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不老不死で異世界リスタート~人は「ひとり」だと信じていたはずなのに、異世界で居場所ができました~  作者: 時雨あくあ


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30話 少しずつ変わる世界の色

その後は、しばらくギルドマスターの部屋で話をしてから、ギルドを後にした。


妹――ルイがテイマーギルドに入るきっかけも聞いたのだが、理由はウルだったそうだ。

ウルのことを大層気に入っているようで、ウルも妹や友達のような感覚なのか、仲良くしていた。

ルイにも、同じく1度だけ転移できる石を渡しておいた。


1度だけと制限は付けているが、使われた場合は戻るときにまた保険として渡すこともできる。

実質的には制限がないようなものだが、頻繁に使うものでもないので、今はこれでいいと思う。


2人の家は、物件が決まるまで今の宿に泊まることになった。

宿代は、それぞれのギルドが折半で支払ってくれると説明された。

それに、ギルドから行方不明事件の重要情報元として、2人へ謝礼もしっかり払われることになっているので、お金の心配もないだろう。


その後は宿に戻り、箱庭へ転移する。


ここ最近で、箱庭は一気に変わっていた。

鶏、豚、牛の畜舎ができており、それぞれ6匹ずつ買ってきたはずなのだが、今はそれぞれ15匹から30匹ほどに増えている。


畜舎独特の匂いがないことを質問すると、


「箱庭環境の改善のために、匂いを消しました」


と、アイシスはさらっと言ってのけた。


この短期間で増えた理由についても、


「成長促進の適用が動物にも可能でしたので行いました。

健康状態も問題なく、管理数も調節しているので、箱庭の住人が増えて消費量が増えても対応可能です」


と、自分がいない間に生物実験まで行っていた。

まあ、問題ないならいいんだけどね。


ふと思いついたことがあるので、アイシスにフォルさんへ相談したいことがあると伝えた。

だが、返事は、「権限制限のため回答が難しいです」というものだった。



地球だと草原に寝転がると虫が見えてしまって安心できなかったけど、箱庭はそういった心配もないので、心置きなく寝転がれる。

寝転がっていると、ウルがのそのそとやってきて、自分の隣で横になった。

その行動が可愛くて撫でてやる。


最近は少し動き過ぎていたので、こういった時間がゆっくり感じられるのはいい。


急ぎというわけでもないし、もし会う機会があったらでいいかと切り替え、そのまま穏やかな時間を過ごす。


「マスター、おやつを作りましたが食べますか?」


アイシスが自分のところへ来て話しかける。

話しかけるのはいいが、目を開けたときに目の前に顔があるのは、さすがにドキッとするからやめてほしい。


「ありがと、いただくよ。

家に戻ればいいかな?」


「いえ、この場所で問題ありません」


しゃがんでいたアイシスが、すっと立ち上がる。

一応ロングとはいえスカートなのだから、寝ている男の頭の上で急に立ち上がらないでほしい。

見ないように体を起こすと、テーブルと椅子が現れていた。

アイテムボックスに、こんなテーブルと椅子はなかったと思うが。


「これってアイシスの能力で出したの?」


疑問に思っていたことを聞くと、その通りですと回答が来る。


「アイシスが作り出した物って、利用者がアイシスじゃないと消えちゃうんじゃなかったっけ?」


最初に聞いていた説明だと、自分が座ると消えると思うのだが、アイシスはドヤ顔で答えた。


「私の料理を提供するために、私が使うので問題ありません。

食器などはこの範囲を超えるため、ご用意が必要となりますが」


私、という言葉を2度強調して言ってきた。


間接的な利用目的がアイシスにあれば問題ないのだろうか。

その辺りのルールはアイシスの感覚的な話になるのだろうし、ウルが住人になったことで能力が上がったのかもしれない。


恐る恐る椅子に座るが、消えることなく座ることができた。


テーブルの上に出されたのはプリンだった。


卵や生乳が手に入るようになったことで、いろいろできるようになったと言っていたので、レパートリーも増えるだろう。


ただ、この知識はどこから来ているんだろう。

フォルテシアにもプリンはあるのだろうか。

食べてみると、とてもおいしいプリンだった。


自分がプリンを食べていると、ウルが興味津々に鼻を近づけて、クンクンしてくる。


「ウルはこっちですよ。

マスターのものを食べようとするのはやめなさい」


そう言ってウルを引き離し、木でできた大きなお皿にプリンを入れたものを地面に置いた。


ウルはおいしそうにプリンを食べているが、犬にプリンって駄目じゃなかったっけ?

犬じゃなくてフェンリルだけど。


「ウルは何を食べても問題ないですよ」


自分の心配を汲み取ったのか、アイシスが答える。


「そもそも、箱庭の住人の健康管理も私の仕事ですので、問題があるものは与えません」


「そっか。

それなら安心できるよ。

それにしても、ウルはちゃんとアイシスの言うことも素直に聞くんだな。

もともと気難しい性格ではないと思っているけど」


「そこについては、ちゃんと教育していますので」


「ん? ちょっと待て、なんて言った?」


「ですから、教育しました」


「ウルに変なことしたんじゃないだろうな?」


このメイドは、たまに変なことをしでかしそうな発言をするので、聞き逃してはならない言葉はその場で聞く必要がある。


「変なことはしていませんよ。

ウルは賢いので、口頭で説明しただけです。

箱庭内の序列は私より下なので、言うことを聞かないとご飯抜きにすると伝えたところ、お腹を見せて横になりました」


それは、問題ない……のか?

