第十四話 覚悟の変化
ちょっと日付感覚が狂ってました。すみません。
「修業最終段階だ」
その言葉で、場の空気が張り詰める。
「お前に課す課題は、俺を殺すことだ」
「……は?」
アンナの思考が止まる。
「安心しろ。俺は一切手を出さないし、防御もしなければ、逃げましねーよ」
「……え?」
俺は、両手を軽く広げた。
「ただ、そこに立ってるだけだ」
その姿は、あまりにも無防備でーー
「……ふざけてるんですか?」
アンナの声が低くなる。
「いいや?そんなことないさ」
エイドの目は、真っ直ぐアンナを見ていた。
「それに、これが一番難しいからな」
「どこがですか!!」
叫ぶアンナ。
「無抵抗の相手を殺せって……そんなの……!」
言葉が続かない。
「できねーのか?」
俺は、アンナに問う。
「できませんよ」
案の定、即答だった。その答えは分かりきっていた。
「だろうな。だからこその試練だ」
一歩、俺はアンナとの距離を詰める。
「お前の力は、事象の書き換えだ」
アンナの瞳が揺れる。
「だったら、“覚悟”も書き換えろ」
「――っ!」
「守るために敵を殺す覚悟がないやつが、仲間を守れると思うか?この世界の民を守れると思うか?……自分に甘えんなよ!!クソガキが!!」
俺だってこんなこと言いたくないさ、だけど……言わなければ、こいつの覚悟は決まらねーしな。
「ふぅ、これはな、“神である俺を殺す試練”じゃない」
俺は落ち着き、少しだけ優しく言う。
「お前が“自分の弱り切った覚悟を殺す試練”だ」
沈黙。アンナの手が震える。怖いのは、エイドじゃない。
――自分自身だ。
「……もし」
絞り出すように声を出す。
「私が、本気で殺しにいったら……エイド様は……本当に死ぬんですか?」
俺は少しだけ考えて、言ってやった。
「さあな、やってみろよ」
アンナは、その無責任さが、エイドが“本気”だと理解させる。
「……っ」
アンナは一歩、踏み出す。
震える手を、前に出す。
「ほら、来いよ」
エイドは、動かない。
ただ立っているだけ。
なのに、越えられない壁のように、そこにいる。
「……いきます」
その瞬間。
アンナの瞳が、変わった。美しい、緑色の瞳だ。
俺でさえ、思わず見惚れてしまう程の美しさだ。
「へぇ、綺麗じゃんか……」
「……行きます。エイド様!」
その言葉で、勢い良く俺の元に駆け出してくる。
「はあぁぁぁぁ!!!」
ポケットに手を突っ込んで立っている俺の前で、アンナは剣を鞘から抜き、思いっきり剣を振りかざす。
その剣には、アンナの瞳と同じ色が宿っていた。
(――これでいい)
「……やっぱり、"あいつ"の選び方は間違ってねぇな」
ーーその言葉が、剣が俺の体を切り裂く最後の言葉だった。
「お世話になりました!!エイド様!!」
その斬撃に、痛みはなかった。
その言葉と共に、俺の意識は闇の中へと消えていった……。
お読みいただき感謝です!




