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とはいえ、やはり王子と婚約破棄をしたばかりの娘がいる公爵家に、他国の皇族を招くというのは色々と問題があるらしく。その、外聞的に。
そういうわけで、リージオは、ルルイユ国王より、エルヴィアーナ皇国皇太子を責任持って歓待するように、という『勅命』を賜るべく、王宮を訪れる手はずと相成った。
…だけならよかった。
「……何故私まで?」
「陛下たってのご要望だ。ジルベール殿下の挙動には、随分と頭を痛めておいでだったからな」
なるほど、とは言わずに、エクレイアはため息をついた。できることならほとぼりが冷めるまでは王宮には近づきたくなかったのだが、陛下のお言葉なら仕方がない。どうしようもない。
豪奢な回廊を進みながら、エクレイアは突き刺さる好奇の視線に辟易しつつ、国王陛下に相対した時の対応を脳内でシミュレートしていた。
それにしても不躾にもほどがないかこの視線は、と、呆れながら元を辿れば、ささっと顔を背けたのは見覚えがあるようなないような顔たち。
「メリア嬢の側に侍っている輩のようだな」
ごく静かな父の声に納得がいく。なるほど、道理で。
合点がいったと静かに頷いていると、二人に近づいてくる女性が一人。
「ルーベルハイム公爵閣下、エクレイア様」
白髪交じりの髪をひっつめにした、いかにも厳格そうなメイド。この王宮の生き字引の呼び声も高い、メイド長ルシアンナである。
無駄のない動きで膝を折って最敬礼を取ると、ルシアンナは静かに続けた。
「エクレイア様、アルベール王太子殿下がお呼びでございます」
「…ふむ、娘は陛下のお召しに応じ参じたはずなのですが」
ルシアンナは、やや困ったような色を瞳ににじませ、
「恐れながら我々もそう進言させていただきましたのですが…頑としてお譲りにはならず………、殿下はこれより王領の巡回にご出立なさいます故、今すぐに、と」
「陛下はなんと?」
「すぐ済むならば、と」
父の口から思わずという風に零れ落ちた、「あの親バカが」という言葉は聞かないふりをして、エクレイアは首肯を返した。
「参りますわ。お父様、また後ほど」
娘がそういうならば、否やを叫ぶ必要はない、ということらしい。リージオはエクレイアとよく似た仕草で首肯し、自身は謁見の間へと歩みだした。
ルシアンナはその背に向けて再び最敬礼をとると、エクレイアに向き直り、穏やかに微笑んだ。
「エクレイア様、ご案内いたします」




