第十一話 修行編⑦
「では、話しますね」
その言葉が合図となり、話が始まった。
「因律の眼とは、二代目神であるトゥワルス様がお造りになられた概念です。
その当時、神の手足である天使達は情報子を読み取る力はありませんでした」
今でも、上位天使しか使えないけど、昔はもっと制限がかかっていたのかなと思わず思ってしまう。
「ですので、情報子を魔法を使わずに読み取れるようにするために、この時にスキルという概念が出来上がりました。
それまで、事象の書き換え等は魔法でしていたのですが、そのスキルという概念は素晴らしく画期的でした。
しかし、本来の因律の眼は情報子を読み取る力です。しかし、ある異常が誕生してしまった。そう。エイド様です」
え?俺!?と思わず言いそうになった。
「エイド様は、スキルという決められた概念を変える力を有しています。
ですので、その時初めて、因律の眼は情報子を読み取る力ではなくなり情報子を"書き換える"力となりました」
まぁ、使えるのはエイド様だけですが。と付け足す。
「上位天使といえど、その力を有することはできませんでした。ある意味では当然なのでしょう。
しかし、たった今、異常がまた1人誕生してしまった」
「それがアンナというわけですか……」
ロッドが弱々しく呟く。
「そういうことです。しかし安心してください。異常だからと言って、排除なんてことにはなりません」
その言葉を聞き、胸を撫で下ろすロッドとアンナ。
そんな2人を微笑ましく見ながらラファエルは続きを話し始める。
「普通の因律の眼は、そこまでMPを消費しません。
アンナさんほどの量が有れば5時間は継続できるでしょう。
しかし今、エイド様やアンナ様が持っている異常な因律の眼はMPの消費が半端ではありません」
アンナがラファエルに問う。
「私ではどのくらい持ちますか?」
「そうですね。ちょっと失礼」
と言い、アンナの手をラファエルが握る。
その時間、わずか3秒。
「なるほど。なかなかに多いですね」
「だろ。そりゃ勇者だからね」
俺がそう言うと、アンナが少し照れている。気持ちは分からんでもないが……。
「恐らくですが、この異常な因律の眼、いいえ、旋律の眼とでも言いましょうか。稼働させて戦える時間は1分強と言った所でしょうか」
「そんな……短すぎます!その時間をもっと長くできる方法はありますか?」
ラファエルは少し考えて、
「ありはしますが……あまりお勧めはできませんよ?」
と言って俺の方を見る。あ、まさか……。
「エイド様の思っている通りです。格上相手と闘い、MPを増やします。それしかないでしょう」
ギョッとした顔でアンナが俺を見る。
酷くない?そんなに厳しいか?俺の修業は……。
「エイド様はMPが膨大である為、って何拗ねてるんですか?エイド様」
「拗ねてないよ、続きよろしく」
「ではMPを測るために、お手を拝借しますね」
ラファエルが俺の手をにぎる。心なしか力を込められているかのように感じてしまった。
すると、信じられないようなものを見たかのような表情でラファエルが一言。
「……∞です……」
ロッドは何か言いかけたがやめて、
アンナに至っては諦めの境地に達しているかの様に笑顔だ。
「一体どんなことをしたらこんな数値になるんですかね?」
「しらねぇよ。知らん間にこんな数値になってたんだよ」
MPが多いことは普通に嬉しいからいいんだけど……。
「ようやく拗ねたのが治りましたか、エイド様」
「拗ねてねーからな」
ここで拗ねたと認めてしまえば、俺の負けのような気がしたからだ。
「エイド様が何を考えているのかは知りませんが、何故、旋律の眼をこの子が使わなければならないのですか?」
「そりや、魔王を討伐するためだよ。俺の休暇を潰しやがって……」
神ってのはただでさえ休みがないク○企業なのに、ために溜めた休暇を修行やら何やらで潰しやがって……。
「……え?この世界の魔王は百年前に討伐されたことになっていますが?」
少し冷や汗をかきながらロッドが
「それについては私が。実は倒したと思っていた魔王ですが、ギリギリのところで魂魄だけが生き延びており、私が倒したのは亡骸に過ぎなかったのです」
しかし、ラファエルは首を横に振り
「違います。この本には現時点までで起こったあらゆる事象がすべて偽りなく載っています。しかし、この世界の魔王は……」
と言いつつ、ページをめくる。めくり続けて、そしてあるページで手を止める。
「……この世界の魔王は確かに殺されています。封印などではなく、ちゃんと百年前にロッドさんが殺しております」
「こいつが殺せていなかったから今、そいつが生きてんじゃねーのか?」
確かに、魔王にしては、魔の気配が薄過ぎたけど、ちゃんと魔王の気配を俺も感じたし……待てよ。
「ロッド。お前、封印されてるなんていつ知ったんだ?」
俺の問いにロッドは少し押し黙り、
「……確かに。私は自分が殺し損ねたと思っていましたが、何故……私は確信を持ってそのようなことを考えたのでしょう……」
ラファエルが何かを察したのかロッドの手を握る。
「……これは……」
「何かわかったか?ラファエル」
ラファエルは少し驚き
「はい。ロッドさんの精神に魔法陣がかかってあります。この魔法陣は……天使の?」
天使?なんで……?そんなことを考えていたらラファエルが答える。
「天使しか知り得ない魔術式が描かれてあります。この効果は……幻覚です。この式ですが、敢えてお粗末な性能にしているかの様に出来が悪いです」
ロッドがハッとした様に顔をあげる。
「その様子だと、真相に心当たりがあるみたいだな」
俺の問いかけにロッドが頷く。
「私に魔王がまだ生きていると教えたのは……元勇者パーティのメンバー。リエン・サシャです。しかし彼女が……?」
ロッドの発言の感じを見るに、ちゃんとした娘だったのだろう。
「で、そいつが言ったのか?」
「はい。ここに遊びに来た時に、そう言っていました」
「何年前ぐらいだ?そいつがここに来たのは?」
「八十年ほど前になります」
ミカエルが仕事でこの世界に訪れたときだ。
「……確定だな」
「天使の中にこの術をかけた者がいるとエイド様はお考えなのですか?」
ラファエルが俺に問う。俺は黙って頷く。身内を疑いたくは無いがな、こうも証拠があると……。
「わかりました。神界に戻り、調べておきますね。ミカエル様にも聞いておきます」
すると、ラファエルはゲートを造り出した。
「では、エイド様。何かわかれば報告しますね」
そう言うとラファエルがゲートの中に入っていった。
さっきの話を聞いて、まるで作られた舞台に立っているみたいに思ってしまった。
「ま、まぁ、魔王は復活してなかったんだし……ある意味よかった……かな?」
そう場を和ませようとしたが失敗してしまった。
俺たちの間には少しの間気まずい沈黙の空気が流れた。
次からは旋律の眼をアンナが使いこなすための修行です!さて、物語が加速していきます!
次の更新は、3月25日の21時です!!
お読み頂いてありがとうございました♪




