったんならよ。アンナ。何か食うか?」


近くにある屋台の方へ顎をしゃくり、屋台に向けて歩き出す。


「え、あ、はい……」


アンナが少し戸惑いながらもついてくる。


「すみませーん!串焼き二つ!」

「はいよー!」


店主が慣れた手つきで串を取り出して俺に手渡す。

適当に串焼きを2本買って、1本をアンナに投げる。


「ほらよ。」

「ありがとうございます」


恐る恐る一口。まあ実に一口の量が小さいわけだ。


「……美味しいです」

「だろ?」

「……なんでエイド様が自慢げなんですか」

「そりゃ。俺が選んだんだからな」


しばらく、他愛もない時間が流れる。

世間話やら、ロッドの過保護な事例やら。

そして、街からゲートに向かって帰る時、アンナの質問が俺に飛ぶ。


「先程、エイド様はこんな平和を壊したいと言っていましたよね?いったい何故ですか?」


あちゃー。覚えていたか……。まあ、大したことでもないし、教えてやるか。


「この世界以外にもいろんな世界があることは知っているな?」

「はい。この世界ではその情報は国家機密です」


あの日、アンナと偶然会った景色が鮮明に蘇る。未来とは、いつでも予想できないものだ。いや、それも運命ってやつなのかな。


「エイド様?」

「あぁ、すまん。ちょっと考え事をしててな。続きな。ここみたいな争い事がない世界があってな。その世界に、魔王が発生してな。人々は一瞬で魔族や魔物に支配された。だからミカエルはどうしたと思う?」


アンナは少し考えたあと言った。


「魔王を、殺したとか?」

「……まあ、ある意味合ってる。正解は、その世界ごと存在を消したんだ」


俺の言葉を聞き、口を手で覆うアンナ。少しショッキングな話だが現実は残酷だ。


「なんで……なんですか?」


何故か、か。昔、この話を聞いたラファエルにも聞かれたな。俺はラファエルに言った言葉をアンナに教える。


「手遅れだったからさ」

「手遅れ?」

「そうだ。俺たちが介入して、世界を助けてみろ。そしたら、その世界の住人は俺たちに全てを任すこととなる。それは管理上面倒だし、世界にはそれ以上の発展は望めない」

「ですが!まだ、生きる希望を持っている者たちだって、いたんじゃないんですか!」


やはり勇者だから耐えられないんだろう。アンナは俺に向かって反論する。


「だから、ミカエルが消したんだよ」

「え?……」

「あの時、ミカエルが俺になんて言ったと思う?

『貴方様は、ご自身の手を汚す必要はありません。汚れ仕事は、このミカエルにお任せを』って言ったんだよ」


優しいだろ?……この言葉は、俺は言葉にしなかった。もし、この会話もミカエルに聞かれてたら面倒臭いからな。


「要するに、これ以上発展が望めないのなら、"死"って訳。勿論、死んだ人達は、邪悪なものを除いて転生させてある」

「邪悪な者?ですか……」

「そ。イカれた殺人者とか、悪意を持って人を傷つけた者とかのことだね。そいつらは、()()させた」

「輪脱、ですか?」


アンナが首を傾げる。知らないのも無理はない。こちらの世界での単語だからな。


「魂ってのは輪廻転生するだろ?」

「いや……初耳です……」


知らねーのか?まあ仕方ない。


「それが法則な。で、その輪廻から、魂を外すんだよ。その魂が行く先にあるのは、"無"だ」

「その"無"とは一体?」

「存在消える。文字通りだ」


滅多にいねーが、十年に一回ぐらいはいるな。


「私も、そうならないようにしないと……」


その言葉を聞いて笑ってしまう。そしてアンナに笑いながら言う。


「勇者は、一回でもなったら無になることはないよん」

「……っ!」


顔から煙が噴き出ている(比喩でもなく)。アンナの顔が真っ赤だ。今日、何回こいつの赤い顔を見ないといけないのだろう。



ある森の中。


「はあ、はあ、早く、エイド様に報告せねば……」


目に見えぬ速度で森を駆け抜けるロッド。

服は所々破けており、口には血が着いている。


「まさか、"あれ"が……」


ロッドの呟きは、思っている以上に森の中で反響した……。


お読みいただきありがとうございました!

気に入っていただけたらいいね、ブックマークよろしくお願いします。

次の更新は4月9日の8時30分です!!!ぜひ見てください!!

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