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「うっ……」


 ごつごつする。

 身体のあちこちからごつごつしたものの感触が返ってくる。僕は……横たわっている……というか、寝てるのか。

 ええ? なんだ、僕。随分と変な場所で居眠りしたんだな……それともミィとタァに唆されて、またぞろレンが僕の寝床に玩具でも隠したのか。

 ……なんでもいいか。外は明るいんだから起きなきゃ。


 ………………。


 …………。


 ……。




「……なんか一瞬すごい間抜けなことを考えていた気がする」


 気が付けばそこは見知らぬ河原だった。

 といっても地面に倒れているので、そんなに開けた視界があるわけじゃない。丸っこい石がごろごろしているのと、川の音にしか聞こえない水音がするからそうだと思っただけだ。ただ、気を失う前に彼女の名を呼んだのが夢で無いなら。あのとき見かけた彼女の姿が見間違いで無いのなら、この場所が川辺だというのも頷ける話だ。

 名を呼ぶ声に助けを求める響きがあったかどうか……そんなことは覚えていないし、いくら彼女が高等な精霊であっても、人間と契約もしていないでそこまでの機微を身につけているとは思えない。

 だからどう、ということではなくて、多分彼女は僕を自分の領域に運んだのだ。助けるとかどうという話ではなく、精霊の習いとして、自分の所有物 けいやくしゃである僕を、自分の領域であり、仲間が多くいる。何があってもいかようにでもできる、水辺に。

 いや、それは助けようとしてくれていたとしても同じことか。

 本来なら精霊が一人でできることは決して多く無い。精霊は確かに人智の及ばぬ偉大な力の持ち主ではあるけれど、それは決して一人ででは無いのだ。先の男を燃やし尽くした火柱だって、おそらくアルファート一人の力ではあるまい。あの人間はあらかじめ近場で他の精霊の不況を買っていたのだ。火柱が上がる程度ならともかく、人一人影も形も残らないなんてことはありえない。おそらく近場の風精霊の力だろう。

 とりあえず一度考えるのをやめて、水場まで這って行って口をゆすぐ。うん、あんまり変な感じがしない。これはあれだな。多分エリクシルがそれも済ませてくれたってことだろう。彼女には世話になりすぎてるようだ。


「って、ヴァクシャサ!?」


 あわてて起き上がると、側頭部……こめかみの上あたりだろうか? が、ズキズキと痛む。

 もしかしたら血なんかも出てるかもしれない。軽く頭をふると、ぺりぺりと何かが剥がれるような感触がした。これは……もしかしてもう乾いてる? 結構長い間気を失ってたみたいだな。じゃなくて、ええと、ヴァクシャサは?

 いた。

 すぐ後ろに、担架ごと転がっている。枝のせいで頭が下になっててちょっと気分が悪そうだ。

 かわいそうに……なんて言いたいところだけど、正直僕にもそんな余裕は無い。ここはどこだろう? とりあえず居場所を知る方法は……相対的なものであれば、アステラの位置が参考になるか? 方角は……最後の日の向きを覚えてないけどとりあえず距離がわかればだいぶ前進できる。大鎌 アステラのよりしろは相変わらず右手で握りしめてる。呼びかければどこにいるかだけを教えてもらうのはわけないことだ。


 ——アステラ?—— ——Bow!——


 ……うん、なんだ、やたらと近いぞ? ここから50 (90)ハード メートルと離れていない。

 というか、うん。足元ばかり見てたけど、なんだ。すぐ後ろに……いや、本当にすぐ近くに人の住む家があった。少し下流に目をやればそこには水車小屋のようなものもある。

 もしかしてここ、もうガロンガルの圏内なのか。

 をりゃ、エリクシルの独力で僕らをここまで運べるわけが無い。あの近くに水辺があったとは思えないし、そうであれば当然エリクシルが頼るべきは僕を共有する者、アルファートやアステラになる。アステラであればあるいは他の地精霊に呼びかけ手伝いを請うこともできただろう。

 つまり、そういうことか。エリクシルはアステラや彼の仲間と協力して、僕を目的地側の水源まで運んでくれたと。

 すごいなエリクシル。

 わざわざ名前をもらいに来るなんてことをするだけのことはある。

 というか君、本当に僕が初めての契約相手なのか? この件は後々問いたださせてもらうぞ、色々と。だけど今はとにかくヴァクシャサのことをなんとかして、それから僕も休まないと。この担架はどうしようかな。ここまで近くに来たんだ、担いで行った方が目立たないし、舐められないかもしれない。

 うん、そうしよう。

 とりあえずくくりつけていた縄を解いて外套を解く。


「う……とりあえず軽く洗濯するか」


 匂いがすごい。色々と。このまま村に入るのはさすがに気がとがめる。

 彼女の着替えがあるかは知らないけれど、少なくともあの青い外套 マントがある。だから脱がそう。水もあるし改めて洗濯しよう。いや、洗濯より先に休める場所の確保だな。軽く体をきれいにできたらとっととあれで包んでしまって担いで行こう。あ、俺の外套はどうしようか、間に毛布でも挟めばとりあえず気にならなくなるかもしれないけど……うん、洗濯して、毛布の上から被ろう。それでいい。

 さて、ガロンガルの村人との第一次接触 ファーストコンタクトだ。外面よく対応してくれることを祈るか。

いつも読んでくださってありがとうございます。

ここのところ遅刻続きで申し訳ありません。

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