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不老不死で異世界リスタート~人は「ひとり」だと信じていたはずなのに、異世界で居場所ができました~  作者: 時雨あくあ


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27話 貴族屋敷への潜入

まずは、屋敷周辺の侵入対策を確認する。

探知魔法を使って周囲を調べたが、侵入者を検知する魔道具や罠らしき反応はなかった。


3階に窓が開いている部屋を見つけ、部屋の中に人や罠がないことを探知魔法で確認し、音を立てないように侵入する。


屋敷内にいる人間の位置を探る。


夜ということもあり、1階と2階にはほとんど人がおらず、3階に数人、4階に多くの反応が集中していた。

物語でも、下の階は来客用や仕事用に使われ、私室は上階にあることが多かった。

その常識は、フォルテシアでも通用するらしい。


屋敷は4階建てだった。


次に、貴金属類を対象として探知魔法を使ってみる。

すると、地下からまとまった反応があった。

魔物や敵を探せれば便利だと思って使い始めた探知魔法だったが、想像していた以上に役立っている。

それまで、探知範囲は自分を中心とした50メートルの平面的な範囲だと思っていた。


だが、地下牢で全方位へ探知を広げたとき、階段を上っていく大男の反応を捉えることができた。

屋敷内でも改めて試したところ、自分を中心とした50メートルの球体状に、前後左右だけでなく上下の情報まで把握できることが分かった。


魔法にも熟練度があるのだろうか。

単に、自分が最初から範囲を正しく理解できていなかっただけかもしれない。

それでも、使い始めた頃より探知の精度は上がっているように感じる。

地下に貴金属の反応があることだけでなく、そこへ続く通路の形まで大まかに把握できてしまう。

これこそ、チートと呼べる魔法なのではないだろうか。


探知した経路をたどり、1階まで下りる。

地下室へ続く場所へ来たが、そこは普通の応接室になっていた。


本棚の裏側に、地下へ続く階段が隠されている。

壁に飾られている盾と剣のオブジェを確認すると、中央にエンブレムがあった。

探知魔法で反応があるため押してみると、本棚が横へスライドした。


物語でよく見る仕掛けを現実で目にできたことに少し感動したが、気持ちを切り替えて階段を進む。

途中に少し開けた場所があり、扉と、さらに地下へ続く階段があった。


扉の先からは、貴金属類の反応がある。

一方、階段を下った先には人の反応があったため、先にそちらを確認することにした。

階段の途中で道が2つに分かれている。

そのまま下ると、重々しい鉄の扉があった。

扉には、向こう側を確認するための細長い長方形の穴が設けられている。


中を覗くと、先ほど確認した地下牢の一室へつながっていた。


奴隷を受け渡すときは、この扉から応接室まで連れていくのだろうか?

それなら、貴族が子供を品定めする際に、わざわざ古井戸側の入口を使う理由は何だろう?

