51.国王と盟友の断章
すずらんの間。
周囲からの耳目の遮断が比較的容易なこの場所を、彼らは好んで使っていた。
「陛下」
「報告は受けたか?」
「ええ。よくやっているようですね」
「これほどまでに事態が良く進んだことはこれまでなかった」
「耳が痛うございますな」
響いた笑い声は一つだけ。もう一つは、憂いを満ちたため息だった。
「あの子はよくやっている。だからこそ、我らもまた負けてはいられない」
「勝ち負けではないと思いますがな。あの男ならばそう言うでしょう」
国王は、目前の盟友を、恨めしげな視線で睨めつけた。
「そちらは心配ではない。慧眼の種はもう芽吹く。芽吹いてしまえばあとは育つだけだ」
「やはり。……しかしそれならば、一体?」
「親として、だ。芽吹きの枷が我ら王族だったと思えば、申し訳なさであの子に合わせる顔がない」
またしても、笑い声が響く。
「ならばなおさら、此度こそは完全勝利を収めよう。さすれば多少は自信がつくというものだろう」
「容易く言うがな……。それこそ、もう十年以上は経つ」
「お前が弱気になってどうする?」
「………息子のこともある。あれは……いや、よそう。今回は…」
「いや? あの男も、芯は強い。なにせ、お前の息子だぞ」
じっと、国王は、目前の盟友を見た。まっすぐに、視線が返される。
「そしてまた、エクレイアが隣にいた。ルーベルハイムの血統が、だ」
「…………」
「お前の子だ。卑下するものではない。子は、過度に守られては腐る。そしてまた、放任と、期待しないということは、似て非なるものだ。テオドール」
すずらんの間に、心地よい静寂が流れる。
「………目を、かけてきたつもりだったのだがな」
「そうだろうさ」




