38位目
とりあえず地面にしゃがみ、顔面に張り付いたままの牛蛙を引っぺがす。そして拾った石でその頭を叩き潰した。
「……あ、しまった」
きょろきょろと周囲を確認する。もうさっきの少年少女(推定)はどこにもいないようだ。ということは今この蛙をさくっとやったところは見られていないことになる。うーん。蛙に怯えているところを見せたら彼らはもっと蛙を投げつけてきてくれたかもしれない。惜しいことをしたものだ。
とりあえず蛙は……皮を剥いで煙で燻しておくかな。寄生虫怖いし。
あ、でもそのためには薪を集めないといけないんだよな。面倒だしやめよう。ええと、どうするかな? 腰の帯にでも挟んでもっていくか、それともこの家に置いていくか。まあ、万が一にもあの子供達がさらなる蛙を持ってきてくれる可能性もあるわけだし、せっかく玄関から出てきたばかりだけど家に置いていこう。皮は……後で剥ぐ。
っと、その前にもう一匹だな。どっかにいたはずだけど。
……あ、いた。
「『収穫』」
大鎌の柄で地面と小突くとアステラが蛙を捕まえて持ってきてくれる。
「ありがとう」
受け取った蛙の頭を再び叩き潰す。後で剥いだ皮をやるからな。
さて、食うものの目処も立ったしいい加減水を汲んでこよう。鍋一杯で汲んで持ってこられる水なんてたかが知れているんだ。回数を稼ぐんでもなんでも時間がかかる。ええと、問題は何に使うかだな。一杯目は……とりあえず飲む。それと食べる。というよりもヴァクシャサに飲ませて食べさせる。とっとと治してもらわないと困るしね。
出来ればもっといろいろ食べるものを集めてこられればいいんだけど、今の段階であんまり長く家を空けたくない。なんてったって家を出た途端に泥だんごと蛙をぶつけられたばかりだ。今度はアステラに見逃させる気はないけど、世話をしているエリクシルや家を温める任務を持ったアルファートが見逃すとは思えないから、空き巣に入られるとちょっと困る。というか僕自身は困らないんだけど、いろいろ問題があるというか、うん。
いや、やっぱり僕も困るってことでいいか。
「井戸は……こっちか。だよな、アステラ?」
——Bow!——
向かう先はすぐ近く。というか、この村なんか井戸多いな。三つ四つ家が集まると、そのそばには必ず一つ井戸がある。これ、井戸というより地下水路の出口なんじゃないか? そりゃあんだけ近くに川があるんだから地下水は豊富だろうけど。この数はそういう規模じゃない。積極的にそういう治水工事をしたとみたほうが良さそうだ。
普通の村ってでかい井戸が村長の家の前にだけあって、村長が水を握ってるもんなんだけど……ああ、だからこの村の村長って腕っぷしで決まる若い人だ立ったりするのかな? まあだからどうした、単に外来の身としてはありがたいってだけの話だな。ええと、一番近い井戸までの距離は……10 ハード もない。ええと、そこの建物の影だな。
「……! ってめえ!」
「あ」
どういうわけかそこにはミグナがいた。いや、いること自体はいいんだ。あの家から一番近い井戸なわけだし、ここを見張ってれば僕に会えることになる。
だから問題なのはその態度だろう。僕にあって驚くのはどういうわけだ。
「こんなところで何してやがる」
「水を汲みに来たんですが、なにか?」
というわけで待ち伏せじゃないことはわかった。うん。
こんなところで何してるのあんた。