使用人に知られないためなのか、あるいは別の目的があるのか。


疑問は残ったが、今は証拠を探すほうを優先し階段を戻り、貴金属の反応があった扉へ向かう。


金庫室のような場所だと思っていたため、入るにも何か仕掛けが必要かと警戒した。

だが、特別な反応はなく、扉も普通に開けることができた。


中には、骨董品というよりも、金貨と白金貨を几帳面に収納した箱や、宝石、貴金属類が狭い空間へ並べられていた。

その中に、貴金属ではない黒い箱がある。

大きさはアタッシュケースほどで、これが魔法金庫なのだろうとすぐに分かった。


鍵穴や開閉用の仕掛けは見当たらない。

箱の上部には、1辺20センチほどの正方形が描かれていた。

その中央には、手形のような跡がくっきりと残っているため、登録者が手をかざすことで、鍵が開く仕組みなのだろう。


試しに手を乗せてみるが、反応はない。


ただ、手を触れた瞬間、魔力の波長を確かめられているような、不思議な感覚が伝わってきた。


これは探知魔法ではなく回復魔法を使うとき、対象の身体に触れて魔力の流れや異常を感じ取る感覚に近かった。


箱へ意識を集中させ、その内部を流れる魔力を確認する。

すると、箱が認識している魔力の流れを感じ取ることができた。


登録された魔力を確認する流れと、内部の鍵を開くための流れが途中で分かれている。

自分の魔力を登録者のものへ変えることはできない。

だが、途切れている開錠側の流れへ、直接魔力をつなぐことならできるかもしれない。

慎重に魔力を流すが、わずかに弾かれた。

もう一度、箱の魔力へ合わせるように流れを調整する。


すると、内部で魔力が通った感覚があり、カチッと小さな音が鳴った。


ケースの蓋が、ゆっくりと開いた。


中には大量の書類が入っており、ギルドマスターが話していた売買証と譲渡証が対になる形でまとめられていた。

買い手の欄には、どの書類にも同じ名前が記載されている。

おそらく、これがこの屋敷の貴族の名前なのだろう。


金貨や白金貨も大量に保管されている。

通常の財産かもしれないが、表に出せない取引で得た金が含まれている可能性もありそうだ。


金庫室を転移地点として登録し、魔法金庫の蓋を閉じ、両手で持ち上げる。

それなりの重さはあったが、持ち運べないほどではない。


金庫を持ち出している間に、誰かがこの部屋へ来れば侵入に気づかれる可能性はある。



「驚いた……。

こんなに早く見つけられるとは……」


「潜入して地下を調べていたら、すぐに見つかったので運がよかったです」


「それにしても、よく開けられたものだ。

かなり古い型とはいえ、魔法金庫を開けるのは普通なら困難なんだが……」


回復魔法を使うときの感覚を応用し、途切れていた魔力の流れをつないだところ開いたと説明した。


「それは、君にしかできないだろうね……」


ギルドマスターは苦笑いを浮かべていた。


「ともかく、これはかなり強い証拠だ。

しかも、この貴族はかなり前から奴隷の売買を続けていたようだね。

早速、複製作業を行うよ。

1時間ほどかかってしまうけれど、待っていてくれるかい?」


ギルドマスターの問いに了承する。


待っている間、兄妹の様子を確認するため、宿へ移動した。

4階にある兄妹の部屋へ行くと、眠っていたウルがこちらに気づき、尻尾を振った。

兄妹はベッドがあるにもかかわらず、眠っているウルへ寄りかかるようにして、布団をかぶって眠っていた。

仲良く過ごせているようで安心した。


ウルへ礼を伝え、しばらく撫でてから箱庭へ転移する。


アイシスがすぐに食事を用意してくれたので、それを食べながら気になっていたことを尋ねた。


「そういえば、兄妹にここのことを説明してくれたって言ってたけど、何て説明したの?」


「ウルが転移魔法を使える特殊個体のフェンリルであり、契約した影響によって、マスターも転移魔法が使えるようになっていると説明しました。

また、この家は僻地にあるマスターの家なので、家の中でおとなしくしているよう伝えてあります」


なるほど。

2人がいたのは家の中だけなので、箱庭について説明する必要はない。

ウルが特殊個体だと説明すれば、もともと幻獣なのだから納得してもらえる可能性も高い。


自分が下手に言い訳を考えていたら、余計なことになっていただろう。

危なかった。

アイシスは本当に優秀な駄メイドだ。


食事を終え、宿へ戻る。

ウルへ一声かけてからギルドへ向かうと、すでに複製作業は終了していた。


1時間ほどかかると聞いていたが、まだ50分ほどしか経っていない。

少しでも早く終わるよう、急いで対応してくれたのかもしれない。


魔法金庫を元の場所へ戻す必要があるため、今後の対応については翌日の昼に改めて話すことになった。


ギルドを出て、人目のない場所まで魔法金庫を運ぶ。


そこから先ほど登録した金庫室へ転移し、魔法金庫を元の場所へ戻した。


隠し扉の仕掛けがどうなっているのか気になり、階段へ続く本棚を確認する。


本棚はすでに元の位置へ戻っていた。

どうやら、一定時間が経過すると自動的に閉じる仕組みらしい。


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