まあ、仲は悪くなさそうだし問題はないかな。


その後、ウルと遊んでその日は終わった。



――その夜。


「やあ、久しぶりって言っていいのかな?」


自分の最後の記憶は宿のベッドで寝ていたので、夢の中ってことでいいのだろうか。


「その認識で合ってるよ。

ボクに相談があるってアイシスが知らせてくれたから、こうしてお話に来たってわけ!」


「それはありがたいですけど、直接的なやり取りは難しいんですかね?」


「ボクと直接やり取りできるものは、残念ながらないんだ。

そもそもボクが直接動くと結構大事件になっちゃうから、ゼオン君との会話も夢に介入するのが限界かな」


なるほど。高位の存在だから圧を感じるって、最初に説明してくれていたな。


「そういうこと!

それで? 相談って何かな?」


「あの、自分、前世でサッカーをやってたんですけど、そのときに使っていた道具でいいので、ボールとかそういったもの一式を箱庭限定で使えないかなって思いまして」


「あー、そういうことね。

箱庭限定なら問題ないし、壊れないように状態保存の加護もかけておくね。

せっかくだし、ゴールもプレゼントしておくよ」


「ありがとうございます。

あと、気になっていることなんですけど、自分、フォルテシアに来てからトイレに行ってないんです。

それは問題ないんですかね?」


「あ~、それは問題ないよ。

君の場合は空腹も感じるけど、食べたものは魔力に還元されるから、排泄はしない仕組みになってる。

ちなみに、仲間になったフェンリルも同じだね。

高位の魔力を持った生物は、食べたものが魔力に還元される。

逆に、食べないと魔力がなくなる。

結果的に死んじゃうって感じかな。

人界にはそう多くないけど、魔界だと半数以上はそんな感じだから、気にしなくていいよ」


「そういうことなんですね。

謎が解けて安心しました。

今後、別で相談があった場合はアイシスに伝えて、フォルさんの空いてるタイミングで夢で会話できるって形ですか?」


「そうだね。

基本的に何にもしてないから、その日の夜にはお話しできると思うよ。

さっき頼まれたものはアイテムボックスに入れておくから、起きたら確認してみて」


「分かりました。

いろいろとありがとうございます」


「全然問題ないよ。

むしろ、快適に過ごさせるって伝えている以上、我慢させるつもりはないしね」


「そういえば、箱庭の管理者であるアイシスって、どういう立ち位置になるんですか?」


「あの子はね、簡単に言うとフォルテシアでいう女神と同じかな。

フォルテシアの女神たちは、いろいろな世界の法を管理してるけど、あの子の場合は管理対象が箱庭に限定されている。

知識も、フォルテシアと地球のものを持っているから、ゼオン君の望むものを提供できるようになってるよ。

女神も成長しないように作っているわけじゃないんだけど、生まれてから全く変わっていない個体しかいなくてね。

最初から最適な状態で生まれているから、停滞しているんだ。

同じように生み出したアイシスの性格がどんどん変わっているのを見ると、ちゃんと成長できているようで、生みの親のボクとしては嬉しいね」


性格が変わったように感じたのは、成長しているからなのか。

たまにぶっ飛んだことを言うから、思わず突っ込むけれど。


「あー、あれは面白いよね。

でも、本当に嫌なことは絶対に口にしないし、ゼオン君の考えを汲み取って行動してくれるから優秀だと思うよ。

それに、自分しかいないはずの箱庭で、ゼオン君が存在を認めたってことはそういうことでしょ?」


言われてみれば、アイシスについては、フォルさんが用意した人物なら問題ないと考えていたことを思い出した。


「ゼオン君がフォルテシアに来てから、どんどん変わっていってくれて嬉しいと思ってるよ。

アイシスのことも、フェンリルのことも、獣人の兄妹のことも、見てる世界が広がっている感じがして、ボクとしては好ましい変化だね」


言われてみれば、前世だったらプライベート空間にいる他人を認めたくはなかったし、ポンタのことを思い出すこともなかった。

子供についても、親身になる以前に、関わったら厄介なことになるから見て見ぬふりをしていただろう。


「そんな1歩、もしかしたら半歩かもしれないけど、自分が気づかないほどの変化で、世界の色は変わっていくよ。

これからもフォルテシアを楽しんでね」


そう言うと、フォルさんと一緒にいた空間が、プツリとテレビを切ったように消えた。


30話までご覧いただきありがとうございます!

この投稿をもちまして、水曜日・土曜日の週2回更新は終了となり、次回以降は土曜日のみの週1回更新となります。

また、30話までお読みいただいたお礼の気持ちも込めて、フォルシアの作者イメージイラストを活動報告に掲載いたします。


仕事終わりに手動で更新するため、投稿と同時に掲載できない点は申し訳ありませんが、楽しみにしていただけますと幸いです。


なお、イラストはあくまで作者の中でのイメージとなります。

ご自身のキャラクターイメージを大切にされたい方は、そのお気持ちを優先していただければと思います。

素人のイラストではありますが、温かい目で楽しんでいただけますと幸いです。


次回投稿は10月17日(土) 17:00を予定しております。

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