第十六話 創律
名前をつけるのめちゃくちゃ悩みました。
俺の、意識が沈む。
深く、深く。
何もない闇の底へ。
だが、その闇に、一つの白き熱が灯る。
「――再生開始」
その声は厳かに、だがしかし、優しい声色で俺の近くで声を発声する。
次の瞬間、俺の全身を焼くような熱が駆け巡る。
俺の周囲を純白の炎が纏わりつく。
「熱っ……!」
直後、視界が、弾けた。
「エ…様…………エイド様!!」
アンナの声が、耳に届く。
目を開けると、そこには涙を浮かべたアンナの姿があった。
俺の体は、確かにアンナの剣によって切り裂かれていたはずだ。
まあ、もちろん死ぬわけねーが。
「……あー、やっぱこれ便利だな。スキル白死鳥」
何事もなかったかのように、俺は立ち上がる。
アンナの目が見開かれる。
「な……なんで……」
「言っただろ?やってみろって」
軽く肩を回す。
完全に再生してやがるな。我ながら流石だね。
「合格だよ、アンナ」
その言葉に、アンナの体から力が抜ける。
剣が、カランと地面に落ちた。
「……よかった……」
泣き崩れるアンナ。
まぁ、そりゃそうか。
知っている人を自分の手で殺すっていう、精神的にはキツすぎる試練だしな。
「ほらほら。泣かない泣かない」
「ほんとに!死んだかと思ったんですよ!」
「まあまあ、あくまで試練ですからー」
申し訳なかったと思っているが、謝る気はないなー。
「さて、アンナ」
「いや、「さて」(キリっ)で済ませれますか!」
耳が痛いな。よく神界でも言われていたな。
「マジで天使の生まれ変わりかよ……」
「はい?」
小さく呟いたつもりだったが、アンナには少し聞こえていたらしい。面倒だし、誤魔化しとくか。
「いや、なんもない。それより約束は約束だ」
と言って、俺は|アイテムボックス《アイテムボックス(閲覧不可)》から一振りの細剣を取り出す。
すると、アンナの目がキラキラと輝く。
「エイド様!そ、それはまさか!」
「約束の品だよ。お気に入りだったんだけどねー」
俺はアンナに剣を渡す……と見せかけてまだ渡さない。
「……え?くれるんじゃ……」
「落ち着けって。まずは主として認められないと。ほれ、お前の血」
と言って、小刀をアンナに渡す。
「血、ですか。わかりました」
そう言うと、アンナは自分の指に小さく切れ込みを入れる。
「その血をこの剣に垂らして」
「わ、わかりました」
手を剣に翳し、血が剣にポチャ、と垂れた直後、剣が光り輝く。
「お、無事に主として認められたな。今度こそ、渡すぞ」
と言って、アンナの手に剣を渡す。その瞬間、剣の柄が花柄に変わる。
「すっかり、主人として認められたらしいな」
「ありがとうございます。エイド様。ところで、この剣の名前は?」
「あね。その剣の名前は俺が決めたんだ!」
その言葉で、アンナの顔色が変わる。
「エイド様……この剣の名前を変えることってできますか?」
「いやいや!なんで俺のネーミングセンスが悪い前提なんだよ!」
まだアンナが俺を訝しんでいるが知ったことか。それにこの剣は俺のお気に入りだったんだけどなー。*二回目
「この剣の名前はーー創律だ」
「……思っていたより、悪くありませんでした」
おいおい、苦笑しているが、笑えねーぞ。
すると、アンナが創律を鞘から取り出した。
剣身がキラリと光る。
「美しい、緑色ですね……」
「元はミカエルが使ってたからな。丁寧に扱ってくれよ……」
「ミカエル様が!して、この剣の効果は一体なんですか!?」
すんごい身を乗り出して聞いてくるが、近い近い。
「貸してみ」
と言って、アンナから創律を借りる。
「この剣の概念は、ルールを創る事だな。例えば……」
徐ろに俺は剣を地面に突き刺し、宣誓する。
「我、エイドの名で宣言する!万物の上下は5秒消滅する!」
その宣誓の後、突如として世界が反転する。
「きゃ!!」
アンナが情けない声を出しているが無理はない。
地面が空に、空が地面になっている。
が、これはあくまで認識の話だ。
次の瞬間、世界がまたも反転する。
「うっし、戻ったか」
アンナを見ると酔っているのか、膝を地面につけている。
「おーい。アンナ?」
すると、俺の目の前でうつ伏せで倒れてしまう。
「アンナ!?大丈夫か!?」
「……」
あ、こりゃダメだ。
俺は即座にアンナをお姫様抱っこしてロッドの家に向かう。
ここで「重っ」と思ってしまったのは内緒である。
ドアに鍵がかかってあるが、ドアを蹴り飛ばして中に入る。
ロッドの声が聞こえた気がするが、まあ気のせいだろう。
近くにあったソファーにアンナを寝かす。
「……当分は起きねーよな」
そんなこと言っていたら思わず、俺の口からあくびが出る。
「寝よっかな」
うん。大丈夫だろ。少しぐらい、寝ないとな……。修業だって、俺なりにはよくやったし……。
俺はアンナの向かい側にあるソファーで寝転がった。アンナの創律は、アンナの枕元に立てかける。
そしてそのまま目を閉じて、深い眠りについた。
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