第8話 起爆
異世界へ渡るための装置は、改めて見ても大きかった。そしてその近くには、私達の衝突を知ったのか、我先にと新しい世界へ逃げ込もうとする政治家達が見えた。
「慌てるな。今爆発させても大して殺せない」
言われてふと気付き、私は手を止めた。手に持っていたリモコン式爆弾の投擲フォームを作っていた。あの大衆のど真ん中に投げて即起爆させるつもりだったのだろう。
「まるで養豚場だな。いや、食べさせてくれる豚に失礼か」
「この時代にあそこまで肥えた身体になるのは凄いとしか言い様がありませんね…」
「それだけの食糧を何故分け与えようとしなかったのか…」
大和は爆弾に貼られていた保護フィルムを剥がし、強力な粘着テープを晒した。私もそれを真似して、装置の方へ身体を向けた。
「「それっ!」」
お互いの爆弾は巨大な装置のタンク部分に見事貼り付いた。
それと同時に私達は装置とは反対の方向へと走り出した。
「起爆を2分後に設定しろ!」
「これからどうするつもりですか!」
リモコンのダイヤルを回して指令ボタンを押す。装置に取り付いた爆弾に、2分後に爆発するようにと命令が届いたはずだ。取り消しはできない。
「なんだお前ら!」
「うるせえ!」
一人の兵士に見つかった直後、大和はポケットから出したナイフを投擲。顔に突き刺してライフルの発砲を阻止した。
「日本製じゃないな。パキスタンのターダヨフだ。イスラム教だったりまともな物を寄越さなかったみたいだな、あの薄汚い国は」
そうは言うが大和はライフルを持った。そして整った町の中を走り回り、建物を片っ端から見て回った。
「当たり前ですが誰もいませんね。まあ真新しい世界に逃げれるっていう二度とない機会を逃す馬鹿はいないでしょうが」
「見つけた!入るぞ!」
大和は地下へ続く階段を見つけるとそこを降りた。
そしてリモコンでの操作から2分後に大きな揺れが起こった。ここは日本だが、これは地震のような自然的な物ではなかった。
「あいつらの死に顔を拝めないのが残念だ」
「生き残りはどうします?」
「残らず殺す。放っておいても何も出来ないだろうが、連中の血を絶やさないとこっちの気も収まらない」
物騒な発言だ。何故そこまで憎むのだろうか。まあ尋ねたところで答えられはしないだろう。きっと何かを憎む事がこの男の生き甲斐なのだろうから。
「そろそろ出てみましょうよ」
「俺が先に出る。心配せずとも俺は原子人だ。放射能には耐性がある」
「奇遇ですね。私も原子人ですよ」
私達は階段を上がる。重い瓦礫を押し上げて、先ほどまでとは全く違う光景の地上へ出た。




